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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/11/22 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.132: GDPと経済対策


今回は、先週公表された2021年7~9月期GDPと経済対策を簡単に紹介します。

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再びマイナス成長に
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15日に公表された7~9月期のGDPは、前期比マイナス0/8%、年率換算でマイナス3.0%と1~3月期以来のマイナス成長となりました。内需の寄与度がマイナス0.9%、外需の寄与度がプラス0/1%なので、内需が足を引っ張った格好です。

需要項目別では、民間最終消費支出が前期比マイナス1.1%(寄与度マイナス0.6%)と今回の減少の主因です。また民間企業設備もマイナス3.8%(寄与度マイナス0.6%)と落ち込みました。民間在庫変動の寄与度がプラス0.3%となりましたが、これは在庫が積み上がったことを意味するので、良い話ではありません。輸出はマイナス2.1%(寄与度マイナス0.4%)、輸入はマイナス2.7%(寄与度プラス0.5%)です。

個人消費、輸出とも、半導体不足で自動車が作れない=国内でも売れないし輸出も出来ない=ことが響いています。また、とくに7月、8月はコロナの感染状況が酷かったので、サービス消費の足が引っ張られました。設備投資は、企業の2021年度計画は悪くないので、4~6月期回復の裏が出た感じでしょうか。

水準的には、コロナ前ピークだった2019年7~9月期を未だに4.1%下回っています(2019年暦年も3.5%下回っています)。欧米がコロナ前の水準を回復する中で、何とも弱い展開と言うしかありません。

10~12月期はコロナの感染状況が改善しサービス消費が回復は十分見込めます。設備投資もプラスに転じるでしょう。ただ、自動車を巡る環境の回復に時間がかかっており、自動車を売り輸出することがどの程度できるかという点に、仕上がりの数字が左右されてくると思います。

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最大の経済対策
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そうした中、19日に「コロナ克服・新時代開拓のための」と銘打った経済対策が閣議決定されました。財政規模55.7兆円は過去最大、事業規模は78.9兆円、GDPの直接的な下支え・押し上げ効果はプラス5.6%程度とされます。この対策だけでGDPがコロナ前の水準に戻る格好です。「過去最大」と言うと、矢野財務次官のバラマキ批判は何だったのかと思いたくなりますが、菅内閣時代に打ち出された10兆円の大学ファンド設置なども含まれており、数字が嵩上げされている面もあります。

対策は大きく4つにわかれます。

1.新型コロナウイルス感染症の拡大防止:財政支出22.1兆円、事業規模35.1兆円
この中には、医療提供体制の確保のほか、今回話題になった高校3年生までの子供への1人10万円給付(養育者の年収960万円未満に限定)、住民税非課税世帯への10万円給付、マイナポイント付与(最大2万円分)、事業復活支援金(上限250万円)、原油価格高騰対策・燃料油価格激変緩和基金設置などが含まれます。

2.「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え:財政支出9.2兆円、事業規模10.7兆円
この中には、「目玉」であるGoToキャンペーン事業が含まれます。ワクチン・治療薬等の国内開発もうたわれます。

3.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動」:財税規模19.8兆円、事業規模28.2兆円
この中には、「成長戦略」として10兆円規模の大学ファンド、2050年カーボンニュートラル実現に向けたクリーンエネルギー戦略、SPAC(特別買収目的会社)制度の検討、デジタル田園都市構想、先端半導体の国内生産拠点の確保などが盛り込まれています。また「分配戦略」として、賃上げを行う企業への支援強化、看護・介護・保育・幼児教育など現場で働く人々の収入3%引上げなどが含まれています。

4.防災・減災、国土強靭化の推進など安全・安心の確保:財政規模4.6兆円、事業規模5.0兆円
二階さんの影響力は低下しましたが、国土強靭化は残りました。内容は従来同様です。

コロナ危機から脱するための体制を築く、成長と分配の好循環を実現するという発想自体は間違っていないと思います。ただ、10万円給付、GoToキャンペーンなど、手あかのついた政策が目立つことも事実です。そして、本当に成長と分配の好循環が実現できるのか、政策の妥当性が今後問われていくことになると思います。

中途半端な終わり方ですが、今回はこの辺で。

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