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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2020/08/24 06:30  | by Konan |  コメント(0)

Vol.68: GDP最大のマイナス成長


今回も短く、先週月曜日に公表された4~6月期GDP1次速報を紹介します。「過去最大の落ち込み」と各種メディアで報道され、皆さん既にご存じと思いますが、復習ということで。

ヘッドラインの数字は、季節調整済前期比マイナス7.8%、年率換算値マイナス27.8%です。3四半期続けてのマイナス成長となりました。前々回のこのコーナー(番外)で経済統計の言葉を説明しました。季節調整とは、例えば平年の場合1~3月期は90日、4~6月期は91日と日数に差があり、また、後者はゴールデンウイークを含むため、仮に経済実態が変わらなくても、4~6月期のGDPが1~3月期を上回ることが通常です。しかし「実態はどうか」知りたいので、過去の傾向に基づき、1~3月期の数字を少し膨らませ、4~6月期の数字を少し縮め、そのうえで比較します。これが季節調整の意味です。年率換算とは、1~3月期から4~6月期の変化が1年間(4四半期)続いたらどうなるか計算した数字です。複利的な計算を行い、四捨五入も入りますが、前期比を4倍すると年率に近くなります。

今回は内需、外需ともマイナスに寄与しています。内需がマイナス4.8%、外需がマイナス3.0%です(この2つを足すとマイナス7.8%になります)。国内外とも崩れた訳です。個別需要項目でみると、民間最終消費支出が前期比マイナス8.2%(寄与度マイナス4.5%)と極めて大きく落ち込みました。また、輸出は前期比マイナス18.5%(寄与度マイナス3.1%)です。この2つで落ち込みのほぼ全てが説明できます。また、落ち込み幅は小さいですが、民間企業設備投資も前期比マイナス1.5%(寄与度マイナス0.2%)と減少です。

個人消費は緊急事態宣言の影響、輸出は海外経済の落ち込み、サプライチェーンの混乱に加え、所謂インバウンド消費が個人消費でなく輸出にカウントされることが、その減少の背景です。

4~6月期の落ち込みは予想通り、かつ、とても分かりやすい内容でした。世間の関心は早くも7~9月期、2020年度、2021年度に向っています。代表的な見方は以下の通りと思います。

(7~9月期)
・前期比プラス成長が予想されます。ただ、今回の前期比マイナス7.8%を取り戻すV字回復には程遠く、緩慢な成長が見込まれます。因みに、以前「5割減後の5割増では元に戻らない」と書きました。今回100が92.2に落ち、これが100に戻る(V字)にはプラス8.5%成長が必要です。これに遠く及ばないということです。4、5月に比べ活動レベルが戻ってきたことは実感出来ます。また、輸出について中国向け回復のニュースもあります。しかし、どう見てもコロナ前に戻る感じはありません。

(2020年度)
・この大きなマイナス成長も間違いありません。マイナス5%を超える落ち込みが予想されます。

(2021年度)
・流石にプラス成長でしょうが、力強さは見込めません。2020年度の落ち込みはカバーできず、+3%程度の成長予想が多いように思います。

こうした見通しの背景には、新型コロナウイルス感染症を巡る不確実性、具体的には第3波の程度やワクチン・治療薬実用化時期の不透明さが余りに大きく、どうしても見方が弱気に振れやすいこと、日本の特殊事情としてオリンピック・パラリンピック中止が視野に入ってしまうことなどがあります。そのうえで、以下の点が大事なポイントになると思います。

・人々の行動様式・・・世代により新型コロナに対する受け止め方はかなり異なります。20歳代までの中では余り気にしない方も増えているようにも思います。ただ、昨年までのように飲み会をしたり、旅行に行ったり出来る日がいつ戻るか、予想が難しいところです。例えば、この冬職場仲間で忘年会・新年会を行う姿、イベントやコンサートに人が多く集まる姿、楽しく旅行に出かける姿を想像することは容易でありません。これは日本に限らず海外も同様で、需要項目のうち個人消費と輸出の早期回復が期待できない理由になります。

・財政政策の限界・・・今世界各国で財政政策が景気を下支えしています。「金が届かない、少ない」との不満は絶えませんが、仮に財政支出が無かったとすれば、景気はより悲惨な姿になります。財政支出が家計の所得を支え、企業の倒産(=雇用の喪失)を防いでいます。これは、多かれ少なかれ米国、欧州、新興国でも同様です。しかし、いつまで続けることが出来るか?新型コロナが収束し、人々の行動様式が戻り、需要や売上げが戻るまでの間のつなぎが、財政政策あるいは中央銀行の政策の役割です。当初は半年もすれば元に戻ると思われていました。しかし、そうならないことが明らかになりつつあります。その中で、日本を含め財政支出をどこまで続けられるか、極めて難しい判断に直面します。

・設備投資は大丈夫か・・・アベノミクス下の景気回復局面では、設備投資の増加が大きな役割を果たしてきました。しかし、上記のように4~6月期は減少しました。国内外の需要回復が遅れると、既存設備が過剰になってきます。そうなると新規投資は当然減少します。このスパイラルに入り始めると、日本経済の牽引役が消滅してしまいます。

やや悲観的に過ぎたかもしれません。是非Saltさんのメルマガを読み、見方を修正して下さい。ただ、個人消費、設備投資、輸出、財政、どの項目を見ても心配の種は尽きません。そうならないことを祈りつつ、景気動向を見ていきたいと思います。

最後に、酷暑、熱中症にくれぐれも気を付けてください。

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