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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/09/12 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.164: 金融行政方針


エリザベス女王が逝去されました。2年間英国に住んだだけでも、女王が国民から敬愛されていることを実感しました。不謹慎な言い方かもしれませんが、とてもお茶目な印象を受けました。哀悼の意を表します。なお、天皇が女王の国葬に参列されると報道されています。これは当然のことですが、安倍元総理の国葬はどうされるのでしょうか。参列されてもされなくても批判が起きかねない状況で、天皇の役割の難しさを改めて感じます。

さて、最近休載が多く申し訳ありません。今回は1週間遅れで、金融庁が8月31日に公表した金融行政方針を簡単に紹介します。「2022事務年度金融行政方針~直面する課題を克服し、持続的な成長を支える金融システムの構築へ~」と題されています。3代前の森長官の頃からこうした方針が公表されるようになり、最近は8月末公表が定着しました。中島現長官にとり2度目の方針となります。

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3部構成は不変
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昨年度に続き、以下の3部構成となっています。

・経済や国民生活の安定を支え、その後の成長へと繋ぐ
・社会課題解決による新たな成長が国民に還元される金融システムを構築する
・金融行政をさらに進化させる

因みに、昨年度(中島長官)、一昨年度(氷見野長官)は以下でした。

(昨年度)
・コロナを乗り越え、力強い経済回復を後押しする
・活力ある経済社会を実現する金融システムを構築する
・金融行政をさらに進化させる

(一昨年度)
・コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く
・高い機能を有し魅力のある金融資本市場を築く
・金融庁の改革を進める

第1部は、新型コロナウイルス感染症がわが国経済に与える影響の変化に合わせ、政策を進めています。第3部は、表現は異なりますが、金融庁自らの課題を示します。因みに、方針の概要を示すパワポ1枚紙上で、第3部から「金融育成庁」の言葉が消えました。みずほやSMBC日興証券の問題が相次ぎ、「育成」とばかり言っていられないということでしょうか。

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第2部に長官の思い
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第2部は、毎年重点や表現振りが変わります。時々の長官の思いがここに表れるということでしょうか。

一昨年度は、国際派の氷見野前長官の考えが前面に出る形で、日本の金融資本市場の機能強化、そのための海外金融機関・人材受入れ促進が謳われました。

昨年度は、やや総花的に、デジタル・イノベーション、国際金融センター、サステナブルファイナンスなどの言葉が並びました。

今年度は、岸田政権の政策支援が特徴です。まず、資産所得倍増プラン策定を踏まえ、NISAの抜本的拡充や国民の金融リテラシー向上への取組みが優先課題とされます。また、スタートアップなど成長企業に対する円滑な資金供給策として、上場プロセス見直しや非上場株式の流通円滑化等の施策が掲げられます。さらに、人的資本を含む非財務情報の充実や四半期開示の見直しにも取り組みます。この他、サステナブルファイナンス、デジタル社会、国際金融センターと続きます。

資産所得倍増プランについては、その唐突感や格差拡大を助長しかねない点が、多くの識者から非難されます。他方で、「ぐっちーさんの金持ちまっしぐら」との副題も付くThe Gucci Postの読者の方から見れば、遅きに失した政策かもしれません。日本の資産がたとえ一部でもリスクマネーに向かうことは、成長実現に不可欠な要素です。

2期目に入った中島長官の手腕に注目します。今回はこの辺で。

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