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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/11/21 00:00  | by Konan |  コメント(3)

Vol.115: TPP


APEC首脳会議で野田総理がTPPへの参加を表明しました。与党内でも反対が強く政局への発展も噂されたこの問題。各省庁も反対派議員の会合に何度も呼ばれ、苦労しました。

ぐっちーはTPP参加に反対のようです。私は賛成派で意見は異なりますが、論理の一貫性という点で、ぐっちーの主張は彼の円高賛成論と整合的です。「日本は輸出で成り立っている国では最早ない」という点を前提に、「円高で国は潤う。TPPでは得るものが少なく失うものが大きい」というのが彼の立論です。逆に言えば、円安歓迎とTPP賛成も「日本は輸出で成り立っている。円安やTPPにより輸出を伸ばすことが大事」と論理が一貫します。

とすると、「円安歓迎、TPP反対」と「円高賛成、TPP賛成」(私の立場)は論理的におかしいことになりますが、そうした立場の人は(とくに前者は)結構います。なぜ論理矛盾の主張をするのか?結局のところ、前者は日本経済への自信を殆ど喪失している点で一貫し、後者は日本経済の潜在能力を信じ、その発揮にはカンフル注射も必要との発想で一貫しているのだと思います。

言い換えると、前者の立場は「輸出産業ももろく崩れる可能性があるので円安で保護したい。国内産業は脆弱なのでTPPなどもってのほか」と考えています。後者の立場は「輸出産業は円高を乗り越える力を十分持っている。輸入物価下落や購買力上昇の円高メリットを享受する方が良い。TPPは輸出を伸ばすメリットがあるし、農業や医療などの産業活性化への刺激剤になり得る」と考えています。

TPPの際いろいろな議論がありました。TPP賛成反対はさて置き、とくに2つの議論について大切な観点と思いました。

1つ目は、(TPP賛成派からの)「日本農業はTPPに参加せずとも没落してしまう。TPP反対派が農業再生の絵を描けないとするなら、一か八かTPPに参加し農業活性化に賭ける方が良いかもしれない」との意見です。私は農業について見識はありませんが、議論の仕方として「TPPに参加しない場合との比較が重要」という点はその通りと思いました。

2つ目は、(TPP反対派からの)「TPP参加国の偏りが問題である。TPP参加は不参加国(例えば中国)との関係で価格の相対関係を歪めてしまうが、これが本当に日本のため良いことなのか」という意見です。要はTPP賛成派は部分均衡的に「輸出が伸びる」と期待する訳ですが、「TPP非参加国との関係を含め一般均衡的に考えないと物事を見誤る」との考え方で、賛成派の私から見ても正論と思いました。逆に言えば、中印韓日+ASEANの自由貿易圏構想を報道通り加速させ、自由貿易関係を多極化していくことが重要ということかもしれません。

最後に1点。今回「TPPで医療が崩壊」との議論が医師会から強く出ました。しかし、医者の暮らしぶりをみているともう少し競争が必要と思ってしまうのですが、いかがでしょうか?

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3 comments on “Vol.115: TPP
  1. ベルドン より
    TPP

    泥鰌にせよ・・
    ナマズにせよ・・
    泥の中から・・
    代表戦候補の第一声・・大連合・・
    これで・・
    先見の無さを・・誇示・・
    以来・・諸々・・
    この首相・・
    賛成なら・・反対が正しい・・
    反対なら・・賛成が正しい・・
    政治版ローチ氏・・
    故に
    TPP・・
    反対であります・・・

  2. ばすがすばくはつ より
    TPPっていったいなんなのでしょうか

    関税障壁のため日本から売ることが困難なものが、どれほどあるのでしょうか。そのようなものを突破するため、東南アジアや現地生産をしているのではないのでしょうか。そのあたりが知りたいですね。
    農業が大事といわれながらも、今の農水省のやり方(自給率が改善しなければ、いろいろと予算がつくので改善する方向に持っていっていない)では、農業はいつまでたっても立ち行かないでしょう。TPPに仕方なく参加する方向性を見せて、予算ガメようとしているのがみえみえで。
    医者の暮らしといえど、保険診療のみを行っている方は苦しいと思いますが。テレビ等に出る方は、自費診療で設けているはずです。このような方は、TPPになっても生きていけるのでしょうが、医療に経済性が導入されると、貧乏人は医療にかかれなくなりますし(公的保険は、金持ちと貧乏人の保険料が違うが、給付は同じという垂直分配が働かなくなる。)、価格競争が進むと医療機関の淘汰が進み、地方の医療も患者数の問題から、それなりの医療しか受けれなくなります。
    医師会がいうと胡散臭く見えてしまいますが、この20年公的保険がパイとしては大きくなっていない中で、医療関係者が耐えてがんばっている状態です。TPPに参加しなければ、医者はもっと奴隷医になるかもしれませんね(笑)。

  3. TPP反対、円高賛成 より
    匿名希望

    TPPの問題点は、米韓FTAのように、全てを米国に利する為の法律環境が強制されること。それだけと思います。

    なお、米国の一人当たり医療費は日本の2倍で、患者ではなく保険会社の株主利益を最大化する為、医者は診療しないのが基本方針です(真面目に診療すると、医師は保険会社の認定から外される)

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