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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/05/03 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.103: 月例経済報告と金融政策決定会合


今回は恒例で内閣府月例経済報告(22日)と日銀金融政策決定会合(27日)を解説します。今回は黒田総裁の任期中には2%の物価上昇目標が達成できないことが明らかになったことに注目が集まりました。

日程順にまずは月例経済報告から。

【現状】
・基調:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる
・個人消費:このところ弱含んでいる
・設備投資:持ち直している
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:高水準で底堅く推移している
・輸出:増加テンポが緩やかになっている
・輸入:持ち直しの動きがみられる

【見通し】
・基調:感染拡大の防止策を講じるなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:持ち直しに向かうことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクに十分注意する必要がある
・設備投資:持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:底堅く推移していくことが見込まれる
・輸出:増加傾向が続くことが期待される。ただし、感染の再拡大による海外経済のリスクに十分注意する必要がある
・輸入:持ち直しに向かうことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある

現状については、設備投資、公共投資、輸出で微妙な文言の変更があります(元役人の私にも上下どちらか分からないような微妙な言い回しの変更です)が、基調判断は前回3月と不変です。

他方、先行きに関しては、基調判断や個人消費に関し「感染拡大による下振れリスク」との表現が加わり、前回対比警戒感を強めました。米国経済はワクチン普及に伴い勢いを強めていますが、日本で再び緊急事態宣言に突入し、インドのように感染が爆発している国もあることを踏まえたものと思います。

次に日銀です。

【現状】
・全体:内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している
・個人消費:飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服している
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:緩やかに減少している
・公共投資:緩やかな増加を続けている
・輸出:増加を続けている

【見通し】
・当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済はさらに成長を続けると予想される

現状判断は前回対比維持されましたが、先行きについては(文章のスタイルが変わり比較しにくい面もありますが)、「改善基調」が「回復」に、「改善」が「成長」に言い換えられるなど、上方修正された印象です。

今回の見通しは以下の点を前提にしています。
・感染症の影響が先行き徐々に和らぎ、見通し期間(2023年度までです)の中盤に概ね収束していくこと
・感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下しないこと
・金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されること

こうした前提には大きな不確実性があると認めています。また、リスクバランスは当面は下振れリスクの方が大きいとしています。ただ、見通し期間の中盤以降は概ね上下にバランスしているともしています。

分かりにくいですね。

今回は日銀の政策変更はありませんでしたが、恒例の展望レポートが公表されました。その中では、金融政策を決定する黒田総裁を含む9人の政策委員会メンバーの実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されています。中央値(9人のうち、上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。

(実質GDP)
2020年度-4.9%(前回ー5.6%)、2021年度+4.0%(前回+3.9%)、2022年度+2.4%(前回+1.8%)、2023年度+1.3%(今回初予想)

(消費者物価指数)
2020年度-0.4%(前回-0.5%)、2021年度+0.1%(前回+0.5%)、2022年度+0.8%(前回+0.7%)、2023年度+1.0%(今回初予想)

実質GDPについては、前回1月対比むしろ上方修正されましたが、物価はとくに2021年度かなり下方修正され(携帯電話料金値下げが主因)、さらに初出の2023年度が+1.0%とされました。

黒田総裁の任期はあと2年(2023年4月。ただし両副総裁の任期である3月に同時に退任すると見込まれます)なので、任期中に2%の物価上昇目標が実現しないことが明らかになった訳です。この点は報道でも話題になりましたし、総裁会見でも記者から繰り返し質問され、黒田総裁が「演説でなくてご質問だけをお受けしますが(中略)ご指摘のことは全く当たらないというように考えています」と切れる場面もありました。

なお、SaltさんのTwitterでは「物価目標2%の達成を見届けるためにも、もう一期続投する、こういうことは頭の片隅におありかどうか」との質問に総裁は大笑いしたと写真付きで紹介されていますが、回答は「総裁の任命は、ご案内の通り、国会の同意を得て内閣が任命するものですので、私の個人的な云々は全く関係ないと思います」とさめたものでした。

黒田総裁としては、8年も務めた今になって誤りを認めたくない心境と思います。また、他の8人の政策委員の中には黒田さん以上のリフレ派が何人か任命されており、この面でも方針転換は容易でありません。ただ、不毛な議論の領域に入ってきましたね。残念です。

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