2019/02/04 06:30 | by Konan | コメント(1)
Vol.13: 内閣府月例経済報告と日銀金融政策決定会合2019年1月
今回は、1月の内閣府月例経済報告と日銀金融政策決定会合を紹介します。日銀の展望レポートも公表されました。例によって実質経済成長率や消費者物価上昇率の具体的な数字も紹介します。最後に、経済指標シリーズの締めとなる個人消費関連データを取り上げます。
(現状評価)
・全体:緩やかに回復している(内閣府)緩やかに拡大している(日銀)
・個人消費:持ち直している(内閣府)振れを伴いながらも、緩やかに増加している(日銀)
・設備投資:増加している(内閣府)増加傾向を続けている(日銀)
・住宅建設(投資):おおむね横ばいとなっている(内閣府)横ばい圏内で推移している(日銀)
・公共投資:このところ弱含んでいる(内閣府)高めの水準を維持しつつ、横ばい圏内で推移している(日銀)
・輸出:このところ弱含んでいる(内閣府)増加基調にある(日銀)
・輸入:おおむね横ばいとなっている(内閣府)記述無し(日銀)
(先行き見通し)
・全体:緩やかな回復が続くことが期待される(内閣府)2020年度までの見通し期間を通じて、拡大基調が続くとみられる(日銀)
・個人消費:持ち直しが続くことが期待される(内閣府)ゆるやかな増加傾向をたどるとみられる(日銀)
・設備投資:増加が続くことが期待される(内閣府)増加基調は維持されるものと考えられる(日銀)
・住宅建設(投資):横ばいで推移していくと見込まれる(内閣府)記述無し(日銀)
・公共投資:次第に補正予算の効果の発現が期待される(内閣府)増加していくと予想している(日銀)
・輸出:持ち直していくことが期待される。ただし、通商問題の動向が世界経済に与える影響や中国経済の先行きなど海外経済の不確実性に留意する必要がある(内閣府)基調として緩やかな増加を続けると見込まれる(日銀)
・輸入:持ち直していくことが期待される(内閣府)記述無し(日銀)
内閣府は、輸出に関し12月の「おおむね横ばいとなっている」から「このところ弱含んでいる」に見方が下方修正され、また「中国経済の先行きなど海外経済の不確実性に留意する必要がある」と、中国経済不安を明確化させました。日銀の方は、現状評価は前回12月と変更がありません。先行きについては、12月は「緩やかな拡大を続けるとみられる」、今回は「拡大基調が続くとみられる」と表現が異なります。因みに12月と今回とどちらが弱い表現か悩みますが、今回の方が弱い表現です。ただ、これは2020年度まで見た場合、現状余りに良い設備投資の減速が見込まれること、消費税率引き上げの影響が予想されることを背景としており、目先の景気に対する見方がここにきて弱気化した訳ではありません。
内閣府と日銀を比較すると、これまで何度かお伝えしたように、内閣府は「回復」、日銀は「拡大」と基調判断の表現が異なります。また、今月の輸出の判断にあらわれたように、内閣府は月々の統計の動きにある程度忠実な表現を用いるのに対し、日銀は基調(トレンド)判断を重視し表現を余り変えません。
さて、1月は四半期に1度、日銀展望レポートが公表される月に当たります。展望レポートでは、日銀の実質経済成長率や物価上昇率に関する見方が具体的な数字で表され、いつも注目を集めます。因みに公表される数字は、金融政策を決める9人の政策委員それぞれの見方を持ち寄り、そのレンジと中央値(9人なので上からも下からも5番目の数字)を示すこととされています。
中央値でみると、実質経済成長率については、2018年度+0.9%、2019年度+0.9%、2020年度+1.0%とされ、前回10月時点の見通しと比べ、2018年度がかなり下方修正されました(10月時点では18年度+1.4%、19年度+0.8%、20年度+0.8%の見通しでした)。消費者物価指数前年比については、2018年度+0.8%、2019年度+0.9%、2020年度+1.4%とされ、10月時点の見通しよりいずれも下方修正されました(10月時点では、18年度+0.9%、19年度+1.4%、20年度+1.5%)。今回の物価上昇率見通しの下方修正は報道でもかなり話題となり、「日銀の出口が見えない」などと揶揄されました。
