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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2023/02/13 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.182: 植田総裁!


私を含め全ての予想が外れ、黒田総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和男さんが選任される流れとなりました。まだ国会への正式な提示すら行われていませんが、与党が圧倒的な多数を占める現況を踏まえると、高市さん達アベノミクス派が乱を起こさない限り、確定したと言って良いと思います。副総裁は内田眞一さん(現日銀理事)と氷見野良三さん(前金融庁長官)が候補者です。

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総裁人事の流れ
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先週月曜日、日経が「雨宮副総裁に打診」という極めて中途半端な記事を載せました。他のマスコミ関係者から「こんな記事なら半年前でも書けた」と言われるひどい内容で、なぜ日経がこの報道をしたのか自体、今後の解明が待たれます。ずっと固辞を続けていた雨宮さんに引導を渡すため、官邸か財務省が書かせたとの説もありますが、真相は闇の中です。

事態が動いたのが金曜日夕刻。「植田、内田、氷見野」を各紙が報道。14日に国会提示の流れです。

10年間財務省出身総裁が続いた後なので、「次は日銀」との思い込みと、「正副総裁のうち一人は女性」との思い込みが、私は素より関係者の読みを狂わせました。結果は日銀出身総裁でもなく、女性も選ばれませんでした。かねてからの岸田総理の思いだったのか、黒田さんの策略だったのか、雨宮さんが固辞したため急遽練られたのか、現時点では不明です。

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植田新総裁とは
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植田さんは、以前週刊誌に女性との記事を書かれるなどわきの甘さはありますが、とても立派な経済学者です。日銀審議委員時代、当時日銀が「時間軸効果」と呼び、今では各国中銀がフォワードガイダンスと呼ぶ金融政策の手法・枠組みを考え付いた知恵者でもあります。

植田さんが審議委員を務めたのは速水総裁から福井総裁の頃。ゼロ金利解除で失敗し、当時としては大胆な金融緩和策に踏み出す必要に迫られた日銀は、「量」の拡大に踏み切るとともに、「そうした緩和措置を物価が前年比で安定的にプラスになるまで継続する」とのメッセージを発しました。これが時間軸効果で、この発案者が植田さんと言われます。この意味で、金融緩和の必要性を十分理解し、それをロジカルに枠組みに仕立てる能力を持った方という訳です。この点で所謂「タカ派」ではありません。

ただ、黒田さんのようにここまで量的緩和を進め、期待に働きかける政策の効果に対しては、疑いを持っているとも思います。その意味で純粋な「ハト派」でもありません。

以前、3人の副総裁経験者を総裁候補と書いた際、白川、山口、中曽、雨宮、黒田と並べました。直感的には、山口さんと中曽さんの間、ないし副総裁を退任し黒田さんの政策にやや批判的な方向に変わった中曽さんと同じような立ち位置と想像します。なので、間違いなく黒田政策の検証と変更が行われます。

ただ、黒田さんの時のように就任直後に大胆な政策変更を行う可能性も低いと思います。暫く検証作業が続くのではないでしょうか。マイナス金利を含むイールドカーブコントロールのあり方、量の拡大の仕方、ETFのような資産購入への考え方など、重要な論点は複数あります。どのような見直しも引き締め方向になりますが、物価上昇率が前年比4%台に乗せたとはいえ実体経済が強い訳でもなく、引き締めの程度には自ずと限界があります。こうした意味で、ナローパスの出口を探る、難しい時期が続くと思います。

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2人の副総裁
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内田、氷見野両名とも面識がありますが、内田氏はまさに「能吏」。白川総裁にも黒田総裁にも完璧に仕え、支えることが出来る稀有な人材です。雨宮さんを小型にしたイメージでしょうか。金融政策面で植田日銀を支える支柱・キーパーソンになると思います。

氷見野氏は、国際的な金融規制の世界で、日本はもとより世界的にも第一人者。金融政策の経験はなく、この面は植田・内田主導が予想されますが、中央銀行の総裁・副総裁クラスでなければ就任できないバーゼル銀行監督委員会議長を狙える、わが国で唯一の人材です。金融庁との連携も一段と強化され、危機への備えも万全になります。この点では中曽さんに近いのでしょうか。

こう考えると、植田新体制は「雨宮」「中曽」を従えるのに近い布陣。金曜日夕刻以降、「予想外だったが、結構良い人事」との評価が多いのは、こうした理由でしょうか。

今回はこの辺で。次週は簡単に、今週公表予定の昨年10~12月期日本のGDPを解説します。

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