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2019/04/01 06:30  | by Konan |  コメント(4)

Vol.17: 景気は下降?+月例経済報告と金融政策決定会合2019年3月


政府、日銀の景気判断でも暗雲が漂い始めました。

今回はまず3月の内閣府月例経済報告と日銀金融政策決定会合を紹介します。また1月の景気動向指数が低下し、今次景気回復局面の終焉が噂されることについて説明したいと思います。

恒例で内閣府と日銀の表現を並べます。

(現状評価)
・全体:このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している(内閣府)輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している(日銀) 
・個人消費:持ち直している(内閣府)振れを伴いながらも、緩やかに増加している(日銀)
・設備投資:増加している(内閣府)増加傾向を続けている(日銀)
・住宅建設(投資):おおむね横ばいとなっている(内閣府)横ばい圏内で推移している(日銀)
・公共投資:弱含んでいる(内閣府)高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している(日銀)
・輸出:このところ弱含んでいる(内閣府)足もとでは弱めの動きとなっている(日銀)
・輸入:おおむね横ばいとなっている(内閣府)記述無し(日銀)

(先行き見通し)
・全体:当面、一部に弱さが残るものの、緩やかな回復が続くことが期待される(内閣府)当面、海外経済の減速の影響を受けるものの、緩やかな拡大を続けるとみられる(日銀)
・個人消費:持ち直しが続くことが期待される(内閣府)(国内需要をまとめて)増加基調をたどると考えられる(日銀)
・設備投資:増加が続くことが期待される(内閣府)
・住宅建設(投資):横ばいで推移していくと見込まれる(内閣府)
・公共投資:次第に補正予算の効果の発現が期待される(内閣府)
・輸出:持ち直していくことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や中国経済の先行きなど海外経済の不確実性に留意する必要がある(内閣府)当面、弱めの動きとなるものの、海外経済が総じてみれば緩やかに成長していくことを背景に、基調として緩やかに増加していくとみられる(日銀)
・輸入:持ち直していくことが期待される(内閣府)記述無し(日銀)

内閣府は「緩やかな回復」、日銀も「緩やかな拡大」という基調判断は維持しています。ただ流石に海外経済の減速の影響で輸出・生産面の動きが弱いことを認めざるを得なくなりました。内閣府は昨年8月の段階から輸出に関し「持ち直しの動きに足踏みがみられる」と弱さを認めていましたが、今回これが前面に出されました。日銀はこれに半年も遅れ漸く輸出の弱さを認めた格好です。いずれも基調判断を維持した点について、内閣府は「雇用・所得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあって」と政府の政策が効果を発揮していくことを期待しています。日銀は、マイナス金利政策やETF巨額買い入れで批判を受けている既に超緩和的な金融政策の更なる緩和に追い込まれることを避けるため、とみられます。

さて、景気動向指数。3月7日に公表された2019年1月分速報で、景気動向指数一致指数の基調判断が「下方への局面変化を示している」とされたことで俄然注目を集めました。22日の改訂でもこの判断が維持されました。

注目を集めたことには訳があります。これまでの最長の景気拡張期間は、小泉政権の頃実現した通称いざなみ景気です。2002年1月が谷、2008年2月が山、拡張期間73か月間です。今回の景気回復局面は、2012年11月が谷(つまり2012年12月から拡張期間入り)なので、昨年12月で丁度73か月間となりました。記録更新がかかった今年1月の数字が突然「下方への局面変化」とされたため、話題となった訳です。

景気動向指数には先行、一致、遅行の3系列があります。先行は景気の先行きを占う指標、一致は現状をみる指標、遅行は事後的に景気の動きを確認する指標です。実際、下記の一つ目のURLでグラフを確認頂くと、先行指数が先に動き、一致指数が続き、最後に遅行指数が後を追っていることが分かります。

