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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2023/09/18 06:30  | by Konan |  コメント(1)

Vol.207: 小噺・植田総裁@読売新聞


旧聞に属する話ですが、植田日銀総裁の読売新聞インタビューが話題になりました。とくに、マイナス金利解除が選択肢となり得る点と、年内までに判断するデータが揃う可能性への言及が注目されました。

先に後者については、来年の春闘を注視していた向きから見て、数ヵ月ですが早い印象です。真意は分かりませんが、日銀短観(12月央公表予定)や冬季ボーナス動向が視野に入っていることは間違いないと思います。また、日銀は、輸入物価上昇の影響が当面減衰していくと見ていますが、減衰後の物価上昇率が今よりどれほど低下するか見極める上で、良いタイミングと思っているのかもしれません。

前者について、マイナス金利解除にこのタイミングで言及することに少し驚きました。世間の関心が10年物金利のコントロールに集まっていたからです。

2016年1月のマイナス金利導入時、日銀は世間の非難を浴びました。喉に刺さった骨を抜く観点では、マイナス金利解除をいち早くやっておきたいことが、日銀の本音とも思います。

ただ、いくつか難しい点があります。まず、これまでのイールドカーブ・コントロール下で、10年物金利の変動幅は拡大されてきましたが、日銀はこれを利上げでないと主張しました。変動幅の中心値がゼロパーセントに維持されたからです。しかし、マイナス金利が解除されれば、マイナス0.1%から短期金利は上昇し、利上げでないとの説明は苦しくなります。

次に、短期金利の上昇は、これまで無風だった変動金利型住宅ローン金利に波及します。これは、多くの国民にとって一大事です。

さらに、10年物金利のコントロールをどうするか。順イールドを維持するなら、例えば短期金利がマイナス0.1%からゼロ%に上昇すると、10年物金利コントロールの中心値も上がるはずです。しかし、「0.1%±0.5%。上限1.1%」が格好良いとは思えません。イールドカーブ・コントロールをやめてしまいたい衝動にかられます。

付け足せば、今の短期金利コントロールは、マイナス0.1%、ゼロ%、プラス0.1%の3層構造です。マイナス金利解除後、単純にゼロ%とプラス0.1%の2層構造にするのか?シンプルな1層に戻すのか?戻すとして何%か?

このように、植田総裁発言は、意外にも難しい問題をはらみます。知恵袋の内田副総裁が解決してくれると思いますが、追っていきたいと思います。

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One comment on “Vol.207: 小噺・植田総裁@読売新聞
  1. 中村哲治 より
    植田日銀の政策転換について

    「「0.1%±0.5%。上限1.1%」が格好良いとは思えません。イールドカーブ・コントロールをやめてしまいたい衝動にかられます。」という部分の理由はどのような論理になるでしょうか。

    マイナス金利をやめてもイールドカーブコントロールの起点が変わるだけで(長期金利と短期金利の差を一定枠に留めるという)イールドカーブコントロールを「やめてしまいたい衝動に」かられることにはならないと思います。

    また「今の短期金利コントロールは、マイナス0.1%、ゼロ%、プラス0.1%の3層構造です。マイナス金利解除後、単純にゼロ%とプラス0.1%の2層構造にするのか?シンプルな1層に戻すのか?戻すとして何%か?」については、既に既得権益になっているプラス0.1%についていきなりゼロにすることは、できないのではないでしょうか。

    「シンプルな1層に戻す」ことは、国債の需要を増して長期金利が下がることに繋がります。イールドカーブコントロールをよりやりやすくするにはいいでしょうが、民間銀行が大反対すると思います。現実的には「単純にゼロ%とプラス0.1%の2層構造にする」の一択だと思います。いかがでしょう。

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