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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2010/03/29 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.29: 郵政民営化


今回は、最近話題の郵政民営化について採り上げます。ご案内のように、小泉政権最大のテーマであり、5年前の選挙で自民党圧勝の背景ともなった郵政民営化は、それに反対して自民党を離党した国民新党主導で逆回転しつつあります。具体的には、政府出資を受けた親会社から郵貯銀行、簡保(金融2社)への出資比率を1/3超に維持する(これまでは全株売却し完全民営化とされていました)、金融事業にも過疎地を含む全国一律のサービス維持を義務付ける、郵貯の預入限度額(現行1千万円)を2千万円まで引き上げる、といった方向が示されています(ただし、仙谷大臣等の反対も報じられています)。

ところで、小泉さんはなぜ郵政民営化に拘ったのでしょうか?仮に小泉さんが「郵政民営化さえ出来れば日本は良くなる」と単純に考えていたとすれば、それは余りに楽観的過ぎます。日本が抱える問題は、それほど簡単なものではありません。一方、彼が「郵政民営化すら出来ないようなら、日本は良くならない」という意図であったとすれば、私は全面的に賛成します。

郵政(とくに郵貯)の問題は、日本における資金の配分を官が決めるか、民の力に委ねるかという問題に帰着します。過去、日本では、単純に言えば郵貯という官製金融が国民のお金を吸い上げ、それを財政投融資という官製の資金支出の出口から流していくという、大きな資金の流れがありました。このように官の資金パイプを大きくしていた背景は、(天下り先確保の点は捨象するとして)、官の方が民より適切に資金を配分できるという思想(お上は偉いという発想)、あるいは、民に任せると採算が合わず切り捨てられかねない主体にもお金を回すべきという考え方、があったと思います。

前者は自由主義、資本主義の日本において本来あってはならない考え方ですが、日本の民間金融機関の体たらくもあり、受け入れられていたと思います。後者、すなわち「弱者をどこまで救うか」という観点は、無視し得ない重要な政策上の論点です。

ただ、仮に「潜在成長率が低下してしまった日本の状況を変えていく」という成長戦略の視点でみた場合、競争力のある主体に資金を流す一方、喪失してしまった主体への資金の流れを止め、淘汰させ、新たな競争力を持ちうる分野に振り向けていくというメカニズムがどうしても必要です。無論、弱者に手を差し伸べるセーフティネットの視点は重要ですが(竹中さんが不人気なのは、この辺を無視していると誤解されがちだからと思います)、そうは言っても淘汰は必要です。そしてそれは、採算を重視する民の手によってしかなし得ないことです。従って、官製の資金パイプを極力絞り、民に変えていくことが重要で、そのために郵政(とくに郵貯事業の)民営化が進められてきた訳です。

この意味で、郵政民営化の流れが逆転することは大変寂しいことです。ただし、実は背後にもうひとつ別の観点が潜んでいるのではないかと睨んでいます。

新年特集でも取り上げたように、財政問題は長期的にみると成長戦略無しで解決することは出来ませんし、このままではどこかで日本国債の信認が失われる恐れがあると思います。ただ、短期的にみれば、国債への安定的な大投資家が存在すれば、非連続的な金利上昇をある程度防ぐスムージング効果を期待できるかもしれません。民営化を進めつつあった郵貯でも、現実の投資先の殆どは国債でした。ただ、民営化が止まった郵貯は、一段と政府の意思を感じ、国策として国債に投資する行動を取るはずです。この点を魅力に感じる勢力が、国民新党以外のところで、郵政問題を誘導しようとしているのではないかというのが私の読みです。あるいは、日銀による国債引受けを主張する亀井大臣の戦略の一環と位置づけられるかもしれません。どうでしょうか?

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One comment on “Vol.29: 郵政民営化
  1. ぺルドン より
    亀かあれか

    亀さん一人?・・大蔵官僚戦略の匂いが・・幹事長の気配も・・

    亀さんは雇われマダム・・姦しい足軽隊を睨む侍大将・・
    下知した振り・・ハトの殿・・その殿方を下知される御台所・・

    ノストラダムスは未来ではなく、過去を・・歴史を研究して予言したと伝えられる。ディフォイ等の信託も諳んじていた・・隠れたる歴史家・・

    明日の予言は昨日の予言・・今日の予言は一昨日の予言・・
    予言は殆当たらないし・・当たったとしても手遅れ・・・

    御台所の顔色を伺いましょう・・・

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