プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/11/14 00:00  | by Konan |  コメント(3)

Vol.114: 人口動態とバブル


前回に続き日銀ネタです。少し古くなりますが、日銀の西村副総裁が9月30日に行った講演がとても興味深い内容なので、簡単に紹介しようと思います。

因みに、日銀では白川総裁ばかり目立ちますが、副総裁2名が総裁を支えています。1人は日銀出身の山口副総裁で、主に人事や組織管理面を仕切っていると噂されます。もう1人が学者出身の西村副総裁です。

さて、この講演で扱われたテーマは「人口動態とバブル崩壊の関係」です。日本、米国、欧州の実例を踏まえ、バブル崩壊時期と人口動態が見事に重なると指摘されています。具体的は、生産年齢人口何人で非生産年齢人口を支えるかというグラフと、地価動向のグラフを重ね合わせると、恐いほどその時期が一致しているのです。生産人口が順調に増える時期からそうでない時期への転換点と、地価上昇から下落への転換点は、日本では1990年頃、米国では2007年頃と見事に一致しています。
そして、中国のグラフも掲載されています。中国で人口動態が転換を迎えるのは2010年から2015年の間です。要は、過去の例が当て嵌まるとすれば、中国ではまさに今バブルが崩壊しかけているという訳です。

副総裁自身は、「私は決して、この人口要因が、資産価格バブルの原因であり、それが危機につながったと言っているわけではありません」とヘッジしたうえで、生産年齢人口が伸び、経済成長が続くとの期待がバブルを生む可能性は否定できないと、控え目ながら示唆に富む指摘をしています。引用すると「私の趣旨は、多くの国において、(生産年齢人口・非生産年齢人口比率の増加といった)好都合な人口要因が過剰な楽観主義に結び付き、経済主体がリターンの増加を企図して様々な形で「レバレッジ」を増加する一因となった可能性を指摘することにあります。別の言い方をすれば、資産バブルは、人口動態の変化という長期の「波」の上で踊られた「ダンス」と言えるかもしれません」としています。

紹介は以上ですが、数回前このブログでJapanisationを取り上げた際に、「欧米はまだ人口減少に直面していない分、日本に比べれば楽観出来る面もある」と書いたことが、実は誤りかもしれないということを、この西村副総裁の講演は指摘しています。11月4日のG20サミットを終え、世界の指導者はギリシアに端を発する危機の回避と成長の回復に努めていますが、道は険しいようです。

メルマガ「新・CRUのひとり言」を購読するためにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

3 comments on “Vol.114: 人口動態とバブル
  1. ベルドン より
    人口動態を母数にした・・

    随分以前から・・
    指摘されていて・・
    故に・・外国人労働者の自由化で・・母数を増やせ・・と主張された・・

    「人口動態とバブル崩壊の関係」
    成る程・・
    ステロイド注射のように・・万能の様に思えるが・・先進諸国では・・と言う条件が付き・・この数式さえあれば・・地球の何処でも使える・・とはならないのでは・・・?!

  2. st より
    テクニカル分析

    日銀副総裁ともあろう方が講演でテクニカル分析をするとは、どういう種類の講演であったかは知りませんが。

  3. ベルドン より
    統計

    金融工学の連中なら・・
    それら統計は・・確率で・・裏付けされていない・・
    と言うでしょう・・

    重ね絵は・・
    騙し絵・・絵画論・・・(笑)

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。