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The Gucci Post [国際政治・経済・金融 × プロフェッショナル]

2020/10/19 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.76: IMF世界経済見通し


今回は13日に公表されたIMF(国際通貨基金)世界経済見通しを取り上げます。IMFの旗艦レポートのひとつで、毎年4月と10月に大々的に公表され、その間に簡単にアップデートされます。つまり年4回IMFの経済見通しが公表される訳です。前回は6月でした。今回、技術的な変更がありました。世界各国の経済を足し上げる際、為替換算が必要となります(例えば日本のGDPをドル建てに換算など)。その際に用いられるレート(購買力平価)が最新のものに置き換えられ、その結果、4月や6月に公表された計数が遡って改訂されました。以下では、新たな計数に基づき記載します。

今回の特徴は以下の通りです。

1.6月に比べ今年の成長率見通しが上方修正された

・世界全体の成長率は2020年マイナス4.4%、2021年プラス5.2%。6月対比で2020年は+0.8%も上方修正されました。ただし、2021年はー0.2%下方修正されています。

・今年の見通しは各国で上方修正されました。中国以外は上方修正されてもマイナス成長なので見づらいですが、例えば米国(-4.3%成長、+3.7%上方修正)、ユーロ圏(-8.3%成長、+1.9%上方修正)、日本(-5.3%成長、+0.5%上方修正)、中国(+1.9%成長、+0.9%上方修正)などです。

・今年の成長率見通しが下方修正されたのはインドです。-10.3%成長、何と-5.8%もの下方修正です。

・上方修正の理由は、予想より早めに経済活動が再開され、その結果4~6月期の実績(マイナス成長)が予想ほど酷くなかったこと、その後7~9月期にかけて経済活動が回復に向かったこと、などが指摘されています。ただ、最近の感染症の再拡大もあり、10~12月期については慎重です。

2.2021年の水準は低い

・2020年-4.4%、2021年+5.2%なので、何とか2021年のGDP水準は2019年を上回ります。また、中国は2020年+1.9%、2021年+8.2%なので、典型的なV字型回復です。しかし、先進国だけみると、2020年-5.8%、2021年+3.9%で、2021年の水準は2019年に届きません。

3.不確実性が大きい

・上記の標準(ベースライン)シナリオのほか、上方、下方双方のシナリオが置かれています。単純に言えば上方シナリオはコロナ対応がとても上手くいき、下方シナリオは上手くいかないことを想定します。分かりにくい記述ですが、上方シナリオの場合、ベースラインに比べ2021年の成長率が0.5%ほど高くなるとされ、下方シナリオの場合、ベースラインに比べ2020年が0.75%ほど低く、2021年は何と3%近く低くなるとされます。

4.失われるGDPは巨額

・ベースラインシナリオの場合、2022年以降は3.5%程度の成長率に落ち着くとされます。この成長率はコロナ禍前のトレンドより低く、2020年から2025年通計で、世界のGDPはコロナ禍が無かったケースに比べ28兆ドルも喪失するとされます。

今回の世界経済見通しは、2020年上方修正の割に悲観的に読めます。それは、2025年までの中期見通しに基づき、以下のロジックに沿って今後の世界経済が辿る長く曲がった道を示しているからです。

・現在の危機に対応するためには、財政政策拡大が不可欠。これ抜きでは世界経済は一段と悲惨な姿に陥る。

・しかし、上記の通り今回の危機を経た後の成長率は、過去のトレンドを下回る水準にとどまる。そうすると、財政赤字や債務の解消に時間を要してしまう。低金利に助けられる面があるとは言え、とくに新興市場国・発展途上国でこの問題が深刻。

・そう考えると、財政支出に「無駄」は許されない。コロナ禍対応に不可欠な支出、今後の成長に貢献する投資など、焦点を絞ることが不可欠。そうでないと、上記の問題が一段と悪化してしまう。

・ゾンビ企業を残すのでなく、成長が見込まれる産業への転換など構造改革も進めないといけない。そのための教育投資なども大事。

・気候変動問題の悪化に伴う将来の損失拡大を未然に防ぐためにも、投資はグリーンを意識したものとすべき。

やや意訳ですし、低開発国の問題や貧困問題も言及されていますが、概ねこのような筋立てです。日本では安倍内閣以降こうした「硬派」の議論を余り見ないようになり、昔に戻った印象も受けます。ただ、こうした問題に直面していく可能性は無視できないと思います。

今回はこの辺で。

前回那須の山奥の兄ちゃんさんから頂いたコメント、重く受け止めました。軽々しく書けませんが、ゆうちょは、財務、コンプライアンス、サイバーセキュリティと問題山積と思います。また、総務省と金融庁に跨る点が問題解決を複雑にします。後日何か書けるか考えます。

その前に楽譜さんに頂いたコメントも重く受け止めました。その中での円高の点について、以前このコーナーで書いたことがあります。それ以降思考が止まっていますが、引き続き考えてみたいと思います。

2019年9月2日 Vol.29: 円高?円安?

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