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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/12/19 06:30  | by Konan |  コメント(3)

Vol.175: ふたつのCOP


休載が続き失礼しました。今回のタイトルは「ふたつのCOP」。COP27と15を簡単に取り上げます。

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COP27とCOP15
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COPはConference of the Partiesの略。日本語訳は締約国会議です。今回取り上げるCOP27は、11月6日から20日までの間エジプトで開催された「国連気候変動枠組条約第27回締約国会議」を、COP15は、12月7日から19日までの間カナダで開催中の「国連生物多様性条約第15回締約国会議」を指します。気候変動、生物多様性という地球規模の課題に関し、全世界レベルで対策を話し合う重要な会議と言えます。

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気候変動問題の方が有名?
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気候変動問題に関し引続き懐疑的な見方も多くありますが、そのコンセプト自体はかなり共有され、対策も進み始めています。

温室効果ガス排出により生じる気温上昇の度合いを、産業革命前との対比で少なくとも2度以内、出来れば1.5度以内に抑えたい、そうしないと異常気象に見舞われ、地球は大きな損失を被ってしまう、というのが基本的な考え方となります。

対策はmitigation(緩和)とadaptation(適応)に分かれます。緩和は、地球温暖化防止のため、温室効果ガス排出量を減らす(吸収も勘案すればネットでマイナスとする)ことを、適応は、緩和の効果が十分出るまでの間に生じてしまう問題への対策を講じる(例えば、洪水に備え堤防を強化)ことを指します。今回のCOP27では、緩和も適応も手遅れで生じてしまったloss and damage(損失と損害)の補償が最大の問題になりました。

気候変動問題に関しては、欧州の一部国や水没リスクに見舞われる島しょ国が極めて熱心な一方、その他の大多数の国々は、問題の重要性に理解を示しつつも、経済発展や経済安全保障など現実的な課題を軽視する訳にもいかないので、「どのようなスピード感でどの程度まで進めるか」悩んでいるのが正直なところと思います。また、対策には資金が必要です。財政資金だけでは限界があり、民間資金の活用が課題で、実際にも民間ESG投資が盛んに行われます。そうは言っても、リスク・リターンの関係、グリーンウォッシングの問題、米国の共和党主導州における反環境的な動きなど、課題山積です。

COP27は、損失と損害への対応が一歩前進したことが評価された一方で、1.5度目標に向けた具体的な成果が無かったことが失望されたというのが、大方の見方でしょうか。

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生物多様性は認知度が低い?
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これに対し、生物多様性の認知度は十分高いとは言えず、私も知識不足のまま書いているのが実情です。生態系が壊れ様々な種が絶滅している(その危機に瀕している)こと自体は広く認識されていると思います。倫理的・道義的に見て「これは良くない」とも思います。しかし、気候変動問題と比べ「生物多様性が損なわれたら何が問題になるのか」ピンとこない点も否めません。

今回のCOP15に先立ち、国連のグテレス事務総長は「生態系の劣化で2030年までに世界で年間3兆ドルの損失が生じる」と指摘しました。日本のGDPの8割規模の損失なので、無視し得ない大きさです。生物多様性が損なわれることに伴う影響の例としてよく挙げられるのは、以下の3つです。

まず、世界的なミツバチの減少。受粉の困難化から果物を始めとする農業分野に大きな打撃を与えています。次に、森林やマングローブ等の自然が洪水や地震等の被害を緩和する緩衝体の役割を果たすこと。逆に言えば、生態系が壊れると災害時の被害が大きくなるという訳です。もうひとつは感染症との関係。生態系の破壊とコロナを始めとするウィルスの生成との間の因果関係が指摘されます。いずれも「そうかな」と思いつつも、「温室効果ガス排出量と気温上昇の相関関係を示すグラフ」のような直観性に欠ける点は否めません。

また、対策面にも気候変動と別の意味での難しさを感じます。気候変動は生物多様性にもネガティブな影響を与えており、気候変動対策が生物多様性保全にも効果を持つ面があります。ただ、例えば「再生可能エネルギー」「EV」など、気候変動問題に関しては科学技術の粋を結集する感があるのに対し、生物多様性は「森林や海洋、湖沼地帯を保全する」「農薬や化学肥料を使わない」など、昔の生き方に回帰する面が多いように思えます。この点が私の誤解であれば是非指摘して頂きたいのですが、例えばこの方向を推し進めようとすると、日本の農業が立ちいかなくなる恐れもあります。

こうした中、本日19日終了予定のCOP15でどのような結論が導かれるか。事前報道では、”30by30″(2030年までに陸域と海域のそれぞれ30%以上を健全な生態系として保全)を新たな目標として設定すること、各国の取組みの報告や評価の仕組みを確立することなどが目指されているようです。

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通算400号になりました
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新ひとり言175号の今回、旧ひとり言225号と合わせ丁度400号となります。旧の初号が2009年9月14日。2013年末に一旦断筆し、2018年8月に再開するまで4年7か月間のブランクがありましたが、13年3か月での到達です。最近は気力・体力とも落ち(とくに視力の低下がひどいです)、500号までたどり着く気は余りしませんが、当面はマイペースで続けようと思います。引続きよろしくお願いします。

今回はこの辺で。次週は年内最後ですね。日銀金融政策決定会合を取り上げます。

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3 comments on “Vol.175: ふたつのCOP
  1. 楽譜 より
    400号

    おめでとうございます。
    新たな視点を与えていただけるCRU様のメルマガをいつも楽しみにしております。

  2. Konan より
    お礼

    楽譜さん、ありがとうございます♪

  3. 三日月 より
    祝400号

    400号おめでとうございます。いつもポイントを抑えた冷静な意見を参考にさせて頂いております。ペースゆっくりで良いので、引き続き宜しくお願い致します。

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