私は余り景気動向指数のファンではありません。この指数は長きにわたり日本経済の動きを見る指標として使われてきました。それだけに「古さ」も否めません。一致指数に用いられるデータは、鉱工業生産指数、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、所定外労働時間指数、投資財出荷指数、商業販売額(小売業)、商業販売額(卸売業)、営業利益(全産業)、有効求人倍率と、何だか古き良き日本を感じさせるものばかりです。

それはさて置き、下記の二つ目のURLでグラフを確認頂くと、一致指数がここにきて下方に屈折してきたことが見て取れます。このURL資料の2頁目にとても詳細に(かつ分かり難く)景気動向指数による景気の基調判断の基準が示されています。毎月の一致指数に加え、3か月後方移動平均(当月、1か月前、2か月前の3つの数字の平均値)、7か月後方移動平均(当月から6か月前まで7つの数字の平均値)を用いて、「改善」「足踏み」「上方への局面変化」「下方への局面変化」「悪化」「下げ止まり」のいずれか判断されます。今回の「下方への局面変化」は「事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す」と定義されます。とても分かり難い表現ですが、「景気の山、谷判断はすぐには行われず、大分時間が経過してから事後的に行われる」ということと、「その事後判断において、2019年1月ないしその前の数か月間に今次景気回復局面の山(ピーク)が訪れていた=その後後退局面に入っていた=とされる可能性が高い」という意味になります。

将来行われる事後判断において、2019年1月(ないしその少し前)が今次景気回復局面の「山」だったと実際に判断されるか否か現時点では不明です。エコノミストの意見も二分しています。最近の景気減速のひとつの背景が中国経済の減速と半導体サイクルの下降にあることは明確で、この要因が短期のうちに終わり景気が持ち直していくのか、そうならず、さらに消費税率引上げも加わり景気が下降を続けていくのか読み難いことが、意見二分化の背景です。私自身も気持ちを固めきれません。

むしろ今回皆さんに紹介したいのは、余り報道もされなかった、昨年(2018年)12月13日の内閣府経済社会研究所による「前回の景気の谷から足下まで明確な下降はみられず、第15循環の景気の谷(2012年11月)以降、2017年8月以前に景気の山はつかないことについて研究会の合意が得られた」(下記URL参照)との決定です。この決定は、ひとつには、1年以上経ち漸く事後的に景気の山谷が判断されることを示しています。しかしむしろ大事なのは、2014年春頃から2016年初頃までの間、消費税率の8%への引上げや前回の中国経済の減速の影響で多くの指標が下を向いたにも拘わらず、景気後退と判断されなかったことです。山があればその後景気後退となりますが、山が無ければ景気後退もないことになる訳です。確かにこの間の指数の落ち込み方が、景気後退期と判定されたそれ以前の時期に比べ緩やかだったことは事実です(下記URLの4頁、別紙3のグラフをご覧下さい)。また、消費税率引上げ直後の反動減は当然予測されたことで、その割には日本経済は持ちこたえたと言えないでもありません。

しかし「第二次安倍内閣誕生以降、日本経済は回復を続けた」という政権のメッセージを損なわないための、究極のしかし目立たない「忖度」のように見えないでもありません。私が穿ち過ぎなのでしょうか?

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4 comments on “Vol.17: 景気は下降?+月例経済報告と金融政策決定会合2019年3月
  1. 健太 より
    夢の代

     将来日銀が株を売るとき暴落して、その時外資に買われて韓国のようになるのでは?
     単純に従業員の給料を上げないと景気は回復しない。あげて回復させるか回復してあげるか?どちらでしょうねえ。

     幼児保育を無料化するというがそれは公立だけにすることで私立まで入れること自体が間違い。公立は無料化しようがしまいがその質は変わらない。私立は無料化した分だけさらに質を上げられる。ますます格差が広がり税負担が増える。金持ちは遊んでいても金が入るが貧乏人は違う。そして国民のほとんどは貧乏人で、この扱いを政府は間違えている。

     思うにですよアメリカは株価で経済が動いているが、我が国は預貯金で動いている。この違いが現在のわがくにとあめりかとの違いの元だと思う。したがって預貯金を株へという政策は必要だがそれはたぶん国民が付いてこない。ではどうするか?
     素人考えだが預貯金をという考えは金本位制に向いているから国民に金を買わせる政策をすることで、金購入にかかる税金をなしにする事ではないか。また売り買いにおける税金を減免する事ではないか。
     すると金市場が経済を作動させることになり、半導体その他に使われているから、この価格変動が経済へ影響を与える。
     ちなみに一家庭100g買うとしたらおよそ6000万世帯だから6000トンです。多分これが経済の回復に一番ではないかと思う。30兆です。
     いかがでしょうか?

