2021/01/25 06:30 | by Konan | コメント(0)
Vol.90: 金融政策決定会合と月例経済報告
今回は日銀金融政策決定会合(1月21日)と内閣府月例経済報告(22日)を紹介します。日銀は年に4回展望レポートが公表される月に当たりますが、まず、日銀と内閣府の景気判断は以下の通りです。
【現状】
(日銀)
・全体:内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している
・個人消費:基調としては徐々に持ち直しているが、足もとでは、飲食・宿泊等のサービス消費において下押し圧力が強まっている
・設備投資:全体としては下げ止まっている
・住宅投資:緩やかに減少している
・公共投資:緩やかな増加を続けている
・輸出:増加を続けている
(内閣府)
・全体:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるが、持ち直しの動きがみられる
・個人消費:持ち直しの動きに足踏みがみられる
・設備投資:下げ止まりつつある
・住宅建設:おおむね横ばいとなっている
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:増加している
・輸入:おおむね横ばいとなっている
【見通し】
(日銀)
・新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、改善基調を辿るとみられる。もっとも、感染症への警戒感が続くなかで、そのペースは緩やかなものにとどまると考えられる。特に、当面は、感染症の再拡大の影響から、対面型サービス消費を中心に下押し圧力の強い状態が続くとみられる。その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済はさらに改善を続けると予想される
(内閣府)
・全体:感染拡大の防止策を講じるなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、内外の感染拡大による下振れリスクの高まりに十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動等の影響を注視する必要がある
・個人消費:持ち直しが続くことが期待されるが、感染拡大による下振れリスクに十分注意する必要がある
・設備投資:持ち直しに向かうことが期待される
・住宅建設:横ばいで推移していくと見込まれる
・公共投資:堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:増加が続くことが期待される
・輸入:持ち直しに向かうことが期待される
需要項目で見ると、日銀も内閣府も、個人消費が下方に設備投資が上方に修正されています(内閣府は住宅建設も上方修正)。そして足もとでの国内外の感染拡大の影響を心配しています。日銀は、「リスクバランスは、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きい」と明記しています。
今回は日銀の政策変更はありませんでした(次回3月会合で「点検」の結果が公表されます)が、恒例の展望レポートが公表されました。その中では、金融政策を決定する黒田総裁を含む9人の政策委員会メンバーの実質GDP・消費者物価指数の見通しが示されています。中央値(9人のうち、上からみても下からみても5番目の数字)は以下の通りです。
(実質GDP)
2020年度-5.6%(前回ー5.5%)、2021年度+3.9%(前回+3.6%)、2022年度+1.8%(前回+1.6%)
(消費者物価指数)
2020年度-0.5%(前回-0.6%)、2021年度+0.5%(前回+0.4%)、2022年度+0.7%(前回+0.7%)
説明の必要も余りありませんが、あえて言えば以下の2点でしょうか。
・実質GDPについては来年度以降の回復を見込んでいます。しかし回復力が強いとは言えず、この見通し通りに推移したとしても、2022年度のGDP水準がようやく2019年度並みに戻る程度です。
・物価については、日銀が目標とする+2%に全く届きません。黒田総裁の任期は2023年春とあと2年少々になりましたが、在任期間中の達成は不可能な情勢です。
日銀に関しては、3月会合の後に詳しく書く予定です。Saltさんのメルマガでも紹介されると思いますが、合わせて読んで頂けるとうれしいです。
ツイートしたように、50歳代前半の知人がコロナで亡くなりました。ご冥福をお祈りします。知人のコロナ死は初めての体験で、やはり見方が変わります。私は緊急事態宣言前は4人前後の飲み会を平気で続けるタイプでした。お店選びには気を使いましたし、配席もかなり距離をとる例が殆どでしたが、宣言解除後どうするか悩むようになりました。
さて、このコーナーで何度も「欧米など他国に比べて感染者数が少ないのに医療が崩壊するのはおかしい」と書きました。私に理由は分かりませんでしたが、ここ2週間ほどの間にこの点がマスコミで取り上げられるようになり、ようやく真相が見えてきました。一言でいえば、総病床数は欧米に比べ十二分に大きいが、その8割を占める民間病院には小規模の先が多く、コロナ患者を受け入れるスキルや設備が不足し、仮に受け入れると他の(儲かる)患者が受けられなくなるため経営が逼迫してしまう、受け入れが風評被害をもたらすことも心配される、などが理由のようです。そして、現実的な解決策として、補助金の増額とともに、病状が収まった患者の転院先としてこうした民間病院を用いるネットワーク作りの必要性が指摘され始めています。
昨年の夏場や秋にかけなぜこうした取り組みがなされなかったのか?安倍政権末期と菅政権が真に国民のため機能していなかったこと、野党やマスコミも十分な警鐘を鳴らさなかったことなど、反省材料ばかりです。
今回はこの辺で。
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