2009/12/07 00:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.13: リーマン危機回顧(その1)
とうとう師走になりました。1年を締めくくる月になったということで、今月は2、3回にわたり、今回の世界的な金融・経済危機について振り返ってみたいと思います。至るところで語りつくされ、日本でも、この9月には「リーマン破綻1周年」特集記事が、様々な媒体で掲載されました。3ヶ月遅れになりますが、私なりの総括を試みたいと思います。
今回は、2000年以降の世界経済の動きについて、実体経済の動きに焦点を当て、振り返ってみたいと思います。
以前も紹介したIMFのデータで、世界経済の成長率を遡ると、まず、2000年は+4.7%とかなりの高成長を記録しました。ちなみにその年、米国+3.7%、日本+2.9%、ユーロ圏+3.9%と先進国は軒並み良い数字が並び、ロシアは+10%丁度と2桁成長でした(中国は+8.4%です)。この年はITバブルで世界中が沸き立っていた年に当たり、実体経済面でもそうした金融面の活況が反映されている訳です。思い起こすと、この時、当時の日銀総裁だった速水さんがゼロ金利解除に踏み切り、後々大変な批判を浴びたことも思い出されます。
そのITバブル崩壊後の2年間、すなわち2001年と2002年は、極めて低い成長が続いた年でした。世界全体でみると2001年+2.2%、2002年+2.8%。米国は+0.8%、+1.6%、日本は+0.2%、+0.3%、といった感じです。ロシアは+5.1%、+4.7%と成長率が急低下。中国もまだ一桁成長でした。
転換点になったのは2003年。この年、中国が+10.0%と、ついに二桁成長に乗りました。なぜこの年そうなったのか、中国の発展段階の中で偶然成長加速フェーズに入ったのか、世界経済の流れの影響があったのかよく分かりませんが、兎も角エポックメーキングな年になった訳です。その年の世界の成長は+3.6%と上向き始め、日米やその他の新興国等の成長も上向き始めます。
2004年には成長が実感できるようになり、世界の成長率は+4.9%とかなり高水準に戻ります。中国(+10.1%)に加え、インド(+7.9%)、ロシア(+7.2%)、ブラジル(+5.7%)とBRICs各国の成長率が上がり、中東も+6.0%成長です。そしてその前年0.8%に止まっていたユーロ圏の成長率も2.2%と巡航速度に戻ります。米国+3.6%、日本+2.7%と良い数字が並びます。
その後は、2005年+4.5%、2006年+5.1%、2007年+5.2%と世界経済の好調が続きますが、2007年夏以降のサブプライムローン問題を契機に、2008年の成長率は+3.0%と低下し、今年の見通しは−1.1%と、ついにマイナス成長が予想されています。
さて、以上を振り返ると、2003年、2004年頃を境に、世界経済の様相が変わったことがみてとれます。その起点は中国の二桁成長(2003年)であり、その他新興国の成長率も上昇を始めました。この中国を始めとする成長の開始は、資源価格の上昇をもたらし、ロシアや中東のような資源産出国の成長を導きます。また、これらの国の活況に支えられ、輸出の回復が生じ、先進国にも好況が波及すると言うメカニズムが働いていったと思います。典型的には、ユーロ圏についてみると、中東やロシアに近いと言う地理的な利点を持っています。中国から中東、ロシアに波及した景気の良さが、ユーロ圏の輸出増加を通じ、ついにユーロ圏にも及んだと言うのが、最も分かりやすいルートです。無論、中国から日本への波及ももうひとつの典型例です。また、資源価格の代表例である原油価格も、1バレル30ドル前後の状況から、ステディに上昇を続け、2006年には60ドルといった水準に到達しています。
さて、このように景気がよくなり、資源価格も上昇すると、普通はインフレが心配になります。世界中の中央銀行は利上げを行い、インフレ退治に乗り出す結果、経済成長が抑制されていく訳です。ところがそうならなかった。次回はこの点に焦点を当てつつ、金融面の動きについて触れたいと思います。
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One comment on “Vol.13: リーマン危機回顧(その1)”
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ずっと興味を持って拝読させていただいていましたが、
今回の一文は特に「ここで終わり!?」って感じで、続きが非常に気になりました。
お待ち申しあげております。
よろしくお願いいたします m(_ _\”m)