  2. 謙太 より
    思う事

     現状の経済については何も考えずにそのまま認める。そこで素人考えだがマルクスは貯金がない経済をめざした。ケインズはいや貯金はそれでいいからそれを有効に使おうと理解したとするとそれぞれの行動において「難しさはある。
     会社四季報を見ると内部留保が異常に多い。これは何によるかとつらつらと考えたが、一つにあ1997年の金融危機のトラウマ、もう一つは日銀の政策への不信感、そのため内部留保を多くため込んでいる。これは正しい行動ではないか?

     誰も日銀の政策を信用していない、また実際の経済もそれをしまえしている。
    先は恐ろしいことではないが。その時誰も助けてくれないから内部留保を増やしている。実に健全ではないか

  3. 健太 より
    さらに

     支那事変が起きて二年くらいたった時、国民は異常な不安感に見舞われた、それまでの戦争は2年くらいで終わった。また首都南京は陥落したので、戦争は終わると思ったが違った。軍部はその国民の思っていることをもとにしてそれを処理すればいいものをわけのわからないアジアという概念にとらわれて、先の見込みもない戦争おずるずるとつずけた、その戦争に必要なものを供給している国が反対しているにかかわらず。なぜそれをその国が供給するのか。止めればそれでおしまいになるのに供給するのかも考えずに、そのまま戦争をつずけた、妙な理念を持ち出して。
     今回消費税を上げるというが、どのように見てみあげればお陀仏になることは。肌でわかる。600万の収入で可処分所得は420万だと知人の子供が言った。嘘だろうというと給料明細を見せてくれた。その上自動車税、消費税である。
     税は必要だが消費税という徴税手段ではない、別な方法を考えるのが大蔵官僚の仕事ではないか。我が国の最優秀の大学を出ているから(皮肉か)そのくらいは考えられるだろう。
     しかもこれまで消費税を上げてその後の経済停滞を三度とも招いている。
    学習能力がないのではないか。
     もう大きな病院は年寄りは見ない方向へと進んでいる。一種の自衛でしょう。それしか方法がないから

  4. 健太 より
    しつこく疑問

     昨年税務申告をした。これまで小銭を稼いでいたが、額が大きくなったのでまあした。その時税について考えたが、要するにいかようになっているかわからない。また大福帳のように記していたがそのノートが見つからず(これ本当、そのノートには別な重要なことも書いてあり、困った。もとは子供が触ったから、場所を変えたに過ぎないがそれが分からない)そこで事情を説明して大体で済ました。
     その時消費税について聞いたところ関係ないとのことだった。課税基準に満たない。そこで消費税について、考えたが、これって大きな問題があることにきずいた。
    今仮にある国がありそこはすべて貿易で成り立っているとする。
     輸出品には消費税をとれないから、輸出業者には税を還付する。
    すると国内の公共資産を使って生産して、輸出すれば、その公共資産の摩耗に対する税の負担はほかですることになる。徴税業務の費用は無駄で、しかも税収にはマイナスに働く。
     上記の例は仮定だが実際の国内の経済活動は貿易品と国内商品とがあり、貿易品については上記の現象が起きる。すると国内生産活動からの税で、貿易品も含めた公共財の摩耗の負担をしなければならない。これは形を変えた国内産業への増税となると思う。
     これでは初めから無理な税制で、貿易が盛んになればなるほど税負担が増えることになるのではと思う。
     上記の考えは間違いだろうか?

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