2020/05/18 06:30 | by Konan | コメント(2)
Vol.56: 当面の執筆+気候変動問題(1)+内閣支持率
最初に個人的な話しで申し訳ありません。59歳の今まで回避出来た両親の介護に遂に直面しました。コーナー再開後月2回だった執筆ペースを、新型コロナウイルス感染症問題を契機に毎週に増やしてきました。私の平均的な執筆の仕方は、「金曜までにお題を考える」「土曜日に一旦執筆する」「日曜日に推敲し、月曜日6時半掲載タイマーを設定する」でした。今後当面の間、
・執筆頻度を減らす(元々の月2回に戻すなど)
・1回の文章の長さを短くする(これまで1回で書き切ったものを、2、3回に分ける)
・推敲せず、粗いまま載せてしまう
の組み合わせで対応したいと思います。このCRUのひとり言、ぐっちーや前橋さんのブログ・メルマガをメインとすれば、おまけのような位置付けでした。今もメルマガ・Facebook・Twitterを含むGucci Postを支えるのは、JDさんとSaltさんです。編集部さんも新企画を考えているようです。ということで、私も安心して介護に向き合おうと思います。
さて、気候変動問題。覚えておられる読者も少なくないと思いますが、ぐっちーは生前この問題に警鐘を鳴らし、日本がこの面で世界に立ち遅れることを心配していました。新型感染症発生前、スウェーデン人のグレタ・トゥーンベリさんの言動が世界の関心を集め、彼女への賛否が世間を賑わせました。昨年まで海外出張が多かった私は、欧州に行く都度この問題への関心の強さに圧倒されました。
これまでなら1回で書き切ったかもしれませんが、3回に分けて記述します。今回は「なぜ関心が高まったか」に焦点を当てます。2回目は「ESG、SDGsなど似て非なる(非だが似た)言葉との関係」を説明します。3回目は「AC(After Corona)と気候変動」について触れます。
気候変動問題への関心の強さは一様ではありません。欧州はとても強く、トランプ政権は拒否反応です(ただし、カリフォルニア州など州レベルあるいは個別企業レベルでは、米国でも欧州に近い姿勢がみられます)。昨年12月にマドリードで開催されたCOP25(国連気候変動枠組み条約第25回締結国会議。COPはConferene of the Partiesの略。今年グラスゴーでの開催が予定されたCOP26は新型感染症のため来年に延期)の「失敗」に象徴されるように、途上国・低開発国は先進国主導で話しが進むことを警戒しています。このように「一枚岩で力強く物事が進む」状況にはありませんが、それでもこの問題は着実に進み世界の常識になりつつあります。その理由は以下の3つに整理できると思います。
(1)問題の深刻さに気付き始めたこと
トランプ大統領が主張するように、気候変動問題に関し「100%正しい」理論や実証分析はありません。昨年日本を襲った異常気象も、気候変動の影響かもしれませんし偶然かもしれません。ただ、「二酸化炭素が蓄積される」「気温が上昇する」「気候の動きが激しく(ボラタイルに)なる」という一連の動きについて、「相応の因果関係と確からしさがありそうだ」との見方への賛成は間違いなく増えています。また、一旦大気中に蓄積された二酸化炭素の回収は容易でなく、こうした動きは不可逆的である、言い換えると、一旦臨界点を超えると取り返しがつかなくなる恐れも不安を掻き立てます。
この見方が正しいとすると、南太平洋の島国に限らず、オランダ、英国、中国などが沿岸部の水没に見舞われます。食料生産面でも、耕作非適格地が耕作地になる(最高級ワインの産地が北半球では北上すると言われます)場合もありますが、耕作地が非適格地になったり干ばつや洪水被害に見舞われる頻度が高まり、食料不足を招く恐れも生じます。
