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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/06/21 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.110: 日銀決定会合と気候変動


今回は17日・18日に実施された日銀金融政策決定会合を紹介します。新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムが予想通り延長されるなど、政策変更や景気の見方の大きな修正はありませんが、気候変動問題に言及された点が新味でした。

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景気の基調判断は不変
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まず景気の現状です。

・基調:内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している
・個人消費:飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力が強く、足踏み状態となっている
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:下げ止まっている
・公共投資:緩やかな増加を続けている
・輸出:着実な増加を続けている

基調判断は前回(4月)と不変です。細かく見ると、個人消費は「足踏み」との表現が用いられ前回対比やや下方修正されました。他方で住宅投資は「下げ止まっている」と若干上方修正です。個人消費の下方修正は実感に合うと思います。

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先行きは心持ち強気に?
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先行きについては以下の見通しが述べられています。

・当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続けると予想される

上記の表現は前回と不変です。ただ、前回はこの文中に「もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる」との一文が入っていました。この一文が消えた背景を推測すると、海外はもとより日本でもワクチン接種率が上昇しており、菅総理の思惑通りとなるか否かさて置き、秋頃(=オリンピック・パラリンピック後)には今とかなり様相が変化している可能性が意識されてきたのではないかと思います。

なお、リスク要因としては以下の点が指摘されます。

・新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響といった点について、不確実性が大きい
・感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないか
・金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるか

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日銀もついに気候変動!
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今回の驚きは、金融政策決定会合において恐らく初めて気候変動問題に言及されたことです。そのポイントは以下の通りです。

・気候変動問題は、中長期的に、経済・物価・金融情勢にきわめて大きな影響を及ぼしうる
・中央銀行の立場から民間における気候変動への対応を支援していくことは、長い目でみたマクロ経済の安定に資するものと考えている
・その際、金融政策面での対応に当たっては、市場中立性に配慮しながら行うことが重要である
・こうした観点から、気候変動関連分野での民間金融機関の多様な取り組みを支援するため、金融機関が自らの判断に基づき取り組む気候変動対応投融資をバックファイナンスする新たな資金供給の仕組みを導入することが適当と判断した

この新たな仕組みは、現在実施中の成長基盤強化支援資金供給制度の後継と位置付けられます。現行制度は2022年6月に終了予定でしたが、その終了を待たずに年内を目途に新たな仕組みが実施されます。その骨子素案が来月の金融政策決定会合後に公表されます。

読者の中には気候変動問題を眉唾物と捉える方が少なくないと認識しています。そうした方にとっては「日銀、お前もか?!」の感覚と思います。COP26 開催が近付いてくる頃、気候変動問題について触れてみたいと思いますが、今回は中央銀行と気候変動問題の関係を簡単に解説します。

・世界を見渡すと、中央銀行が金融監督当局でもある国がみられます。また、日本のように監督当局ではないが金融システムの安定維持に責任を持つ中央銀行もあります。そうした中央銀行から見て、気候変動問題が中長期的に金融機関の資産の健全性を損なうリスクが気になります。投融資先が水没したり、EV車開発に遅れ業績が悪化するなどのリスクです(前者を物理リスク、後者を移行リスクと呼びます)。欧州の中央銀行中心にNGFS(Network for Greening the Financial System)が設置され(日本から金融庁、遅れて日銀も参加)こうした点の検討を行っています。

・他方、金融政策面で何をすべきか対応は分かれます。気候変動問題で先行する欧州の中央銀行であるECBラガルド総裁は、中央銀行がグリーン資産買入れなどを通じ積極的に関与すべきとの立場を鮮明にします。他方、バイデン政権下でもFEDは消極的な姿勢を維持しています。米国では民間で出来ることに公的当局が首を突っ込むことをしないのが普通だからです。日銀の場合、偶々成長基盤強化支援資金供給制度を持っていました。金融機関が日本の成長力向上に資する融資を行う場合、それを低利のバックファイナンスで支える仕組みです。欧州のように気張らず、米国のように引っ込まず、「今の仕組みを転用すれば良い」と気楽に考えることが出来たと推測します。人気が落ちたとは言え政権の主である菅総理も喜ぶので、一石二鳥です。

今回はこの辺で。今日ワクチン接種(1回目)です!

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