2021/02/15 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.93: 森騒動の中で…
今回の地震で被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。
今週こそグリーン成長戦略の続きと思っていました。そうした中、オリンピック・パラリンピック組織委員会森会長の女性蔑視発言、辞任、後任と思われた川淵氏の辞退など混迷が続きました。今回の騒動の中で、暫く前このコーナーで書こうと思ったある事を思い出しました。夫婦別姓を巡る昨年末の動きです。
本件について私の情報源は各種報道だけで、インサイダー的情報は持ち合わせません。きっと永田町さんが私の何倍もご存じと思います。ただ、反自民・親自民どちらの報道を見ても似たことが書かれているので、恐らく報道に大きな誤りは無いと思います。
簡単に言えば、昨年12月に政府の第5次男女共同参画基本計画がまとめられた際、選択的夫婦別姓(公式には別姓でなく別氏です)に関する表現が、自民党内の議論を受けて「対応を進める」から「更なる検討を進める」に変更された経緯です。また、第4次計画に入っていた「選択的夫婦別氏制度の導入」の文言が削られ、「夫婦の氏に関する具体的な制度のあり方」と曖昧な表現になったほか、「戸籍制度と一体となった夫婦同氏制度の歴史を踏まえ」との記述も加わりました。
無論、自民党内にも夫婦別姓賛成論者が存在し、「勇気を出して」意見を述べた議員もいたようです。安倍前総理・総裁の存在感が後退する中、こうした意見が言いやすくなったとの見方にも遭遇しました。ただ、党内多数の論理は、選択的夫婦別姓制度導入に従来より後ろ向きに舵を切った訳です。
夫婦別姓と次元は異なるが同根の問題に、皇位継承があります。悠仁様の誕生もあり、平均寿命的にみて数十年間問題が先送りされたこともあって、女系天皇はもとより女性天皇すら語られなくなりました。ただ、以前この問題を議論する機運があったことを考えると、後退した感もあります。
自民党の右傾化は以前から言われていました。いくつかの理由が考えられます。
・民主党に敗れ下野したこと。これを契機として、自らのアイデンティティを再確立し支持基盤を固めるため、右傾化色を鮮明にし保守層の取り込みを図った構図です。
・「一強」と言われた安倍前総理・総裁の個性が強く表れたこと。あの時点での対抗馬は石破さんで、仮に石破総裁が実現していた場合と対比してどうか難しい問題ですが、小選挙区制の下で「文句を言うと干される」こともあり、安倍さんに歯向かうことは難しかったと推察します。
・よりリベラルだった宏池会が凋落したこと。考えてみると、宏池会凋落のきっかけは、森首相への不信任案に賛成しようと試みた加藤の乱の失敗です。加藤さんは完全に力を失い、谷垣さんは総裁にはなったが総理になれず、岸田さんも力不足です。
・世論全体が右傾化している可能性があること。ぐっちーとともに通った母校は早くから制服も廃止され、少なくとも保守的な雰囲気を感じることはありませんでした。それが特殊だったと言えばそれまでですが、時代が変わったと感じることはよくあります。
今回、夫婦別姓や女性天皇を勧めるため本文を書いた訳ではありません。賛否は各自の自由な判断です。ただ、今回の森騒動と本当は同じ問題を扱っているように思えてなりません。言い方を変えると、森発言を女性蔑視と非難しダイバーシティを求める立場と、夫婦別姓や女性天皇に反対する立場が両立する気がしないということです。
オリンピック・パラリンピックは国際的な(外の)話し、氏姓や天皇は日本の歴史や文化に根差す話し、との二分法が全く成り立たないとは言いませんが、私には詭弁に感じます。森騒動が、単に「あの人は失言の歴史だから」で終わらず、あるいは新会長人事のゴシップ話しに終わらず、多様性のことを考える契機になれば良いなと感じています。
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