プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2022/01/17 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.139: 今年のこと(その2)


先週に続き今年のことを書きます。前回は経済に焦点を当てましたが、今回は政治や社会面を取り上げます。JDさんや永田町さんのメルマガで国内外の詳細が掴めますので、ここでは大雑把なことを書こうと思います。

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分断の深まり
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Brexit国民投票やトランプ対ヒラリーの選挙があった2016年頃から、分断という言葉を聞く機会が増えたように思います。無論、分断はその前にもあり、第2次世界大戦や米ソ冷戦はその典型例です。ただ、米国や英国のように民主主義の最先端に位置する先進国において、親・反トランプやleave・remainのような形で分断が広がったことが最近の特徴かもしれません。さらに、一国のリーダーや各種媒体が分断を煽っている点も見逃せません。

一国内の分断に目を向けると、その背景には人種・民族・宗教などの違いもありますが、経済面での不平等さが拡大していることも指摘されます。そして、米国がそうであるように、人種と経済が色濃く結び付き相乗作用を起こします。また、白人の中でも経済格差が広がり、問題を複雑化させています。日本は分断が目立たない国かもしれませんが、コロナ禍で浮き彫りになったように、正規雇用者と非正規雇用者の収入格差は大きく、それを煽るポピュリスト政治家が生まれないことが却って不思議に思えます。

昨年は親ガチャという言葉が流行りました。金持ちの子は裕福になり、そうでない親の子は恵まれない傾向は(統計で確認した訳ではありませんが)恐らく強まっています。人への投資の重要性が叫ばれますが、国の政策においてもなかなか進展を見ません。

米国での反中感情の高まりの直接の契機も経済面です。中国製品に職を奪われた人たちが中国を恨む構図です。ただ、経済学者の冷静な分析によれば、安価な中国製品の流入は米国全体では物価安定化を通じメリットを齎しています。そして、米国で決定的に欠けていたのは、職を失った人の再教育だったと指摘されます。再教育されないまま地域にとどまり、その地域は「錆びて」いきます。2016年の選挙ではトランプ大統領誕生の大きな原動力になりました。

今年のひとつのキーワードは「教育」「人への投資」かもしれません。

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「2034年」が描く世界
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正月休みに話題の2034年(翻訳版)を読みました。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、米中それぞれの計算違いが惨劇を生む展開に背筋が凍る思いをしました。そして米国も中国も勝者ではなく、意外な国が勝者として浮上します。ひとつだけネタばらしをすると、プーチン大統領は引続きロシアで君臨し、いたずらを仕掛けます。

現実世界でも、中国が台湾を狙い、ロシアがウクライナを狙う中で2022年に突入しました。米国は日印豪や欧州と組み対抗色を強めます。是非はさて置き、中国は台湾を自国の一部と考えているので、台湾を奪い取ろうとすること自体は理解できないではありません。ただ、それを超えた南シナ海等での行為、あるいはロシアの行為は決して是認すべきではありません。

不思議に思うのは、「中国やロシアはなぜそこまでするか」という点です。勿論、スターウォーズではないですが、どのような国も帝国主義的野心を抱くのかもしれません。リーダーの個性として、習近平国家主席やプーチン大統領はその傾向が強いのかもしれません。ただ、プーチン大統領のNATOに関する発言をみると、恐怖の裏返しかもしれないとも思えます。ロシアは歴史的に何度か侵略を受けました。中国も非漢民族の侵略、アヘン戦争の敗戦、日本の侵攻などの歴史を持ちます。自国の周りに緩衝地帯を持っておきたいとの発想が、自国の領土を超えた軍事的行動、あるいは軍備の増強や最新化を突き動かしているのでしょうか。

仮にそうだとすれば、「対抗」にとどまらず「安心・信頼」の醸成が大事になると思えるのですが、甘い考えでしょうか。

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今年の日本は?
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無難なスタートを切り、相変わらず不冴えな立憲民主党にも助けられている岸田総理ですが、オミクロン株への対応が最初の試練となりました。ただ、治療薬の進展を除き菅内閣時代と対応体制は左程変わっておらず、弱毒化にどこまで救われるか、それとも人気急落のきっかけになってしまうか、ということでしょうか。

日本の政治に関してはこのコーナーで昨年末に書いたので、付け加えることは殆どありません。参院選も大きく言えば与党勝利で間違いないと思います。そのうえで、少しずつ自民党内の各派閥の合従連衡の動きが始まりつつある予感がします。菅さんは「反派閥」主義なのでどこまで表に出るか分かりませんが、菅・河野・小泉・石破・二階の動きに注目します。コロナ対応のほか、10増10減への対応、憲法改正、次期日銀総裁選び、そして皇室問題が今年の主な争点となるのでしょうか。

考えてみると、近年は小泉内閣と先の安倍内閣を除き、概ね1年程度での総理交代が常でした。私は一応年末も岸田総理のままと読んでいますが、当たるでしょか?

次回から通常モードに戻ります。次週は今年最初の日銀金融政策決定を取り上げる予定です。

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