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The Gucci Post [国際政治・経済・金融 × プロフェッショナル]

2020/06/15 06:30  | by Konan |  コメント(6)

Vol.60: また短く、気候変動問題(3)+α


今回もまた短めに。気候変動問題の続きと先週の出来事への感想を記します。

気候変動問題について「なぜ関心が高まってきたか」「類義語との関係」を書いてきました。今回は金融(投融資)に焦点を当て、各国当局が金融機関や投資家にどのような働きかけを行っているか説明します。ざっくりと言えば、気候変動問題の対応に役立つ投融資を増やし、石炭火力発電に代表される気候に悪い活動への投融資を減らすよう、金融機関への働きかけが強まっています。

(1)プレッシャーをかける
・銀行、保険会社や機関投資家に「気候変動問題に役立つことをしよう!」と圧力をかけるやり方です。自由主義経済の下、露骨な強制は出来ません。そのうえで「責任投資原則」「責任銀行原則」と呼ばれる原則を作り、NPOの力も借りながら署名を働きかけます。一旦署名してしまうと逆行は難しくなります。

(2)投融資しやすくする~その1
・投融資には当然リスクが伴います。太陽光発電や風力発電など投融資の金額も嵩みます。民間の間でリスクをシェア出来れば良いですが、二の足を踏むケースも多くあります。金融的なリスク(儲かるか否か)に止まらず、とくに途上国のプロジェクトの場合、政治リスクや腐敗リスクもあります。
・世界銀行やアジア開発銀行のような組織がここで役割を果たします。ひとつは保証やリスクの一部引き受けにより民間が負う金融面のリスクを軽減します。また、途上国当局の「監視」を行い腐敗の可能性を抑制します。

(3)投融資しやすくする~その2
・気候変動の世界では「Green」「Brown」という言葉が良く使われます。グリーンは気候に良く、ブラウンは悪いことを意味します。とくに良い(悪い)ものが「Dark green(brown)」と呼ばれたりもします。グリーン、ブラウンの定義が明確になり共有されると、投資家や金融機関として動きやすくなります。
・以前から「グリーンボンド原則」と呼ばれる環境に優しい投資のための資金調達用債券発行に関する原則が定められていましたが、最近の流行語は「タクソノミー(taxonomy)」です。まだ日本語の定訳は無く、皆カタカナで「タクソノミー」と呼びます。
・欧州(EU)主導で作成が進められ、何がグリーンか詳細な定義作りが行われています。例えばハイブリッド車も「グリーン」と認められないなど、日本にとって厳しい内容が含まれています。

(4)金融機関に考えさせる
・グリーンのリスクが低いとは言い切れません(再生エネルギー関連プロジェクトが必ず成功するとは限らない)が、ブラウンのリスクが高いことはある程度説得性を持ちます。例えば石炭火力発電が長期間許容され続ける保障は無く、投資資金の回収が進まないリスクがあります。EV車を作れない自動車会社の将来は危うくなります。また、海水面上昇や風水害増加による影響を受けやすいのは海岸沿いや河川沿いの施設です。
・こうしたリスクを確りと考えるよう、日本を含む各国当局は銀行や保険会社への働きかけを強めています。金融機関としても、リスクを真面目に考え始めると、気候変動との関係で危ういものへの投融資を控えざるを得なくなります。

全てを網羅した訳ではありませんが、こうした様々なやり方で投融資の「グリーン化(非ブラウン化)」が現に進み始めています。

さて、今月入り後株価の乱高下が目立ちます。Saltさんに解説頂けると思いますが、超過剰流動性と超大きな不確実性が併存する現時点では不可避な現象かもしれません。各国中央銀行の緩和政策はリーマン後をすら上回る規模に達し、世界中に流動性が溢れました。その動き次第で資産価格は劇的に上がり、また下がることが十二分にあり得ます。また、新型コロナウイルス感染症についても、行動制限緩和の動きと新規感染者数増加の動きが同時に起きています。そのどちらに着目するかにより、市場の動きが大きく変わります。投資家の皆さんにとり、とても難しく、しかしやり甲斐がある局面と言うことでしょうか。

日本では行動制限緩和が続きます。そのこと自体は歓迎です。ただ東京アラートの扱いを見ると、単に小池都知事の選挙戦略の道具に過ぎない印象ですね。選挙自体は小池知事の再選と思いますが、感染症対応として、政治と専門家の役割のあり方を改めて考えてしまいます。

尻切れトンボの終わり方で失礼しました。

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6 comments on “Vol.60: また短く、気候変動問題(3)+α
  1. イッチャン より:
    政治と専門家の役割のあり方

