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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/10/31 00:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.112: マスコミについて思うこと


ぐっちーは良く記者の勉強不足、報道の酷さを指摘します(最近も日経批判を展開していましたね)。この点について、私なりの感想を書きたいと思います。

記者は千差万別、とても優秀でよく取材する方もいますし、理解能力が低い、取材が不足している、思い込みが著しい方もいます。こうした能力差はどこの世界にもあることですが、常々マスコミに関し不思議に思うことは、担当者交代時に引継ぎがなされない点です。

引継ぎを行うかどうか、組織文化により千差万別と思います。想像するに例えばディーラーの世界では自分の顧客を後任に引き継ぐことはないのではないでしょうか?自分の商売仇を作りたくないと考えることは自然と思います。官の世界では、異動期になると新旧担当者相俟って関係者に挨拶して回ります。後任に「この人がキーパーソンだから大事にせよ」との引継ぎも行います。

私の知る限り、マスコミではこうした引継ぎは行われません。異動期に前任後任が連れ立って挨拶に来ることはありません。何人かの方に聞いてみたところ、「取材源を隠したい。独占したい」という気持ちと「記者たるもの自分で独り立ちして取材先を開拓すべき。そうした意欲がないと特ダネも取れない」との信念から、引継ぎを行わないそうです。要はマスコミの世界では知識や知見が蓄積されない訳で、報道の質が低いひとつの背景と思っています。

次に、会社の方針により報道が曲げられるという問題があります。例えば菅さんが嫌いと決めると、すべてのことが否定的に報道されます。彼の政権末期の頃、例えば福島第一に関し「冷却機能が大分安定してきた」といったニュースは極めて小さく扱われる一方、ネガティブなニュースは大きく報道されました。

また、マスコミは広告収入が命ですので、自らの経営が景気動向に大きく左右されます。「景気は気から」と言いますが、端的に言えば「広告収入を増やしたい→景気を良くしたい→明るい方向に曲げて報道」ということが良く行われます。

ぐっちーの指摘の多くは、「景気指標の報道が不十分かつ歪んでいる」というものですが、上記のような知識の蓄積の無さと、会社の方針に従わざるを得ないことに伴う歪みに起因すると思います。

省庁では記者クラブ向け勉強会を開催するなど、記者のレベル底上げに努めています。「有利な記事を書いてほしい」との底意もありますが、それ以前に正確に報道してほしい、個別取材や会見を効率的に行いたい(不勉強による不明確な質問が最も扱い難いので)といった気持ちによるものです。

ただ、上記のような構造が変わらない限り、事態はなかなか改善しないように思います。しかし、だからこそ、Gucci Postでのぐっちーや前橋さんのコーナーの存在価値が出てくるのかもしれません。

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2 comments on “Vol.112: マスコミについて思うこと
  1. ベルドン より
    マスコミ

    ここの啓蒙も・・
    無料教育も・・
    感服・・
    ただ
    競馬の予想だけは・・・(笑)

  2. 世の懸念 より
    マスコミを何とかせねば

    マスコミの恣意的な報道や世論誘導は、日本の現下の最大の問題点だと思う。

    誰か事実を積み上げて、その構造を暴いて、問題の解決を図ってくれないかなあ。

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