2012/05/07 00:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.139: 日銀展望レポート
今回は恒例の日銀展望レポートの紹介です。改めての解説はもう不要かもしれませんが、このレポートは、日銀が毎年4月末と10月末の2回公表し、わが国経済・物価の見通しや金融政策運営の考え方を総括的に示す、日銀のもっとも重要なレポートです。経済・物価見通しでは具体的な数字が示され、日銀の考え方を分かりやすく理解できますし、レポートの付録には様々なグラフや図表が掲載され、とくに経済学部生には良い資料と思います。
また、今回は事前の金融緩和報道が過熱し、実際、展望レポートと合わせ、「金融緩和の強化について」も発表されました。
展望レポートの数字をみると、実質GDP成長率については、政策委員見通しの中央値で、2011年度マイナス0.2%、12年度プラス2.3%、13年度プラス1.7%と見通されています。注目の消費者物価指数前年比については、2011年度ゼロ(対前年度横這い)、12年度+0.3%、13年度+0.7%と見通されています。
文章的には、「経済の先行きについては、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まり、また、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくにつれて、緩やかな回復経路に復していく」「消費者物価の前年比は、マクロ的な需給バランスの改善を反映して、展望レポートの見通し期間後半にかけて0%台後半となり、その後、当面の「中長期的な物価安定の目途」である1%に遠からず達する可能性が高い」とされています。
なお、こうした見通しが上下に外れるかもしれない要因として、国際金融資本市場や国際商品市況の影響を含めた海外経済の動向、復興関連需要を巡る不確実性、企業や家計の中長期的な成長期待の変化、わが国の財政の持続可能性を巡る問題が指摘されています。最後の点については、「財政の持続可能性に対する市場の信認をしっかりと確保することが、金融政策の効果浸透や、金融システムの安定および経済の持続的な成長にとって、きわめて重要」との指摘も行っています。
前々回まで中央銀行の話しを取り上げたので、今回深く立ち入ることは控えようと思いますが、世間では「中長期的な物価安定の目途」である物価上昇率+1%と、今回の展望レポートにおける物価上昇率見通し、および金融政策運営方針の関係に関して注目が集まりました。結果的には、今回日銀が見通しを公表した13年度までの間は+0.7%と+1%には届かないものの、その後遠からず1%に達する可能性が高いという(やや中途半端な)表現を行ったうえで、既に推進している強力な金融緩和措置の累積的な効果と併せ、今回の金融緩和の一段の強化により、日本経済が物価安定のもとでの持続的成長経路に復することを、「さらに確実なものにする」との期待が述べられています。要は、新たな政策無しでも大丈夫かもしれないが、より確実に効果を上げるため、政策を強化したという立てつけです。
今回の決定後、各紙で政治と中央銀行の関係に関する特集がありました。総裁の任期もあと11か月。日銀に対する注目は続きそうです。またいつかこうした点を取り上げようと思います。
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One comment on “Vol.139: 日銀展望レポート”
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