2013/10/21 09:00 | by Konan | コメント(5)
Vol.215: 秘密の話し
今回は嫌われることを覚悟で(笑)。最近の報道では、特定秘密保護法案への極めて批判的な記事が目につきます。報道機関の職業柄、この法案が成立すると大変まずいことは言うまでもありません。他方、私の職業柄、守りたい秘密が存在します。過去にマスコミに「抜かれて」大変悔しく苦しい思いをしたことも何度かあります。
国民の知る権利の根底には、国民主権の考え方があります。公務員は国民のため仕事を行うのであり、その仕事について国民が知り、コントロールを行おうとすることは至極当然と言い換えることもできます。この原理原則に関し、私も異論はありません。
他方、現実に知る権利・報道の自由を抑制するケースがあります。誘拐事件の事例です。被害者の安全を守るため、犯人を刺激せずに捜査を進められるよう、警察と報道機関が協定を結び報道を控えます。この慣行についての批判は殆どないと思います。
この他、知る権利との関係で最近話題なのはTPP交渉です。TPP交渉参加の際、参加国間で秘密守秘に関する協定が結ばれるため、TPP交渉の詳細を漏らすことは国際的な約束違反です。TPP反対派からすれば、秘密を暴き出し日本の信認を失墜させ、交渉から離脱させることも考えられるかもしれません。実際、マスコミはもとより国会議員などの間で「なぜ我々に教えないのか」と批判が強いことも事実です。
さて、特定秘密保護法案の焦点は、わが国の安全保障に関する事項です。例えば、わが国の安全を守るうえで不可欠な米軍の軍事作戦が事前に漏れてしまうと、敵国がその隙を突き、わが国の安全を脅かしてしまうケースが考えられます。また、最近アフリカで起きた事例とのアナロジーで言えば、例えば北朝鮮の要人の身柄を確保しようとする米軍の軍事行動が、事前に日本側から漏れてしまうケースも分かりやすい事例と思います。仮に公務員がこうした特定秘密を漏らした場合、懲役10年以下と極めて重い懲罰が科されます。それにとどまらず、女優の藤原紀香さんが批判されているように、取材側に対しても、その取材手法が脅迫や窃盗等卑劣な場合には、同様に重い刑罰が科されます。
知る権利と秘密保護のバランスは極めて難しい問題です。ひとつの観点として、誘拐のように人命にかかわるケースを除き、国内問題に閉じるような場合には、知る権利が優先されるべきと思います。他方、秘密に該当する事項が国家間にわたるケース(上記の例では米軍から得た情報のケース)で、秘密を漏らすことが、わが国の安全に加え国家間の信頼にまで深刻な障害を及ぼす場合には、秘密保護の必要性が高まるように思います。
このほか、法案では特定秘密の認定は行政機関の長が行うとされています。そして、秘密の期間は5年以内、30年までは行政機関の長の判断で期間の延長可、それを越える場合は内閣の判断とされています。この点に関し、特定秘密としての保護に値しない陳腐化した状態になっても、漏えいや取材に同様の罰則が科されることは避けるべきで、秘密の「旬」を拡大解釈しない仕組みや運用が必要と思います。枝野元官房長官が主張される「特定秘密に値するかどうか司法の判断を噛ますべき」との考え方も傾聴に値すると思います。
取材の自由を明記することで公明党が法案提出に賛成となったため、現在の国会情勢では法案が可決される可能性が極めて高いと思います。個人的にも、秘密を守ることが優先されるべきケースは皆無でない、との考え方を捨てることはできません。ただ、仕組みや運用には様々な工夫や自制が必要なことも確かと思います。
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5 comments on “Vol.215: 秘密の話し”
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ご了承のうえ、ご利用ください。
それが・・
大層・・難しい・・
記事も・・役所で・・ファイルされれば・・「秘」になる・・
役所勤めの友人・・
海外出張の際・・
市売雑誌・・息遣い荒く・・せつなく・・拝謁する・・アノ雑誌・・個人輸入・・
税関・・フリーパス・・
分厚い大型封書には・・極秘の判・・
確かに・・極秘情報には違いない・・
機密・・該当か・・と思える・・優れた情報もあった・!
