2020/01/27 06:30 | by Konan | コメント(1)
Vol.41: 内閣府、日銀、IMF 2020年1月
月2回の執筆ペースを守ると2月3日掲載となりますが、偶々先週内閣府、日銀、IMFの情報が出揃ったので、少し早めに掲載します。夕食会でJDさん、Saltさん、編集部さんの熱気と若さに刺激を受けたこともありますし(笑)。はじめにいつも通り内閣府月例経済報告(22日)、日銀金融政策決定会合(21日)を紹介したのち、IMF世界経済見通し(20日)を紹介します。なお、日銀の1月会合は例年月末近くですが、今年は少し早めです。オリンピック・パラリンピックイヤーで、7月後半以降重要な会合を控える日程を組んだことが影響したようです。
(現状)
全体:輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、緩やかに回復している(内閣府)海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、基調としては緩やかに拡大している(日銀)
個人消費:持ち直している(内閣府)消費税率引き上げなどの影響による振れを伴いつつも、雇用・所得環境の着実な改善を背景に緩やかに増加している(日銀)
設備投資:緩やかな増加傾向にあるものの、一部に弱さがみられる(内閣府)増加傾向を続けている(日銀)
住宅建設(投資):弱含んでいる(内閣府)横ばい圏内で推移している(日銀)
公共投資:堅調に推移している(内閣府)緩やかに増加している(日銀)
輸出:弱含んでいる(内閣府)弱めの動きが続いている(日銀)
輸入:おおむね横ばいとなっている(内閣府)記述無し(日銀)
(先行き)
全体:当面、弱さが残るものの、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱、中東地域を巡る情勢等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引上げ後の消費者マインドの動向に留意する必要がある(内閣府)当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、2021年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる(日銀)
個人消費:持ち直しが続くことが期待される。ただし、消費者マインドが消費に与える影響に留意する必要がある(内閣府)消費税率引き上げなどの影響が次第に減衰し(中略)緩やかな増加傾向をたどるとみられる(日銀)
設備投資:緩やかに増加していくことが期待される。ただし、企業マインドが投資に与える影響に留意する必要がある(内閣府)(長い前置きの後)緩やかな増加を続けると予想される(日銀)
住宅建設(投資):当面、弱含みで推移していくと見込まれる(内閣府)振れを均せば、横ばい圏内の動きが続くと考えられる(日銀)
公共投資:関連予算の執行により、堅調に推移していくことが見込まれる(内閣府)高めの水準で推移すると予想している(日銀)
輸出:再び持ち直していくことが期待される(内閣府)当面、弱めの動きとなることが見込まれる(中略)緩やかな増加基調に復していくと予想される(日銀)
輸入:持ち直していくことが期待される(内閣府)記述無し(日銀)
内閣府は、設備投資の判断が少し下方修正され(12月と語順を入れ替え、弱さがみられる点を結語にしました。官僚作文の工夫の表われです(笑))、警戒すべき点に中東情勢が加わりました。日銀は展望レポート公表月(1月(今回)、4月、7月、10月)とその他の4回の間で表現の仕方や詳細さが異なるので比較が難しい面はありますが、達観すれば12月の判断が維持されたように思います。
さて日銀。今回は所謂展望レポート公表月に当たり、政策委員会メンバーの見通しの数字が示されました。今回は前回と然程変わっていません。具体的には、9人のメンバーの上からみても下からみても5番目となる中央値でみると、前の展望レポート公表時(10月)は、2019年度から2021年度にかけ、実質GDP+0.6%、+0.7%、+1.0%、消費者物価指数は+0.7%、+1.1%、+1.5%でしたが、今回は実質GDP+0.8%、+0.9%、+1.1%、消費者物価指数は+0.6%、+1.0%、+1.4%です。2%の物価目標は2021年度も未達で、引続き金融緩和の長期化が見込まれる予想値となっています。
日銀の見通しについて2つ付言します。まず、日銀が考えるリスク要因は、実体経済面、物価面を合わせると(テクニカルな点を除き)概ね以下の点となります。そして「下振れリスクの方が大きい」ことを認めています。
・海外経済の動向(保護主義的な動きの帰趨とその影響、中国を始めとする新興国・資源国経済の動向、グローバルなIT関連財需要の動向、英国のEU離脱問題の展開やその影響、地政学リスク、こうしたもとでの国際金融市場の動向)・・・内閣府と似ていますね。
・消費税率引き上げの影響
・企業や家計の中長期的な成長期待(少子高齢化など中長期的な課題への取り組みや労働市場を始めとする規制・制度改革の動向、企業のイノベーションなど)
