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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/02/20 00:00  | by Konan |  コメント(4)

Vol.128: 世界経済を振り返る(3)


前回は白川総裁の話しで終わりました。日銀については先日の「物価安定の理解」を「物価安定の目途」に変更との決定が話題を呼んでいますが、この感想は後日に譲ることとし、前回の話しを続けたいと思います。

では、白川総裁の「地味に着実に」という考え方のどこが問題なのか。ひとつには、こうした発想では経済のダイナミズムが失われ、成長期待が低下し、実際に実現する成長がさえないものに止まってしまう恐れがないかという点です。

この点は重要な論点と思いますが、私が気にしているのは、白川総裁の問題提起は、新興国には当てはまるとしても、最早先進国には当てはまらないのではないかという点です。

私には経済学の専門知識はなく、自分自身の問題提起に答える自信はありません。そのうえで、私の素朴な疑問を単純に書き表すと「日本で再びバブルを起こすことが出来るか」ということになります。信用バブルの崩壊が深刻な後遺症をもたらすことは事実です。従って信用バブルが生成しないよう慎重に政策運営を行うべきとの考え方も正しいと思います。しかし、もし信用バブルがもともと起き得ない経済であれば、そう目くじらを立てずとも良い、むしろ慎重な政策運営がただでさえ低い成長率を更に押し下げる恐れすらある、との危惧を抱いています。
実証的に言えば、日本でも2005、6年頃「ミニバブル」という言葉が使われるほどの地価上昇がみられました。しかし、1980年代のバブルとは異なり地価上昇地点は大都市圏に限られ、その規模は限定的に止まりました。「日本でもバブルが再び起きうるか」という点で、どちらとも解釈できる経験だったということでしょうか。

また、他の先進国をみると、日本に比べ人口減少問題の深刻さが低い分、マクロ経済的にみれば成長余地が相対的には高いので、また、日本に比べもともとインフレ期待が高まりやすい傾向を持つので、私の問題提起は十分には当て嵌まらないかもしれません(バーナンキ議長も、日米の違いについてこうした指摘を行っているようです)。

ただ、「羹に懲りてなますを吹く」ではないですが、世界的に見て、これまでのどちらかといえばインフレや信用膨張を心配する局面から、低成長やデフレを心配すべき局面に移っていることは間違いないと思いますし、そうした中で、信用バブル崩壊の教訓にのみ焦点を当て政策運営を行うことが、別な意味で誤りをもたらす恐れがあることを、気にしておいてよいとも思います。

次回は、本ブログVol.126で提起した「2000年代における経済の大きな振幅が引き起こした課題」のうち、ここ3回連続で取り上げた「経済振幅の抑制のあり方」とは異なるもうひとつの側面を取り上げたいと思います。

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4 comments on “Vol.128: 世界経済を振り返る(3)
  1. ペルドン より
    振り返る

    金科玉条・・オークンの法則・・
    まがい物だった・・
    と米国で出てきた・・

    失業率を一%上げるには・・実は・・国内総生産を・・二%ではなく・・七%上げねばならない・・
    となると・・
    中央銀行では・・精神的禁じ手・・インフレ目標に向かって・・
    バーナンキが・・
    恥じらう総裁の手を握りしめ・・モーテルに向かって・・オズオズ進み始めたのでは・・・

  2. ペルドン より
    訂正

    失業率を一%上げる為には・・
    ではなく・・
    下げる為には・・であります・・

    寝ぼけておりました・・
    エスプレッソ飲もう・・と・・・

  3. st より
    調整局面

    日本の場合、デフレによる調整局面でインフレなんて成長局面はまだまだ先の話と思うが。

  4. ペルドン より
    さりながら・・

    今日元銀行局長の話・・
    ギリシャを見ていれば・・インフレも他人ごとではない・・・

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