2018/10/15 06:30 | by Konan | コメント(7)
Vol.6: ぐっちーvs.某経済紙
今月珍しく仕事が忙しく、ブログを書く時間が余り取れません。そこで箸休め的な話題を短く。
ぐっちーは良くブログやメルマガで日本を代表する某経済紙を批判します。ぐっちーと某経済紙どちらが正しいか?以前も本コーナーでも似たようなことを書いた記憶がありますが、改めてということで。結論は「ぐっちーの勝ち」ですが、なぜ某経済紙の記事があのようなものになるか、背景が説明できればと思います。
その前に注釈を。私が良く知る記者たちは大分偉くなり、彼らの話しは若い世代の記者にもはや当てはまらないかもしれません。ただ、最近の記事の内容を見る限り、以前と今と大きく変わっていない印象を受けるので、昔の知識のまま(裏を取らず)書いています。この点ご容赦ください。
某経済紙の方とは数多くお会いしてきました。皆さんとても優秀でやる気もあります。ただ海外の金融経済を取り上げるとなると話しは違ってきます。海外に派遣されるとしても3年間ほど。例外を除き英語も左程上手ではなく、「経験を積んで来い」という感じで海外に出されます。某経済紙に限らずマスコミの仕事の仕方の特性は「引継ぎをしない」ことです。社歴が古い日本の会社や官庁では、異動時に主な相手先を引き継ぐことが普通と思います。しかし、マスコミの世界は取材源が最大の財産なので、それを独占したいとの気持ちが働き、取材先が引継がれることは稀です。数年しかいない、英語も上手くない、取材先の引継ぎもない、そうした中ではいくら優秀でやる気があっても、出来ることに限りがあります。相手からみてもさほど大事にされないでしょう。某経済紙はFTを買収したので取材先から見た価値が上がりましたが、それでもFTそのものの記者と比べると差は歴然です。
そうした中で頼りになるのは「紙」です。IMFを始めとする国際機関、FRBなど中央銀行、各種シンクタンクは、多くの資料をホームページで公表してくれます。日本人は英語を読むことには長けているので、そうした資料を読むことで知識量も増え、記事を書く下地が出来ます。逆に言うと、個々の有力な取材源が不足する中、こうした資料で頭作りを行い、少量の取材で材料を足して記事を書くのが現実と思います。
こう考えると、論点はぐっちーと某経済紙の対決ではなく、ぐっちーとIMF等の何れが正しいかに帰着してきます。ぐっちーがインベストバンカーにとどまらず、言論人としても有名になったきっかけは、10年前リーマン危機を当て、またその後の米国経済の回復を当てたことです。IMFもFRBもリーマン危機を当てられず、ぐっちーに先んじて米国経済の力強い回復を見抜くことも出来ませんでした。あれだけ優秀なエコノミストを集めた集団がなぜぐっちーに勝てないのか?結局のところぐっちーのように何年も何年も雇用や住宅等のデータを丹念に見続けることがなく、バンカーとしての経験もない中で、マクロ的な分析に多くを依存していることがIMF等の限界なのだと思います。マクロ分析の大事さを否定はしません。しかし真実は細部に宿るということではないでしょうか。
過去10年間ぐっちーが勝ってきた訳ですが、次はどうか?某経済紙が最近書く世界的な債務の高まりは、IMFやBISなど国際機関が良く取り上げる話題です。下記のURLにIMFのLagarde専務理事のブログ記事(日本語訳)とBISチーフエコノミストの一人のShin氏のスピーチ(英語です)を載せます。いずれもシャドーバンクが危ない、債務の高まりが心配と主張しています。来月簡単に紹介したいと思いますが、先日IMFが公表した世界経済見通しも、貿易戦争激化等のリスクを正面から取り上げています。某経済紙の記事はこれに沿った王道の内容とも言えます。そして世の中「絶対」がない以上、IMFやBISの懸念が的中する可能性を全否定はできません。実際、世界の株価は先週大きく値を下げました。
ただ、IMFやBISにはリーマン危機を当てられなかった負い目があり、「羹に懲りて」的な心理状態にあります。次の危機を見逃したら組織の存亡に関わるからです。従ってリスク要因を確り指摘しておきたいはずです。
今の世界経済をみると、ぐっちーがメルマガで丹念に説明するように米国経済は盤石です。他方アルゼンチンとトルコはまずい状況です。この2点は確実な情報です。そうした中、地域的には中国、欧州、その他の新興国経済がどうなるかが論点です。中国経済は間違いなく減速しており、このため債務削減のペースが緩んでいるようです。また貿易戦争も中国経済にマイナスに違いありません。中国経済の減速は実体経済面では日本を含めアジア諸国中心に負の材料です。しかしこれが「危機」の引き金になるかと聞かれると、少なくとも当面は違うように思います。中国は貿易面での他国とのネットーワークは大きくなっていますが、金融面での世界とのリンケージは小さく、国際危機の引き金になる力はまだないと思えるからです。欧州は英国のEU離脱がありますし、経済面も政治面も冴えない状況が続くでしょうが、イタリアのユーロ離脱まで行きつかない限り、世界を揺るがすとは思えません。新興国は次は南アフリカが危ないと言われますが、他は持ちこたえています。