    いつも勉強させていただいています。
    標記の件ですが、CRUさんは大阪・吉村知事と大阪の専門家会議のことお聞きお呼びでしょうか?先週の金曜日に開催されています(それも公開で!)会議内容はお調べ願うとして、その場では専門家同士の激しい議論が戦わされているようです。
    (公開ですから実名責任ある発言ばかり)吉村知事曰く、議論をオープンにしつつ、最終的には政治家として責任をもって決断するとのことです。まさしく政治と専門家の役割の在り方では?このこと、東京のほうではこのことニュースになっていないのこと。あんなに大阪方式は注目されたのに。
    一度ご覧になってはと思います。

  2. イッチャン より:
    政治と専門家の役割のあり方

    いつも勉強させていただいています。
    標記の件ですが、CRUさんは大阪・吉村知事と大阪の専門家会議のことお聞きお呼びでしょうか?先週の金曜日に開催されています(それも公開で!)会議内容はお調べ願うとして、その場では専門家同士の激しい議論が戦わされているようです。
    (公開ですから実名責任ある発言ばかり)吉村知事曰く、議論をオープンにしつつ、最終的には政治家として責任をもって決断するとのことです。まさしく政治と専門家の役割の在り方では?このこと、東京のほうではこのことニュースになっていないのこと。あんなに大阪方式は注目されたのに。
    一度ご覧になってはと思います。

  3. 健太 より:
    温暖化

     温暖化という気象現象と、それに伴う経済的行動とは別のものだと思う。
    経済的行動は、相手をつぶす目的がある。自由競争がこれからできなくなると、ほかのもので、することになる。経済会議は一種の軍縮会議のようになる。それから見ると、わが国の石炭火力発電は絶好の攻撃材料となる。
     誰も地球環境など考えていない。欧米のやり方ですね。
    白頭山が大噴火すれば、即座に寒冷化となる。
     その時どうするつもりだろうか。つまり寒冷化したなら、どうするつもりか?
    国内で,石炭火力発電債なるものを発売して、(これは利率をよくすることが可能)資金を集めて、作ったらいい。世界銀行や、金融機関など関係ないが、そこに政府がかかわるから、結局政治的問題となり、経済的問題とはならない。
     投資問題のように見えるが内実は政治問題に過ぎず、それは生存競争、つまり戦争の一部に過ぎないと思う。

  4. itea より:
    欧州の規制と投資

    自動車専門誌で環境問題の話を読むと、最新の規制では発電時の環境負荷が
    問題となってEVも環境問題から逃れられないようになった。
    また欧州メーカーが現時点で主力とする48vマイルドHVが大したことなくて
    欧州燃費規制をクリアできないことが明らかとなっている。

    現時点ではトヨタヤリスHVのみが最新燃費規制をクリアしていて、
    企業の時価総額はこれだけが理由ではないが
    トヨタが欧州企業の2倍以上となっている。
    困った欧州メーカーはeフューエルという概念で化石燃料を正当化するという
    詭弁を始めたみたい。
    この辺の投資話はうさんくさい話も多いなあと昔から感じる。

  5. 筆者です より:
    ありがとうございます

    コメントありがとうございます。気候変動については後2回書く予定で、そのうち1回は政治的な(綺麗事でない)側面を取り上げようと思っていました。新型コロナについては、東京と大阪の新規感染者の余りの違いに驚きます。無論大阪も油断出来ません。ただ4月、5月頃梅田駅の人の減り方が東京その他を圧倒していたことを思い出します。私は維新のサポーターではありませんが、大阪都構想などを通じて皆さんの意識が高まっているのでしょうか。

  6. X より:
    Green投融資は慎重に

    気候変動に役立つことをしよう、投融資をそちらに誘導しようと言う事自体は良いのですが、慎重にしないと逆効果になりますし、少なくとも太陽光と風力と電気自動車は技術的にクリアできない問題が大きすぎる事と、適材適所を無視して進んでいるために史上最悪の負の遺産になる事が必至です。世界規模で考えれば風力太陽光電気自動車が最適解の地域も多いですが、考えられているほど多くは無いと言うか遥かに少ないです。特に日本では全く駄目です。まだ旧型の原発の方がマシで、FITとかは10年を待たずに戦後最悪の負の遺産化しつつあります。国土をこんなに破壊してゴミを積み重ねてどうする気なんでしょうね・・・。
    日本でGreenをしたいなら、ビルゲイツが推進している小型核分裂炉とか、いっそ核融合とかに投資した方が子孫のためになります。
    断熱住宅も良いのですが、実務的な問題としては、建物に金をかけることの意味が、人口が増えて土地のキャピタルゲインが得られ続ける地域と、人口減少社会とでは全く負担感が違うと言う事がもっと理解される必要があります。それを理解して、如何に低コストで断熱住宅を実現して行くかを考えないと、これまた壮大な負の遺産になり、所有者はニッチもサッチも行かなくなります。新築時に建物に金をかければかけるほど、将来の負動産になるのが築古住宅の実態で、住宅ローンが残っている間は常に残債を下回る価値しかなく、払い終わった後は維持管理費や解体費が地価を上回る負動産になります。地価が上がり続ければ、誤魔化せるのですが。

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