・財政の中長期的な持続可能性に対する信認
・今後の為替相場の変動や国際商品市況の動向
次に、皆さんも関心が高いと思われる消費税率引き上げの影響については、それを認めつつも「乗り越えられる」との認識と受け止めました。引用すると以下の通りです。
「前回の消費増税時と比べると、税率引き上げ前の需要増の規模は総じて抑制されていたことに加え、家計のネット負担額の増加も小幅であることから、個人消費の落ち込みは前回増税時と比べ限定的なものにとどまり、個人消費の増加傾向自体は維持されると考えられる。その後は、雇用者所得の増加と株高による資産効果に支えられて、基調としては、緩やかな増加を続けると見込まれる。」
今年はオリンピック・パラリンピックがあるので、この日銀の見通しがある程度当たる可能性もあるとは思います。ただ、中国観光客の減少(技術的にはGDP統計上、個人消費ではなく輸出の減少と認識されます)問題など予断は許さないといったところでしょうか。
さてIMF世界経済見通し。今後どこかでより詳細に紹介することを考えますが、今回は主なポイントに絞ります。IMF(国際通貨基金)は年に4回世界経済見通しを公表します。4月と10月は本格的で分厚いレポートも出されます。1月と7月は経済の現状と見通しに焦点が絞られます。G20のように世界の首脳が集まる会議にも報告されるので、世界で最も権威がある見通しとなっていますが、実際は結構外れます(苦笑)。日本語版もほぼ同時に出るので、日本人にも便利です。
今回の副題は(日本語では)「暫定的な安定化、わずかな回復?」とされています。2019年の世界経済成長率は6回連続して下方修正され、今回2.9%とされました。これは国際通貨危機(リーマン危機)後最低の成長率です。2020年は3.3%、2021年は3.4%と緩やかながら成長率の上昇が予測されています。「暫定的な安定化」との副題は、前回10月時点に比べ製造業や世界貿易の底入れの兆候がみられること、米中貿易交渉でとりあえずの合意があったこと、金融政策が緩和的な方向を強めていることを受けてのものです。また、今年、来年の成長見通しも2019年よりマシです。ただ、イランの問題を含め下振れリスクが依然として顕著とも指摘します。
こうしたストーリーはSaltさんの経済ZAPの印象と全く異なります。前回も書きましたが、現在米国経済独り勝ちの状況で、他の地域・国は押し並べて余り良くありません。このブログは計表を載せにくいので上手く表現できませんが、2018年、2019年、2020年の3年間の成長率を地域・国ごとに並べると以下の通りです。
世界全体 3.6% 2.9% 3.3%
先進国 2.2% 1.7% 1.6%
米国 2.9% 2.3% 2.0%
ユーロ圏 1.9% 1.2% 1.3%
日本 0.3% 1.0% 0.7%
新興途上国4.5% 3.7% 4.4%
中国 6.6% 6.1% 6.0%
変化で見ると米国も2018年と比較すれば低下していますが、それでも2.3%と成長率は先進国では群を抜きます。2019年については、ユーロ圏と新興国・途上国の低下が顕著です。個別国の詳細は割愛しますが、中国、インド、メキシコ、アルゼンチン、トルコ、サウジアラビアなど軒並み問題を抱えています。新興市場国の長期停滞問題を指摘する識者も出始めています。
今回だけではとても書き切れませんが、今後もう少し深堀りしていければと思います。
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先日北陸の越前海岸へ行ってきた。地方都市の疲弊は半端ではない。また地元のスーパーで警備員がはいちされた。何故か、老人の万引きが多いからという。万引きは中学生か高校生のすることだったが、今は違う。貧富の差が露骨になったというがそれは前からあったが見えなかったに過ぎない。それとありもしない中流という幻想によって、生活水準を上げ,また見栄でで生活をしているからだろう。
国内は素人が見るに、少子化問題と税収問題だと思う。少子化は子供を持つ親に100万やればいい。86万人にやっても8600億に過ぎない。これは公務員の給料をけずればいい。日銀総裁の給料は2700万だというから1000万削ってもアメリカと我が国は違うから、それで十分のはずだ。
ImFをつかって、15パ^-セントにするという勧告を出させようとしているが、いらざることで、第一卑怯ではないか。税収問題を外国の勧告に沿ってやるということだが、自らの判断ですればいいものを。
いろいろな人が市役所の職員は三分の一でいいとみている。やることは警察と自衛隊員の削減ではなく、ほかの職員の削減だと思う。あまりに余ているのが我が国の労働市場ではないかというのが実感です。
もう日本人は怒りを政治家、財務省に向ける時ではないかと内心思っている。
なぜおこらないだろうかと不思議でならない。
いずれにしても地方都市の疲弊は半端ではない。その反映が日銀の報告にはないと思う。
今回のコロナウイルスによる供給不足による2パーセントのインフレが生じたら、それが我が国経済にいいことか?
数字の語呂合わせばかりしていてはダメではないか?