事前に将来を占う際、「景気後退」にとどまるか、「危機」まで発展していくか、その境目は微妙です。ただ、事後的に振り返ると、両者は意外と明瞭に判別できます。景気後退の影響は主に実体経済にとどまる一方、危機では金融システムが揺らぐからです。改めて世界を見渡すと、IMFやBISそして某経済紙が主張する不安材料があることは否定できませんが、米国経済は当面盤石、中国を始め成長率減速の可能性は相応にあるとしても、「危機」は遠いと考えて良いように思います。
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7 comments on “Vol.6: ぐっちーvs.某経済紙”
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Konanさんの新聞記者への釈明・・
分からないではありません。
ロンドンやニューヨークの特派員をした友人に言わせると・・
行って来いって言われ・・初めて着いた付いた処でも・・右や左も分からない処でも・・記事を送れと言われたら・ブンヤは記事を書かなきゃならねぇんだ。
すると・・知人の記者が特派員時代・地元の一流新聞記事を読みながら・・特派員電を送りまくったのも理解出来る。ネタは一流紙だから良い記事が書ける。それで重役にまでなった。
日本の新聞社は・・一度特派員を送り込んだら・少なくとも10年は島流しにする
掟は必要でしょう。10年居れば・・良い記者ならモノになるでしょう。
今からじゃ・・それも間に合わない。
対処療法としては・・ぐっちーのような人物に経済記事を書かせる・・度量が新聞社には必要だと思いますが・・そんな度胸は無いでしょう。
イエ―レン女史は・・利上げ絶対反対を先だってぶち上げていましたね。トランプ大統領は・・FRBを罵倒しましたが・・あれは馴れ合い漫才。知った上での見え透いたお芝居。そんなに利上げしたくにないのなら・・イエ―レン女史を議長のままにしておけばよかった。オバマの息がかかった人間は許せなかったのでしょう。
それとコメントには・・応じられた方がいいと思います。やっとJDが慣れてきた感がありますが・・コラムでは必要な気配りと思います・・・
( ^ω^)
先生・・内政干渉はよくありません・笑
各ブログそれぞれのペース・距離感で良いのではないでしょうか。(今後このブログを足掛かりに一儲け考えていらっしゃるのであれば話は別ですが・・編集長はそんなことを匂わせていましたが・・どこまで本気かは神のみぞ知る・・)
Konanさんには是非マイペースで無理のない範囲で、このコラムを継続して頂ければと思います。
それにほら・・先生はあまりにも精力的にコメント対応なさるから、神出鬼没な生霊さんに憑依されてしまわれているではありませんか・・
書き手と読者の距離感・・難しいですね。
JDさんは・・メールにはほぼ返信なさっているようですし・・不慣れなわけではないのだと思います。ただ不特定多数の読者を相手にするので万人受けする距離感・キャラというのがスタート時のJDさんだったのかなと思います。謙虚の塊のようなお人でしたが最近ではこの数年で蓄えてこられた自信を垣間見せるようになられたので、確かに・・変化の兆しを感じます。
本題に関係のないコメントを失礼致しました。
余計なお世話ですね。コメントにどう対応するかはその人の方針もあるし一概に言えないでしょう。返信する必要もないコメントも沢山ある。JDさんは読者のコメントや質問にまじめに対応していると思いますよ。
CRUさんにもJDさんにも相手にしてもらえないから拗ねてるのでしょうね。やっかみもあるのかな。返信が欲しいならそれに値するコメントを書くことも必要。まあ、がんばって。
言われてみれば・・そうだな。
crewとして見る癖がついてしまった。
編集の磯部さんからも・・JDを子分扱いにしているとも受け取れるとイエローカードを貰ったばかり。
子分なんて意識はセロだが・・戦友の意識はあるが・・
以後誤解を招かない様に・・用心いたします。
JD・・Konanさん・・失礼いたしました・!!
>>神出鬼没な生霊さんに憑依されて
お祓い受けてくるか・・か・知らないかな・?
皆さんお気遣いいただき、ありがとうございます。連載再開後、以前に比べ頻度が半減したにもかかわらず、まだペースが掴めないのが実情です。皆さんのコメントは確り読ませて頂いています。テーマに取り上げるなど、少しずつ工夫したいと思います。よろしくお願いします。
「これから専門家がAIに負けていく」
https://logmi.jp/business/articles/243425
>>言える話ですと、景気動向の予測をやっております。これは、内閣府が発表する景気動向の予測の3ヶ月前に、3ヶ月後の内閣府がどういう予測を発表するかを誤差0.4パーセントで当てるという予測ができております。
現在の楽天でこのレベルなら将来どうなるんでしょうね?
「これから専門家がAIに負けていく」
読みました。目から鱗・・的内容。
楽天頑張っているんだ・・ヤフー・アマゾンより・軽く見ていたが・・。
楽天でさえと言っては失礼だが・・これぐらい出来るのなら・FB等GAFAMは・・
神の位置にいるんじゃないか・?
神は人間だから・・天使の位置にいて・神さえ支配しかねない恐れがある。
悪魔になったルシフォーは天使長だった言い伝えは・・伝説ではなかった事に成りかねない・・・( ^ω^)