投融資面では、最近「座礁資産」という言葉が良く用いられます。ふたつ例を挙げると、ひとつは水没してしまう資産は価値を失います(このように、気候変動に伴い物理的に資産や事業の価値が失われるリスクは”物理リスク”と呼ばれます)。また、石炭産業のように二酸化炭素排出が大きく縮小を迫られる産業も価値を失います(このように、気候変動に対応するための規制で事業が難しくなるリスクは”移行リスク”と呼ばれます。ガソリン車やディーゼル車が使われなくなることもこの典型例です)。要は銀行や投資家にとっても大問題になりかねません。
そして、グレタさんではないですが、問題は将来顕在化します。被害を被るのは高齢層でなく若年層です。先進国対途上国の対立に加え、世代間闘争の側面も持ちつつ、若者の間で問題意識が広がりつつあります。採用の場面で、この問題に疎い企業の人気は欧米で急落しつつあります。
(2)解決の糸口が見え始めたこと
このように問題意識は広がりつつありますが、これまでは「背に腹は代えられない」として相手にされなかった面があります。問題が深刻化するのは30年先ですし、「環境にやさしく」と言われても、目先の生存や成長の方が大事との議論にはそれなりの説得力があります。
ただ、この面でも徐々に変化が生じています。典型的には石炭火力発電から再生可能エネルギーへの移行です。従来は石炭火力発電の方が再生可能エネルギーより圧倒的に安く、背に腹は代えられない途上国は(そして日本も)石炭火力発電に依存してきました。しかし技術進歩により太陽光パネルの価格が近年劇的に下がり、発電コストが石炭火力発電に並ぶかむしろ下回るまで状況は変化しています。また、二酸化炭素の排出削減に加え、排出された二酸化炭素が大気中に蓄積される前にキャッチする技術の研究も少しずつ進み始めました。
少し側面は異なりますが、ぐっちーが紫波町(あるいは岩手県)の住宅の断熱性能の高さを指摘していたこと、覚えていませんか?地道な話しですが、家の断熱性能が高まれば、エネルギー消費が減り二酸化炭素排出も削減できます。現に欧州では住宅の環境性能を格付けし、低格付の住居の賃貸や転売を認めない方向に動きつつあります。環境性能が低い住宅が座礁資産になる訳です。
まだまだ課題は多いとはいえ、気候変動対応が「絵に描いた餅」から徐々に「食べられる餅」に変わりつつあります。
(3)気候変動は「商売」になること
気候変動対応を進めるためには資金が必要です。慈善家や国・公的機関は、ある程度採算を度外視し「正しい」と思う事業に投融資を向けることが可能です。しかし、普通の民間投資家や銀行は、リスク・リターンを評価しそれが納得できるレベルになければ投融資出来ません。
かつて、気候変動対応関連の投融資はリターンが低いと言われました。ただ、気候変動対応に後ろ向きとみられることに伴うレピュテーションリスクが高いので、そこもリスク判断に織り込んだうえで、何とか投融資を正当化してきました。しかし、最近になり事情が変わり、「他の投融資案件と比べリスク・リターンに遜色がない」と言われ始めています。これは、例えば石炭火力発電所が二酸化炭素排出を抑制するため様々な制約を課せられ始めた結果、その投融資コストが上昇してきたこと(=相対比較で、気候にやさしくない投融資のリターンが下がり、やさしい投融資のリターンが上昇)による面もあります。
また、例えば欧州の銀行は、借り手企業や家計の気候変動対応のサポートをビジネスの核に据えつつあります。このように、「算盤勘定」のうえでも気候変動対応の現実性が増してきたことで、気候変動対応の取り組みが一段と進展する循環が生まれ始めています。
こうした中で起きた新型コロナウイルス感染症問題。この気候変動問題への影響は次々回に譲ります。
三題話し的ですが、最後にまた新型コロナウイルス感染症について。日本は世界的に見て感染症に伴う死者数が圧倒的に少なく、この点で感染症対策成功国なのに、何故か安倍内閣支持率は上昇しない(どちらかと言えば低下している)ことが良く話題になります。私なりに理由を整理してみました。
