2009/10/26 00:00 | by Konan | コメント(0)
Vol.7: 自民党(その2)
今回は、自民党に関する与太話の続き(3つめ)です。前回は、党内の政策決定プロセス、日本的な価値観に関する立ち位置の2点を取り上げましたが、今回は、「経済運営において自由と平等のどちらを重視するか」という論点を取り上げたいと思います。
私の勝手な印象なのかもしれませんが、日本の55年体制において、与野党の最大の対立軸は、経済政策ではなく、憲法9条問題だったのではないかと思います(この点は、対イラク、アフガニスタンのような問題にも尾を引いています)。経済については、与党自民党と野党社会党その他の間で考え方に違いがあったのかもしれませんが(「自由」と「社会」では、全然違うはずですよね!)、その違いは余り感じられなかったということです。その理由は、第1に、80年代まで日本経済が順調な成長を続け、分配面でも「皆が中流」といった意識が広まったように、結果的に余り金持ちと貧困層の差が大きな政策課題として認識されずに済んだ、ということにあると思います。第2に、自民党も景気後退期には積極的な財政政策を発動してきたので、「大きな政府」指向のイメージが定着してきたということもあると思います。
ところで、(ここからは専門家ではない底の浅さが露呈してしまいますが、、、)、米欧の主要国をみていると、2大政党の間の大きな対立軸は、経済についての考え方の違いである(あった)ように思います。米国では、リベラル、すなわちどちらかといえば個人間の結果の平等を重んじる傾向がある民主党と、機会の平等さえ与えれば、結果の差は問題ではない、むしろ競争が活力の原動力と考える傾向がある共和党の間で、考え方の違いがあると思います。英国では、労働党は文字通り労働者階級への分配の公正性を重んじる傾向がある(少なくともブレアまでは)のに対し、保守党はサッチャーが典型的ですが、自由競争を重んじてきたと思います。
この2つの政策のどちらがよいか、一概に断じることは出来ません。どちらかと言えば、リベラルは安定した、しかしやや緩慢な経済のイメージに、そうでない方は、荒っぽい、しかし伸びもよい経済のイメージに、それぞれ結びつきやすいと思います。ただ、どちらを好むかは、まさに国民の判断であり、かつ国民の判断も常にどちらかを支持するというより、時と場合により支持対象を変える、ということとも思います(だから政権交代が定期的に起こるということなのでしょう)。
ところで、最初の方で書いたように、日本の場合、どちらかと言えば、与野党ともリベラルな方向感を持ってきました。そこに一石を投じたのは小泉政権でした。小泉政権の経済政策の根底にあったのは、経済を一度自由な流れに任せ、優勝劣敗を明らかにし、「優勝」がどんどん伸びて日本経済の発展を支え、「劣敗」は一旦酷い目に会うが、成長性の高い分野に切り替えていくことにより、中長期的には成長に寄与していく、という考え方だったと思います。短期的には差がついても、長い目でみれば良いこと、という発想です。
今回の選挙で、そうした方向は完全に敗れ、民主党政権は、子育て支援に象徴されるように、リベラルの方向を鮮明にしています。谷垣自民は、同じ方向で臨むのか、もう一度小泉改革に立ち戻るのか、岐路に立たされると思います。同じに寄れば埋没し、非リベラルを打ち出すとまた選挙で大敗する、と言う大変難しい選択を迫られているということです。ここから抜け出すには、長期的な視野に立った説得的な成長戦略と、短期的に「敗れた」人たちへのミニマムな経済安全保障の提供という2つの政策をうまく組み合わせた対案しかないと思いますが、そこを今後打ち出していけるでしょうか?今後の展開を注目したいと思います。
2回にわたり与太話にお付き合い頂き、申し訳ありませんでした。
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