2010/02/22 00:00 | by Konan | コメント(0)
Vol.24: 金融業界バッシング
今回のテーマは「金融業界はなぜ不人気なのか」です(2回続けて不人気がテーマになってしまいました)。ぐっちーも取り上げたように、オバマ政権はwall streetとの対決姿勢を強めています。同様の動きは仏英などでもみられます。「それでよいのだろうか」という点に触れてみたいと思います。
オバマ政権が打ち出しつつある政策は大きく分けて2つです。まず、金融業界にある種の課徴金を課すこと。公的資金を投入し、納税者=国民に迷惑をかけたのだから、儲けが出たら国民に返せというシンプルなロジックです。2つめは、ボルカー・ルール(ボルカーさんはグリーンスパンの前のFRB議長で、伝説的な人物です)ともグラス・スティーガル法の復活とも呼ばれる話しで、骨子は、銀行や銀行を傘下に持つ金融機関が、顧客と関係ない自己勘定取引を行うことや、ヘッジファンド等の運用主体になることを禁じるとともに、金融機関の規模に一定の制約をかけるという点です。
実は、技術的にはそれぞれの政策には難点があります。例えば課徴金について言えば、米国の場合、資本の形で投入された公的資金の多くは既に傷付かず返済されていて、損失は、自動車業界関連やAIG、あるいは地方銀行のように、大手商業銀行、投資銀行という金融界の中核以外から生じている(または生じる可能性がある)のが実情です。それなのに、つけをシティやゴールドマンが払うのはおかしいと言えないことはありません。また、ボルカー・ルールについては、プロップと呼ばれる自己勘定取引と顧客取引を分けることはそもそも困難な面があります(ブローキングに近いものは顧客取引ですが、例えば顧客から買って、しばらく抱えているうちに相場が上がったので売って儲けるのはプロップが顧客取引か、という問題です。なお、この辺は専門家のぐっちーに解説して欲しいと思います!)。
ただ、「公的資金をもらった銀行が数十億円ものボーナスをもらうのはおかしい」「そもそも銀行が儲けるのはおかしい」という気持ちは、国民に広く共有されやすいと思います。同様の声は日本でもよく聞かれますが、要は「トヨタ(プリウス問題で信認が揺らぐ前の)やソニーは偉いが、銀行は汗をかかずに儲けている」という感覚と思います。
確かに、(以前の)トヨタと三菱UFJ銀行を比べたとき、トヨタの方が汗を流して日本や世界に貢献しているイメージがありますし、実際、そうなのだという気もします。あるいは、M&Aをサポートする側と、M&Aを行って事業展開を図る側とどちらが偉いかと聞かれると、後者(非金融側)である気もします。また、そうした感情論は別にして、日本のバブルも今回の世界的経済危機も、金融がその発生に大きく関わった訳で、経済安定化の観点からも、金融の動きを縛る(結果として儲からないようにする)ことには一理あります。そして実際バーゼル規制強化の議論が進展しています。
ただ、金融を悪者にすることだけで問題が解決するとも思いません。本来、金融は資金供給主体と需要主体を結び付ける、そして成長性が高い需要主体をサポートし、逆に低い(失った)需要主体を選別・淘汰していくという、経済成長の基本的メカニズムの中で不可欠な存在であるはずです。悪者論が強まりすぎる結果、そうした機能が損なわれてしまうと、結果的に全体の経済、ひいては国民にとり損失です。やや場面は違いますが、以前も取り上げたように、日本では貸金業の規制がさらに強化される予定ですが、一見「かわいそうな借り手保護」のための良い政策が、本当にお金が必要な零細個人事業主等の首を絞めてしまう恐れも出ています。
規制と自由のバランスはとても難しい、永遠の課題ですが、難しいからと言ってバランスを失し、一方に流れることは危険と思います。バランスをとるためのぎりぎりの議論が必要と感じています。
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