2020/11/09 06:30 | by Konan | コメント(2)
Vol.79: 選挙のこと
今回は短く選挙について。内容面は全てJDさんにお任せですが、事前予想に比べ共和党が踏ん張った印象を受けます。結果はバイデン大統領、下院は素より上院も民主党多数かもしれませんが、そうだとしても民主党にとり「辛勝」と思います。
大統領選挙に限ると、事前の世論調査ではバイデンの支持率ががトランプを8%程度上回っていたと思います。実際の得票率の差は3%程度です。この違いはなぜ起きたか?私は選挙のプロでも米国政治のプロでもないので誤解も多々あると思いますが、考えてみました。
以下、計算し易くするため、議論を単純化します。
・トランプ+バイデン=100%と仮定します。
・世論調査の支持率と得票率が同じ概念であると仮定します(実際は差があるかもしれません)。
・世論調査の差は8%、すなわちトランプ46%、バイデン54%とします。
・得票率の差は3%、すなわちトランプ48.5%、バイデン51.5%とします。
仮に1万人に世論調査を行っていたとすると、トランプ支持4600人、バイデン支持5400人です。実際の得票は1万人当たりトランプ4850人、バイデン5150人でした。それぞれ250人の増減があります。
(仮説1)世論調査のサンプルの偏り
・世論調査のサンプルが民主党支持者に偏っていたとの仮説です。
・どのように工夫してサンプリングを行ったとしても、必ず偏りは生じます。従ってこの仮説を棄却することはできません。
・ただ、今回の場合、民主党の候補者がバイデンに一本化された後、多少の上下はあっても支持率の差は概ね不変でした。かなり長い間にわたる何度もの/何社もの世論調査で一定の数字が出ていたとすると、サンプルが偏り続けていたと考えるのはやや不自然な気もします。
・このため、この仮説は「主犯」でないように思います。
(仮説2)隠れトランプ説
・よく聞かれる説です。5400人のバイデン支持者(支持との回答者)の中に最大250人トランプ支持者が隠れていたとの説です。
・4.6%程度なのであながち無いとは言えず、この仮説も棄却できません。
・ただ、「隠れたい」動機がいまいち理解できない気もします。
(仮説3)気が変わった
・選挙の前日か当日に気が変わり、最大250人バイデンからトランプに乗り換えたとの仮説です。
・無論こうした人もいたかもしれません。また前回のヒラリー敗北については、この理由が大きかったのかもしれません(2016年は、トランプ/クリントンに決めかねていた人がトランプに流れたということかもしれません)。
・ただ、今回は少なくとも前回のようなサプライズは無く、主犯とは言えないように思います。
(仮説4)トランプ支持者の方が投票に熱心
・やや設定を動かしますが、トランプ支持と答えた人は全てその通り投票した一方、バイデン支持と答えた人の一部が投票しなかったと考えます。
・トランプへの投票者は変わらず4600人、バイデンへの投票者が4885人と考えると、得票率の差は3%になります。5400人のバイデン支持者のうち515人投票をしなかったことになります。9.5%と結構の比率です。
・バイデン支持者の若者は余り投票に熱心でないとの話しも聞きますので、この仮説も一部当たっている気はします。ただ、これだけでは説明出来ない大きさにも思います。
私の能力ではこれ以外の仮説を思い付きませんでした。上記では単純化のため中間派がいないとの想定ですが、現実には世論調査時に態度未決定だった人の多くがトランプ支持に回ったのが実態かもしれません。別の言い方をすれば、中間派に隠れトランプ派が多数混じっていたのかもしれません。結果の早期かつ「正義にかなった」確定とともに、投票行動の分析が深められていくことを期待しています。
さて、選挙と言えば大阪都構想も住民投票に付され、否決されました。偶々NHKを見ていたところ、まだ「賛成」が上回っていた段階で「否決確実」との速報を流し、それに素直に従い維新の会側が会見を始めたことに驚きました。良し悪しはさて置き、日本と米国の大きな違いを実感しました。
この影響に関し維新は平静を装っていますが、看板政策が自民党の反対で2度も否決されたことが何ら影響を持たないとしたら、却って不思議です。「それほど本気ではなかったのか」と感じてしまいます。程度は僅かかもしれませんが、維新の会の非関西圏での党勢拡大に水が差され、自民党との協力関係がギクシャクし、立憲民主党を利したと考える方が自然と思います。それなのに、国会で日本学術会議のことばかり取り上げる野党のセンスを疑います。
それでは。
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2 comments on “Vol.79: 選挙のこと”
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月例経済報告、展望レポート等、いつも定点観測を拝読しています。また、丁寧ながら、さりげなく添えられる、政権運営や国会対応、与野党の動向に対するご意見は毎回大変興味深いです。ありがとうございます。
大阪都構想に関しては大阪府民は最良の選挙をしたと思います。
都構想のメリットを維新の会が自ら否定してしまった事(大阪府と大阪市の首長を同一政党で揃えた。)と、緊縮財政の結果、大阪府の経済成長は国平均以下だった事を維新の会が抗弁出来なかったのがポイントと考えます。また、二重行政のコスト増減についても証明出来なかったのも痛いですね、、、。
維新の会もそれに気づいたのは良かったと考えます。
https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp010010003020127000/2