2020/09/07 06:30 | by Konan | コメント(1)
Vol.70: 月例経済報告と自民党総裁選
まず台風の被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。単年のひとつの台風と気候変動問題を結び付けることは誤りですが、ここ数年の気候はおかしいとどうしても思ってしまいます。
そうした中、今回は短めに8月の内閣府月例経済報告を紹介します。また、既に勝負が決した感はありますが、自民党総裁選に触れようと思います。
まず月例経済報告(8月27日公表)。
(現状)
・全体:景気は、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にあるが、このところ持ち直しの動きがみられる
・個人消費:このところ持ち直している
・設備投資:弱含んでいる
・住宅建設(投資):弱含んでいる
・公共投資:堅調に推移している
・輸出:持ち直しの動きがみられる
・輸入:このところ下げ止まっている
(先行き)
・全体:感染拡大の防止策を講じつつ、社会経済活動のレベルを引き上げていくなかで、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直しの動きが続くことが期待されるが、感染症が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある。また、金融資本市場の変動に十分留意する必要がある
・個人消費:持ち直しが続くことが期待される
・設備投資:当面、慎重な動きが続くと見込まれる
・住宅建設(投資):弱含みで推移していくと見込まれる
・公共投資:堅調に推移していくことが見込まれる
・輸出:持ち直しの動きが続くことが期待される
・輸入:持ち直しに向かうことが期待される
「海外経済の改善」が指摘され、それに伴い輸出が「下げ止まり」から「持ち直しの動き」に上方修正された他は7月とほぼ不変です。水準感として「依然として厳しい」が、方向としては「持ち直しの動き」という判断と思います。この判断自体は定性的に正しいと思います。ただ、この表現だけでは定量的イメージは湧かず、GDPその他の計数で補う必要があります。例えば内閣府が公表する消費総合指数をみると、まだ6月分までしか公表されていませんが以下の推移です。
2019年6月(消費税率引上げ前の駆け込みがまだ無かった頃)104.1
2019年9月(引上げ前の駆け込み)106.8
2019年10月(駆け込みの反動)101.8
2020年1月(反動が漸く落ち着き)103.0
2020年3月(コロナ禍の影響出始め)98.5
2020年5月(緊急事態宣言の影響ピーク)89.2
2020年6月(解除後の回復)97.6
確かに5月に比べ回復しています。ただ、水準的には消費税率引上げ前の駆け込みの反動が起きた昨年10月を下回ります。7月以降も回復は続いていると思いますが、6月には所謂ペントアップ需要(リベンジ消費的なもの)が加わり数字が上がった可能性があり、また、第2波や猛暑の影響など不確実な状況も続いています。霧が晴れない状況が続くということでしょうか。
さて、前回は楽譜さん、Xさん、コメント有り難うございました。金融政策については改めて書くことを考えています。少しお待ちください。Xさんのコメントを読むと、「Xのひとり言」の方が読者に喜ばれるだろうと思えてきます。
そうした中自民党総裁選が始まり、報道されている通り菅官房長官の勝利が確実な情勢です。菅さんは安倍政権の政策継承を前面に打ち出していますし、実際彼がずっと安倍政権を官房長官として支えてきたので、大きな軌道修正は無いとみるのが順当です。あえて言えば、彼は地方分権論者でもあります。コロナ対策で良く中央と地方の権限や財源の配分のあり方が話題になりましたが、少し菅色が出るかかもしれません。
ところでなぜ菅独走になったのか?既に様々報道されていますが、私は以下のように思っています。
・任期が安倍総裁の任期の残り(約1年間)に限られ、1年後に再度総裁選が行われることが確実。そうなら、ここで全力で勝負する必要性は高くない。かつ、今はコロナ対策で難しい舵取りを迫られるので、貧乏くじを引く可能性すらある。押し付けた方が得かもしれない。
・熟した候補が少ない。例えば稲田、下村、茂木、西村、小泉など、未成熟ないし知名度が余りに低い。唯一現実味があった河野太郎について、実は菅は河野を将来の総理候補と考えている。憶測に過ぎないが、「菅の次は河野」のような形で彼を下ろさせた可能性もある。
・立候補した石破、岸田のうち、石破は国会議員の中では敵が多く、派閥も弱小で勝ち目が無い。岸田は選挙の顔として余りに弱く、支持を伸ばすことが出来なかった。
・菅自身、実直さ、実行力の高さなどは間違いなく、悪い選択でもない。
私は、菅さんと英国のブラウン元首相のイメージが重なります。どちらも地味かつ有能という点で。ブレア首相の禅譲を受けたブラウン首相は、しかし車内での失言が広く報道され、選挙での労働党大敗を招き、消えていきました。菅さんはそうした間違いを決してしないタイプと思いますが、政治は一寸先は闇の世界なので、今後を見守っていきたいと思います。
今回はこの辺で。生まれて初めて嶽きみ食べました。すごいですね!
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
One comment on “Vol.70: 月例経済報告と自民党総裁選”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
御高配恐れ入ります.
X様のコメントも参考になりました.ただ「
若年層の正規雇用と賃金の大幅な増加」という事実はありません.
正規雇用者数・非正規雇用者数は
15-24歳で
2012年 241 217
2019年 275 285
25-34歳で
2012年 827 297
2019年 788 260
となっており,足すと
2012年 1068 514
2020年 1064 545
で非正規の比率が微増しています.
25-34に限ってみても,正規の絶対数は減っているので,
単に少子化の影響で待遇が改善しただけだと言えます.
次に賃金は同様に正規非正規で見ると
20-24歳で
2012年 200 172
2019年 214 181 (それぞれ7% 5%アップ)
25-29歳で
2012年 236 188
2019年 249 199 (それぞれ6% 5%アップ)
と増えたように見えますが
例えば60-64歳で
2012年 297 215
2019年 325 237 (ぞれぞれ9% 10%アップ)
となっており,別に若者中心に賃金が上がったわけではなく
これも少子化の要因による誤差で説明が付きます.
個人的には安倍政権はいつかやらねばならぬ政治主導を
勧めた点では評価できるのですが,いかんせん
政治家が官僚の能力に達する前に主導権だけとってしまった.
例えばこのコロナ対策も,イエスマンだけ残った
弊害なのだろうと愚推しております.