2021/12/13 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.135: 今更ながらCOP26のこと
大分時間が経ってしまいましたが、今回はCOP26を取り上げます。10月31日から11月13日にわたりグラスゴーで開催されました。英国の議長が涙を浮かべながら議事をまとめ、会場が拍手で包まれたシーンは何度も報道されました。オミクロン株登場前に会議を開催できたことは幸運だったと言えるでしょう。
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成功?失敗?
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立場により今回のCOP26を成功とみるか失敗とみるか大きな違いがあります。失敗派の急先鋒はグレタさんでしょうか。日本の報道もどちらかと言えば「日本は石炭火力の維持に拘り化石賞を受賞した」など日本政府を揶揄するものが多かったように思います。
ただ、今回は「成功」との見方が多いように思います。グラスに半分液体が入っている状態を「half fullとみるかhalf emptyとみるか」との問いかけがありますが、half fullとの受け止めが多いということでしょうか。
理由はいろいろありますが、兎にも角にも合意文書がまとまったことに加え、合意の中に今までにない要素が盛り込まれたこと、インドやロシアですら温暖化対策を出してきたこと、結果として2度目標(場合により1.5度目標)の達成の夢が消えなかったことなどが主なものと思います。
自画自賛的な環境省の文書によると、以下が主な合意事項です。
・最新の科学的知見に依拠しつつ、パリ協定の1.5度努力目標達成に向け、今世紀半ばのカーボンニュートラル及びその経過点である2030年に向けて野心的な気候変動対策を締約国に求める…ついに1.5度目標が前面に出ました。
・排出削減対策が講じられていない石炭火力発電の逓減及び非効率な化石燃料補助金からのフェーズアウトを含む努力を加速すること…石炭への言及は初めてです。
・パリ協定6条に基づく市場メカニズム実施指針合意…二重計上防止措置が取られたうえで、A国における温室効果ガス削減をB国で計上するメカニズムが整いました。
・各国の温室効果ガス排出量の報告およびNDC(国が決定する貢献:Nationally Determined Contribution)達成に向けた取組みの報告様式を共通の表形式に統一…透明性が高まります。
・温室効果ガス削減目標について、2025年に2035年目標、2030年に2040年目標を通報(以降、5年毎に同様)することを奨励…これは結構大きな話ですね。
・2025年以降の新たな途上国支援の数値目標の議論を開始…途上国への資金支援が今後の重要課題になります。中国が支援する側に回れるかどうかもポイントです。
こうした全体の合意のほか、各国首脳が自らのコミットメントを語り、またメタンガス削減に向けた米中合意など予期せぬ展開もありました。
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どうする?
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このコーナーでも気候変動問題を何度か取り上げましたが、賛同者は余り多くない印象を受けます。批判派の理由は概ね以下の4つと思います。
(1) そもそも科学的根拠が正しいのか?長い地球の歴史を振り返ると、氷河期のように地球が冷却する時期もあった。また冷却期が訪れるのではないか?最近異常気象が多いが、地球温暖化のせいと言えるのか?例えば江戸時代の方が異常気象が多かったのではないか?
(2) どうせ中国、ロシア、インドなどは真面目に取り組まない。日本だけ真面目になっても損するだけ。
(3) 気候変動問題は自国経済に有利に運ぼうとする欧州(EU)の陰謀。対抗すべきだ。
(4) 日本の国土(平地の少なさなど)を考えると、再生可能エネルギーの拡大には限度がある。理想論として気候変動問題に真剣に取り組むべきだとしても、現実にはアンモニアを活用し二酸化炭素の排出を抑えた石炭火力発電や原子力発電を温存・強化するしかない。
このうち(1)については、それこそ千万年単位ではその通りと思います。また最近の異常気象を全て温暖化のせいとすることには無理があると思います。ただ、現時点で人間の活動が地球の温度を高める方向に作用していること、温度の上昇が全ての原因では無いとしても異常気象の確率を上げていること、2050年くらいまでの数十年単位で氷河期が来るとは思えないことは確かと思います。
(4)についてはまさにその通りで、乱開発を招かずソーラーパネルを計画的に秩序立って設置する枠組みを整備すること、風力発電等他の再生可能エネルギーの可能性を模索することに加え、日本の技術を総動員して炭素吸収やアンモニア・水素の活用を図ること、確りとした原子力政策を確立することが不可欠です。かんべえさんが最新の溜池通信で指摘されているように、ずる賢さ、粘り強さが必要で、また欧州ですら指摘されるように移行(transition)を上手く進めることが重要と思います。
(2)(3)については、日本にはそうした国際的な政治力は無いと思っています。中国等に倣う胆力と欧州に対抗する交渉力を持たない限り、(2)(3)の道は取り得ません。しかし、(2)(3)を言う人は大体日本政府に対しても批判的です。また、企業のことも理解していません。日本企業は真面目です。技術力も持ち合わせています。気候変動問題をビジネスチャンスに変えることが出来ないかと真剣に模索しています。
勿論上手くいく保証はありません。しかし、COP26を無視する道を必死に探るより、COP26を生かす道を探る方が建設的であり成算が高いと思っています。
今回はこの辺で。
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