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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2021/04/05 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.99: 日銀と内閣府の景気判断+短観


前回休載したので溜まったものを含め紹介します。公表順に日銀金融政策決定会合(3月19日)、内閣府月例経済報告(3月23日)、日銀短観(4月1日)です。

まず、日銀は例の「点検」を行った際、合わせて「経済・物価の現状と見通し」を公表しています。そのポイントは以下の通りです。

【現状】
・全体:内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している
・個人消費:飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力の強まりから、足もとでは、持ち直しが一服している
・設備投資:一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
・住宅投資:緩やかに減少している
・公共投資:緩やかな増加を続けている
・輸出:増加を続けている

【見通し】
・新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみられる。もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。特に、目先は、昨年秋以降の感染症再拡大の影響から、対面型サービス消費における下押し圧力は続くとみられる。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される

全体の現状判断は前回(1月)と不変です。細かく見ると個人消費がやや下方に、設備投資がやや上方に修正されています。先行きの見通しについても前回とほぼ不変です。ポイントは、対面型サービス消費は厳しい一方、世界的な感染症の収束が期待できるので、日本経済も何とか改善するという感じでしょうか。

日銀としては、「点検」において長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みを大枠で維持したので、景気判断を大きく変えることが出来ない事情もあると思います。

次は内閣府月例経済報告。

【現状】
・基調:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるなか、持ち直しの動きが続いているものの、一部に弱さがみられる
・個人消費:このところ弱含んでいる
・設備投資:このところ持ち直しの動きがみられる
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:このところ増勢が鈍化している
・輸入:持ち直しの動きがみられる

【見通し】
・基調:感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待される。ただし、感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:持ち直しに向かうことが期待されるが、感染の動向による影響に十分注意する必要がある
・設備投資:持ち直し傾向が続くことが期待される
・住宅建設:横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:増加傾向が続くことが期待される
・輸入:持ち直しに向かうことが期待される

全体の現状判断は前回(2月)と不変です。細かく見ると輸出がやや弱めに修正されています。先行きの見通しについては、前回は「内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意」とされていましたが、今回は「感染の動向が内外経済に与える影響に十分注意」とされ、感染が落ち着いていくことへの期待感が滲んでいます。世界的にも新規感染者数はリバウンド傾向ですし、ワクチン接種率の国ごとの格差も問題ですが、そうは言ってもワクチンへの期待が表れていると思います。

なお、最近日銀と内閣府の比較をしてきませんでしたが、官庁用語的には、

(現状)日銀は「持ち直している」で、内閣府は「一部に弱さがみられる」で結んでいるので、日銀の方がやや強気
(見通し)日銀は「改善」という言葉を、内閣府は「持ち直し」という言葉を用いていて、日銀の方がやや強気

と言えると思います。日銀は、最終的には「2%の物価上昇目標」を達成できるとの姿勢を崩していないので、そこにつながるシナリオを維持せざるを得ません。内閣府は、政府の景気対策との関係が重要で、景気対策が上手くいったと言いたければ強気に、景気対策が必要と言いたければ弱気に、表現を振る必要があります。ただ、言葉尻の話しに過ぎないと言えばそれまでです。

最後は短観。予想以上に改善しました。代表的な指標である業況判断(ゼロが中間、プラスが大きいほど良くマイナスが大きいほど悪い)は以下の通りです。

・最も注目される大企業製造業:-10(前回)+5(今回)+4(先行き見通し)
・全産業全規模合計:-15(前回)-8(今回)-10(先行き見通し)
・2回前まで製造業で最悪だった自動車(大企業):-61(前々回)-13(前回)+10(今回)+6(先行き見通し)
・前回非製造業で最悪だった宿泊・飲食サービス(大企業):-87(前々回)-66(前回)-81(今回)-58(先行き見通し)

大企業製造業はついにプラス圏内に浮上しました。Saltさんが米国経済について詳細に説明される通り、世界的にみてサービス需要は落ち込んだままであるのに対し、物への需要は盛り上がっています。要は製造業に光が当たる構図です。コロナ禍の影響を最も大きく受けている宿泊・飲食サービスは、前回-66と前々回対比改善後、感染再拡大を背景に再びマイナス80台に悪化しました。

他の指標は以下の通りです。全産業全規模合計の計数です。

・2020年度の売上高は前年比-8.2%とかなりの減少、前回調査対比では+0.4%の上方修正。2021年度は+2.4%の微増見通し。
・2020年度の経常利益は前年比-30.3%と大きな減少、前回調査対比では+7.6%の上方修正。2021年度は+8.6%の増益見通し。
・2020年度の設備投資は前年比-5.5%と減少、前回調査対比でも-1.6%の下方修正。2021年度は+0.5%とほぼ横ばい見通し。
・雇用人員判断(マイナスが大きいほど不足感が強い)は-10(前回)-12(今回)-16(先行き見通し)と不足感拡大。
・資金繰り判断(プラスが大きいほど「楽」)は+7(前回)+9(今回)と楽である超を維持。

売上高や経常利益の2021年度予想は力強いリバウンドとは言えず、企業の姿勢は引続き慎重に見えます。また宿泊・飲食サービスあるいは対個人サービス(業況判断-51)の酷さは深刻です。そうした中で何とか持ち堪えた感じでしょうか。

今回はこの辺で。

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