2012/03/05 00:00 | by Konan | コメント(3)
Vol.130: 海外生産に関する日銀レポート
日銀は多くの論者の中ではどちらかと言うとぐっちー寄り、すなわち円高容認に近い論陣を張っています。今回のレポートは「円高その他の要因により海外生産シフトが加速し、日本の産業は空洞化し、そして日本経済が破滅を迎える」というよくある議論の正しさ(誤り)を検証したレポートです。
そのうえで、「国際経済学の標準的な理論では、海外生産シフトは、これにより発生する国内生産要素の再配分が円滑に進むならば、企業収益の改善を通じて国民所得の向上に寄与すると考えられている」「対外直接投資を巡る実証研究では、多くの研究において、直接投資が輸出を誘発することが指摘されており、また、直接投資が必ずしも国内雇用の削減には繋がらないことも指摘されている」とされます。要は、海外生産シフト後、国内に残った労働や設備といった生産要素が他の仕事にうまく転用される限り問題ではないし、輸出が伸びることもある、従って海外シフトは本来的には国内経済にとってもメリットが大きいというのが、これまでの理論が教えるところとされている訳です。
ただし、2つの例外が指摘されます。1つは、労働市場に摩擦が存在し、雇用移動がスムーズに行われないケースです。この場合、国内経済は海外生産シフトの恩恵を十分に享受できず、雇用の減少という形で空洞化が発生する可能性があります。もう1つは、産業集積が外部経済効果を有するケースです。この場合、海外生産シフトにより1つの企業が退出すると、それが周囲に悪影響を与えてしまい、マクロの生産性低下やイノベーション停滞が発生する可能性が指摘されます。
そうした中で、最近海外生産を拡大する動きが強まっています。そして、今後仮に景気回復のモメンタムが十分に強まらない中で、大幅な円高が進むことなどによって海外生産シフトが加速するような状況が生じた場合には、国内生産の縮小ペースに新たな産業や雇用機会の成長が追いつかず、雇用の減少や技術の停滞という形で負の影響が残る可能性には注意が必要であると、目先の円高に関しての警戒感も示されます。
しかしながら、「海外生産は、本来、国際分業の進展、グローバル需要の取り込みの一環としてプラスの効果も大きいはずであり、海外生産の拡大によって得られるべきメリットを実現していくという視点が必要である」との主張が続きます。とくに、長い目でみれば、生産年齢人口の減少による労働力不足が、わが国経済の成長にとって問題になる可能性があるわけで、「海外生産の拡大を通じて、(1)海外のリソースを活用しつつグローバルな需要を取り込み、企業価値や海外活動からの所得の増大に繋げていくとともに、(2)国内においては、労働力を高付加価値品等へ振り向け、一層の産業高度化を実現していくことが、成長力強化や国民の所得拡大にとって重要である」と締めくくっています。
さて、最近の事件としてエルピーダの会社更生法申請が大きな話題となっています。この日銀レポートは、「半導体の生産自体に最早日本の有利性は無く、海外に流出してもやむを得ない。日本の生きる道は、半導体の設計、半導体の材料(素材)の生産、半導体製造装置の生産など、より付加価値が大きな道への特化である。それに成功すれば、日本経済は持ち堪えられる」との主張につながります。ぐっちーも最近のメルマガでそうした主張を展開しています。いかがですか?
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3 comments on “Vol.130: 海外生産に関する日銀レポート”
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「それに成功すれば、日本経済は持ち堪えられる」
それに成功させ、日本経済を持ち堪えさせねばならない」
この方が・・エネルギーと・・希望を感じさせる・・・
一部上場企業は世界企業ですからバブル以降も悪条件悪環境下でも経常収支を黒字にして来れたんでしょう、国際競争力が無いとか無くなったとか言いますが、企業はそれぞれ倦まず弛まず必死にリストラをしながら生き長らえて来たんでしょう、壮絶な戦いだったと思う、その結果が今の政治経済社会問題に反映されているんだと真摯に受け止めれば正しい考え方知力で乗り越えられる、みんなの党維新の会の維新八策はこの一連の流れだと考えたほうが良い。
経済学の”理論”では…。物理学では検証されない思考は仮説と呼ばれます。検証もされていない思考を理論と呼ぶとは、経済学それ自身は科学ではないと断言しているようなものです。経済学の胡散臭さは、科学的な論法を習得していない経済学を担う人達の性格を反映しているはずです。
ただし、起こりえない仮定を根拠する経済学でも、当たらずとも遠からずの有用性はあると考えています。