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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/06/28 06:30  | by Konan |  コメント(1)

Vol.111: 月例経済報告と第5波?


今回は24日に公表された内閣府月例経済報告を紹介し、その後でコロナについて少し触れます。

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景気現状判断不変
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先月下方修正された景気の基調判断は、今月は不変(一文字の修正も無し)でした。需要項目では、住宅建設が「おおむね横ばい」から「底堅い動き」に若干上方修正されました。

・基調:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部で弱さが増している
・個人消費:このところサービス支出を中心に弱い動きとなっている
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:底堅い動きとなっている
・公共投資:高水準で底堅く推移している
・輸出:緩やかな増加が続いている
・輸入:持ち直しの動きがみられる

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先行き見通しは上方修正
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先行きについては、先月まで無かった「ワクチン接種を促進」との文言が挿入されました。また、「内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意」との文言が消え、少しマイルドな「感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意」との表現に修正されました。個人消費や輸入でも「下振れリスク」の表現が消えました。

・基調:感染拡大の防止策を講じ、ワクチン接種を促進するなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待される。ただし、感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:感染拡大の防止策を講じるなかで、持ち直しに向かうことが期待されるが、感染の動向による影響に十分注意する必要がある
・設備投資:不透明感が残るものの、成長分野への対応等を背景に、機械投資を中心に持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:底堅く推移していくと見込まれる
・公共投資:底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:海外経済が改善するなかで、増加傾向が続くことが期待される。ただし、感染の再拡大による海外経済のリスクに十分注意する必要がある
・輸入:持ち直しに向かうことが期待されるが、感染の動向による影響に十分注意する必要がある

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ワクチンvs.変異株
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このように政府の景気先行き見通しは、僅かですが上方修正されました。「ワクチン接種を促進」との文言挿入にみられるように、また菅総理が強調する通り、ワクチンがゲームチェンジャーになるとの期待がこめられています。実際に米国や欧州では、ワクチン接種率上昇に伴い景気が回復してきています。

他方で、米国で顕著なようにワクチン接種率は一定水準で頭打ちとなっています。また、英国で問題のように、1回のみのワクチン接種で新たな変異株の感染を防ぐことは難しいことが分かってきました。さらに、ウガンダのオリンピック選手がアストラゼネカ社のワクチンを2回接種したにもかかわらず感染したことも話題です。要は、デルタ株に対しては、mRNAの技術を用いて作られたファイザー社やモデルナ社のワクチンを2回接種しない限り、少なくとも感染を防ぐことは難しい訳です(重症化回避の効果はあるかもしれません)。

日本では、当初菅総理の発言を信じる人は僅かでしたが、現にワクチン接種が進み始め、高齢者の中には2回の接種を終えた人も出ています。しかし、職域接種の新規申請休止など新たな問題も出始めています。そうした中で、とくに東京では新規感染者が増え始め、観客の扱いの変更はあり得ますが、オリンピック開会は間違いない状況です。よく言われるように「ワクチンと変異株を伴う感染拡大のいずれが勝るか」ギリギリの勝負が続いています。

私にこの勝負の結末を当てる能力はありません。ただ、やはり第5波は起き、オリンピックも途中で無観客に変更される気がしてなりません。他方で、第6波は無いだろうとも思っています。デルタ株を超える新たな変異株登場リスクはありますし、mRNAワクチン供給量の不安はありますが、同調圧力と現場の実装能力が高い日本では、2回の接種を完了する比率がかなり高まると予想するからです。

今「2人、90分、7時LO、8時終了」ルールの下で飲み会を再開しています。5時半開始パターン(90分後の7時直前までお酒を注文)と6時半開始パターン(7時にボトルを頼み8時まで粘る)に二分化されてきました。知恵ですね(笑)。こうした制約は第5波を超え、ワクチン接種率がかなり高まる10月頃には解消されると信じています。

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One comment on “Vol.111: 月例経済報告と第5波?
  1. 健太 より
    日銀

     ずいぶん前に、父親がテレビを見ていて、<おい佐々木日銀総裁が変動相場制がわからなかった>と言っていたぞ、というので、驚いたことがあった。経済学はしらない。戦後の日銀の総裁のしたことと見方が正しかったかの検討集はあるだろうか?
     普通に考えれば2パーセントのinflationと言って、もう8年もしているが一向にそれが起きないということは日銀の認識が間違っていることになる。そもそも2パーセントのinflationは可能か?

     その昔、設備を納める寸前で中止になったことがあり、そこの社長に,また占いですかと聞くといや違う、土地を担保にお金を貸してはいけないという政府のお達しが出たので、お金が借りられなくなったからとの返事。確か1992年ごろだった。当時は経済や日銀については何も知らず、其の後勉強(?)をした。 
     その結論は経済とはわからないものだ。また経済を悪くする方法はいくらでもあるが、よくする方法はない。経済をよくする十分条件はないが悪くする十分条件(?)はあると思う。
     この二つは確かと思っている。もうひとつわからないものに為替がある。
    G7はグッチーさんが言われたように中央銀行の協定で、それから見ると為替はG7の合意で決まる。
     今は1ドル105円から115円の間だろうと推定する。

    国債は返済を前提にしていないことなども分かった。
     思うに日銀がしていることは国内だけなら多分うまくいくが、そこに貿易があるために、目論見通りにいかず、金だけが海外へと流れていると思う。資本金融市場が自由化されているからでしょう。

     そこで質問だが円資金が海外へ流れるということはどのような仕組みで流れるかがどのように考えても分からない。 
     仮に銀行が円資金を貸してくれて、それでドル投資をするとしたら,その円をドルに換える必要がある。これは逆にドルを円に換える必要がある。為替なら相場で動くが貸し出しはそのようにはいかないのではと思う。すると円担保でドルを貸すことになり、いくら日銀が金融緩和をしても、それは海外へ流れるだけで、海外はその恩恵を受けていることになる。
     つまり逆に言うと日銀が金融緩和をやめれば、海外が金不足になり、経済が悪くなるのでは。我が国から見れば海外で利益を上げる企業はそれでいいが、国内だけの企業は利益を上げることはできない。

     一度日銀は金融緩和をやめてそれによって何が起きるか見てはいかがだろうか。もしそれができないならば政府は国債を発行して、10万円を配ったように、それを何度もすれば2パーセントのinflationは起きるのではと思う。これが正しいならば金融政策に政府の財政政策がセットでないとうまくいかないのではと思う。
     日銀の認識構造はどのようになっているか?
    以上素人考えです。

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