2023/09/04 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.206: 月例経済報告と金融行政方針
今回は、内閣府月例経済報告(8月28日公表)と金融庁の金融行政方針(29日公表)を簡単に紹介します。
***********
月例経済報告は判断維持
***********
月例経済報告の景気基調判断は、現状・先行きともに維持されました。ただし、先行きのリスクとして中国経済の先行き懸念が指摘されたことが変化点です。需要項目では輸出の持ち直しが指摘されました。
(現状)
・基調:景気は、緩やかに回復している
・個人消費:持ち直している
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:このところ持ち直しの動きがみられる
(先行き)
・基調:雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある
・個人消費:雇用・所得環境が改善する下で、持ち直しが続くことが期待される
・設備投資:堅調な企業収益等を背景に、持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:当面、横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:関連予算の執行により、堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:持ち直しの動きが続くことが見込まれる。ただし、海外景気の下振れリスクに留意する必要がある
***********
損保問題に忙殺される中で
***********
今般就任した栗田長官の下で初めての金融行政方針。毎年8月末にその事務年度の方針が公表されます。栗田長官は昭和62年大蔵省入省。長く金融行政畑を歩きました。私も面識がありますが、堅実な実務派のイメージです。就任早々、損害保険業界を巡る問題に直面していますが、金融行政は損保に閉じるわけではなく、他の分野での活躍も期待したいところです。
全文は読めていませんが、概要を見ると以下の4つのパートに分かれています。
・経済や国民生活の安定を支え、その後の成長へと繋ぐ:金融機関が、資金繰り支援にとどまらず、企業の経営改善支援や事業再生支援等を実施することを促します。また、画期的な法整備として、事業全体に対する担保権の制度化に取り組みます。
・社会問題解決と経済成長を両立させる金融システムを構築する:資産運用立国の実現、資産所得倍増プランの推進に取り組みます(この中で、国民の金融リテラシー向上を図るため、金融経済教育推進機構を設立します)。また、スタートアップの資金調達の円滑化、サステナブルファイナンスの推進を進めます。コーポレートガバナンス関係では、大量保有報告制度と四半期開示の見直しを行います。
・金融システムの安定・信頼を確保する:金融経済等の動向が金融システムの安定に与える影響を注視し、金融機関の持続的なビジネスモデル構築に向け経営基盤の強化を促します。
・金融行政を絶えず進化・深化させる:金融庁と日銀によるデータ一元化の取組みなどを進めます。
最近は、森長官は顧客本位の確立に、遠藤長官は地域活性化への貢献に、氷見野長官は国際化への対応に、中島長官は資産所得倍増に、それぞれ最も力を入れた印象があります。栗田長官の手腕に期待します。
今回はこの辺で。出張の関係で次週はお休みします。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。