2023/01/23 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.179: 大山鳴動の日銀金融政策決定会合
今回は、これまでに無いほど注目を集めながら政策変更が無かった日銀金融政策決定会合(17、18日開催)の紹介です。淡々と景気判断から始め、最後に政策面を記します。
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景気判断は維持
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今回のように展望レポートがある月(1月、4月、7月、10月)とない月(3月、6月、9月、12月)ではスタイルが異なり比較が難しい面はありますが、景気判断は現状・先行き・リスク要因とも維持されました。
(現状)
・基調:資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで、持ち直している
・個人消費:感染症の影響を受けつつも、緩やかに増加している
・設備投資:緩やかに増加している
・住宅投資:弱めの動きとなっている
・公共投資:横ばい圏内の動きとなっている
・輸出:供給制約の影響が和らぐもとで、基調として増加している
(先行き)
・見通し期間(2024年度までです)の中盤にかけては、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、回復していくとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる
(リスク要因)
・海外の経済・物価情勢
・今後のウクライナ情勢の展開や資源価格の動向
・内外の感染症の動向やその影響
・金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響
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物価見通しはやや上方修正
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展望レポートの中では、黒田総裁を含む9人の政策委員会メンバーによる実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されます。中央値(9人のうち上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。
(実質GDP)
2022年度+1.9%(前回+2.0%)、2023年度+1.7%(前回+1.9%)、2024年度+1.1%(前回+1.5%)
(消費者物価指数=除く生鮮食品)
2022年度+3.0%(前回+2.9%)、2023年度+1.6%(前回+1.6%)、2024年度+1.8%(前回+1.6%)
(消費者物価指数=除く生鮮食品、エネルギー)
2022年度+2.1%(前回+1.8%)、2023年度+1.8%(前回+1.6%)、2024年度+1.6%(前回+1.6%)
若干ですが、経済成長率は下方に、物価上昇率は上方に修正されました。ただし、修正後も2023年度以降は物価安定目標である2%にとどきません。
少し長いですが、日銀の文章を引用すると、「消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、目先、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から高めの伸びとなったあと、そうした影響の減衰に加え、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果もあって、来年度半ばにかけて、プラス幅を縮小していくと予想される。その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果の反動もあって、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる」とされます。ただし「物価の見通しについては、上振れリスクの方が大きい」ともします。
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政策変更無し
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金融政策決定会合前は、全国紙やテレビのニュースが日銀のことを盛んに取り上げ、長期金利が0.5%を超えたことも大きく報道されました。まさに大山鳴動状態です。しかし政策は変更されず「鼠一匹」となりました。具体的には、昨年12月に「ゼロ%±0.5%程度」に拡大された10年物長期金利の変動幅は維持されました。
黒田総裁の下での金融政策決定会合は残すところあと1回(3月9日、10日)。世間の関心の目は新総裁人事に向いています。
今回変更が無かったことで、逆に「なぜ12月に変更したのか」不思議になります。12月の変更後、このコーナーでは「0.25%防衛に疲れた」「政策委員会メンバーの交代」「総裁人事の先取り」の3つの仮説を説明しました。また、The Gucci Post世界情勢ブリーフィングのオンラインサロン(メンバー限り。ぜひ入会ください!)では、政治の圧力説も紹介しました。この4つの説は、今でもそれぞれ部分的には正しいと思います。ただ、今回変更なしで頑張るなら、12月も変更せずに頑張れたはずと感じます。そう考えると、「12月の変更により、政治との関係で黒田総裁意中の後任候補が通りやすくなり、更なる変更は不要となった」と考えることが自然かもしれません。他方で、前々回「3人の副総裁経験者が候補」と書きましたが、直近では別候補の名前も耳にするようになりました。
2月10日に国会に人事案が出されると報道されます。そこまで目が離せませんね。今回はこの辺で。
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