・元々地合いが良くなかった・・・安倍内閣は、当初2、3年は株価上昇に象徴されるアベノミクスの成功で人気を高めました。しかし、8%への消費税率引上げ以降、景気自体がイマイチの展開を続け、また、森友・加計・桜などのスキャンダルも繰り返されました。実力の無い野党の分断と自民党内の後継者難に助けられ長期政権を維持しているとは言え、支持率が上がる地合いに元々無かったことが、理由のひとつと思います。因みに、私の子供たちは安倍総理の会見を聞く都度「耳に入らない」と言います。私も、安倍総理には「人の心に響かせない」不思議な才能(?)があるように感じています。
・経済対策の策定や実行が遅い・・・このコーナーで何度も書いたので繰り返しません。
・自粛期間が長い・・・緊急事態宣言以降で見れば、諸外国に比べ自粛期間が長い訳ではありません。しかし、心理的には2月27日の休校方針公表以降、自粛は始まり生活への大きな影響が続いています。3月20日からの3連休で既に「自粛疲れ」と言われたくらいなので。また、最近「自粛警察」と呼ばれる事情も心理的悪影響を及ぼしています。自粛という人々の善意に委ねたシステムには良い面も多々ありますが、どうしても自粛しない人や店を非難する気持ちに向います。その気持ちの矛先が内閣支持率に反映される側面もあると思います。
・日本システムへの自信喪失・・・ひとつには、報道で医療現場の厳しさが繰り返し報道されました。欧米に比べ感染者数や死者が少なく抑えられているのに、医療現場が逼迫しそれどころかマスクや防護服すら不足する事態をみて、恐ろしく思った方は少なくないのではないでしょうか?安心・安全と思っていた日本が「そうではない」と気付いた時、非難は歴代政権、中でも長期政権となった現政権に自然と向かいます。もうひとつはIT化の遅れ。企業、学校、行政手続き、全てでこの問題が噴出しています。大企業は自己責任ですが、その他はこれまでの政府の無策を恨み、しかも態勢も無いのに「在宅せよ」「ウェブ授業せよ」と言われることに納得できない状況と思います。
如何でしょうか?
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2 comments on “Vol.56: 当面の執筆+気候変動問題(1)+内閣支持率”
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これまで政府はいろいろなことに対して、的確に対処できたか?
これはおそらくないとみるのが普通の日本人です。その意味で、ないものねだりに過ぎない。我が国の仕組みは危機に対応するようにできていない。これでおしまいです。だから普通の人はそれを自覚していきればいい。
何故かそれは地震津波台風を経験しているからです。これに尽きる。社会外国のように異民族の支配下に生きるという経験をしていない。従ってしれに起因する問題については現状認識すらできていない。馬鹿げた<他民族共生>といって、実質現象認識をしないでいる。
太陽光発電はエネルギー計算的に二酸化炭素は減るでしょうか?
たしか太陽エネルギーは1.5wパー平米だったとおもう。それから計算するとどのような結果が出るか。ネットで調べたが出ていない。
個人的には電気自動車も太陽光発電も、だめだとみているから、やる必要はない。問題はそれらが政治的案件から経済的な案件として扱われていることで、それによって自国を有利にするために過ぎないものではないか?
大体ヨーロパ人のあくどさはとてもではないが我々は及ばない。
今回のまとめも興味深く読みました。
ぐっちーさんの断熱の話、よく憶えてます。自分は太平洋側に住んでいて湿度問題が
あるので気密性の高い断熱には懐疑的であり、その旨書いた記憶もありますが、
ぐっちーさんの主張は日本の住宅水準の低さと業界の問題を指摘したもので、
問題提起としては全く正しかったのだと思う。
まとめのいままで無策だったのに在宅せよ、リモートせよ、では支持されない、
というのはなるほどと納得しました。腑に落ちた。
国民のそういうとこまで思いが至らず表面繕うことにばかり精出してたのが現状なのかな?
グローバル化時代に安倍首相の外交手腕は評価されましたが、
アフターコロナでは不要不急なものになりつつあるような感があります。