日銀の2020年度にかけてのイメージをまとめると、実体経済については、2018年度について、昨夏の自然災害の影響からかなり下方修正された後、今年10月に予定される消費税率引き上げの影響や、現在設備投資が良過ぎるくらい好調なので流石に伸びが鈍化していくだろうとの見方から、1%程度の成長にとどまり続けるとみています。それでも、日銀が推計する潜在成長率(0.76%)を上回るところがこの見通しのみそです。成長率が潜在成長率を上回れば、需給ギャップのプラス幅が拡大していくからです。物価上昇率については、需給ギャップがプラスの状況(無理をしないと需要に供給が追い付かない状況)が続くので、じわじわと上がっていくだろうとの見方です。ただ、それでも+2%の物価上昇目標には届きません。更に下方修正すらされています。従って、黒田日銀が2%物価目標の旗を降ろさない限り、金融緩和政策の一段の長期化が見込まれることになります。
なお、伝え遅れましたが、今回日銀の金融政策に変更はありませんでした。
さて、経済指標シリーズの最後、個人消費データです。ここには内閣府と日銀の戦いがあります。個人消費の難しさは、物の消費、サービスの消費、現金で決済される消費、デジタル決済される消費、日本に住む人の消費、外国人旅行者の消費(以前一度紹介しましたが、これは個人消費でなく輸出に計上されます!)と、その種類が余りに多岐にわたることです。内閣府と日銀の資料では、個別データとして、百貨店販売額、スーパー販売額、コンビニエンスストア販売額、機械器具小売販売額、新車販売台数、外食売上高、旅行取扱高が掲げられています。この他、個人消費関連のマインド(強気さ、弱気さ)を示す指標として、消費者態度指数や景気ウォッチャー調査が用いられます。しかし、これだけで全ての消費がカバーされるとはとても思えません。典型的には娯楽や風俗関係でしょうか。
そこで、内閣府、日銀とも「ひとつの指標で個人消費動向を表現したい」との考え方から、それぞれの指標を生み出しました。内閣府は「消費総合指数」、日銀は「消費活動指数」です。名前は似ていますが、この2つには大きな違いがあります。個人消費を始めGDPの需要項目の動きを捉える場合、GDPを生み出す「生産者」の視点に立つ見方と、GDPを買う「需要者」の視点に立つ見方があります。有名なGDP三面等価の法則からすれば、どちらからアプローチしても結果は同じはずです。ところが、統計には「データがすぐ入手できるか、すぐ入手できるデータの精度がとれほど高いか」という問題がつきまといます。この点をクリアしない限り、経済の現状把握や予測に用いることが出来ません。中国のように国家主権が強力な国で、かつ、アリババやテンセントの決済が広く普及した国では、決済データを国が吸い上げることで、完璧かつ速報性が極めて高い需要側データを把握することも夢ではありません。しかし、日本や米国はそうではありません。そこで悩みが生じます。
内閣府はバランスアプローチです。各種の販売側(生産者側)のデータに加え、需要側の情報も加味しようと考えます。需要者の情報として用いることが出来るのが家計調査です。この情報も加味します。ところが、日銀は「家計調査にはバイアスがあり、データとして勘案するに値しない」と切り捨てます。家計調査に協力する人が普段から在宅する機会が多い高齢者等に偏るので、これを勘案するとかえって個人消費動向を見誤るとの立場です。従って日銀の指標は生産者側の視点のみに立って作られます。
このどちらが正しいかコメントは差し控えます(役人的表現で申し訳ありません)。両方を見比べると面白いとだけ申し上げます。ただ、この争いには後日談があります。日銀は数年前から内閣府に対しとても好戦的で、GDP統計の作り方について、審議会や論文等を通じ異議を唱えています。一部エコノミストやマスコミの間で話題になり、どちらかといえば日銀が優勢に見えました。それでも内閣府も粘り腰を見せ、戦いは膠着状態にありますが、内閣府は日銀の「敵失」に救われた面もあります。これも一時話題になりましたが、日銀が作成する投資信託関連データが昨夏大きく(30兆円)改定されました。日銀は「統計には改定がつきもの」との立場で誤りとは認めていませんが、さすがにこのデータを信じかつ金融庁に「顧客本位で国民の安定的資産形成に貢献せよ」尻を叩かれていた金融界中心に、日銀への反発が起きました。要は攻撃していた日銀自身の統計作成能力が疑われ、その主張の説得力が落ちてしまった訳です。
最近の厚労省の毎月勤労統計の問題も同様ですが、経済を理解する上で統計は不可欠です。しかし日本の実態は、厚労省に限らずお寒い限りです。ただこれは、普段は統計や統計学者・実務家を大切にせず、予算を削り人材育成を怠ってきた日本のあり方の、自然な帰結なのかもしれません。
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「普段は統計や統計学者・実務家を大切にせず、予算を削り人材育成を怠ってきた日本のあり方の。自然な帰結なのかもしれません」
以上を鑑みて・・
お役人を中国に派遣して・・バレない修復か偽造テクニックを習得させる時期が・
来ているのでは・?!・・・
( ^ω^)