これでも・・
秘密情報漏洩で・・捕まることもあるわけだ・・・(笑)
主筆のとこのコメント欄がアレ過ぎて、こちらは落ち着いて拝読すること
ができます。いいね。
「暴力装置」という言葉が、あります。
国家とは、社会の諸暴力を装置化するものである、という近代では意味で
したが
近代とはちがって現代ではそれらからさらに踏み込んで、社会の諸情報は
装置化されることが待たれている、という課題を抱えているわけだとわた
しはおもうのであります。
近代においても、市民は暴力を所有し行使する権利を有していました。
しかしながら逆説的にこれら諸暴力を装置化しなければ、市民が所有す
るいわば暴力権というべきものそのものを破壊してしまうことをわれわれ
は発見し、国家に暫定的であるにせよ預けたのであります。
そうでなければ、市民社会そのものが破壊されてしまうから。
そこで問われるのは、この暴力装置が正しく社会の諸暴力を装置化するこ
とが果たして出来ているのか否か? というだけなわけだ。そしてそれは
市民の合意に基づきさえあればいつでもそれらいわば暴力権というものを
市民の側に取り戻すことが出来、別のなにかにただちに預け替えることが
出来るよう手続きが設計されて果たしているのか否か? が問われるとい
うわけですだ。
でだ。
いわゆる「知る権利」も同様であり、社会のこれら諸「知る権利」が正し
く装置化されなければ、現在まさに進行をしている通り市民が本来所有す
るこの「知る権利」そのものを破壊してしまうわけだ。いわば米国で未だ
に銃の保有と使用が認められているのと、同じ状態なわけ。
「知る権利」を正しく預ける先、装置ですね、が無ければ逆説的に進行す
るのは管理社会であり疑心暗鬼に駆られた行政の側が市民の側を正しく信
頼出来無いままいわば過剰に性悪説に拠って社会の制度設計を行ってしま
う、、、民主主義そのものを破壊してしまう、ですね、、、米国におけま
す暴力についてのそれと同じ轍を踏んでしまう、だろーなーと。
経済思想については保守の側の立場にたつ私はそうー考える次第なのであ
ります。
もうすこし踏み込んで書いておきましょうか。
ですので、こういった法案の
議会での成立そして施行はいわばわれわれ人類が、暴力(という権利)を
装置化していった過程そのものをそのまま準るものでなければ、うまくい
くはずがなかろうと私は考えるのです。
端的に。
日本国においては戦後憲法への国民の「知る権利」明記、つまり加憲、で
すね、という担保とセットになってあわせもった法案提出そして議会での
成立に努力を傾けなければ、揉めるに決まってただろ我等が自由民主党、
とおもう次第なのであります。
海外事情と日本とで異なるように思います。
題名の事例のような方が気になるのですよね。 日本の場合は。 グッチーがかってオートパイロットと表現をしたような公務員、一般人は無茶はしないと思いますよ。 むしろ流動性不足のリーダー層、トップ層の失敗隠しに秘密保持が多用される傾向があることが気になる点が、欧米と異なりますね。 雌雄を決したと言われているミッドウェーの海戦敗北は新聞さえ自主秘密保持したように思います。 今回のみずほでトップ層の失敗がオープンになっても、内紛で表に、たまたまでたかんじで民間でさえ本来はトップの秘密は表にでないのでは?
どのような過去の事例がまずかったのでしょうか? 核の持込の件ですか?
日本の規範と大きくずれていると思われるとオートパイロットは日本の普通認知されている規範を優先するでしょうから、もともと無理がある事を秘密としようとした時に問題が発生をするという事ではないですか? 日本の場合は。 もっと公務員を信じるべきでしょうね。
CRUさんは平均的な公務員を代表されていると思いますが、法がなくても秘密は守るし、もし切腹を覚悟をする時は、国の帰結を制するようなトップの重大失敗隠しや政府答弁や憲法から明確に逸脱しているときだけでしょう?
鷹揚に多用な意見を受けて立つグッチー、論理的で学者的なCRUさん、我関せずせっせっせっせと稼がれるクロコダイルさんグッチポストに個性がでてきましたね。
あ、それと海外の秘密漏洩は政治家がうかつで気軽に話しておいて、責任を公務員に持ってくる”半沢対応”はありそうですから気をつけて。
日本版国家安全保障局創設は、米独だとかスノーデン氏の評価が定まってからでも遅くはないのでは? アメリカ側の体制が変化する事は充分に考えられるわけで、今のアメリカを真似した組織の創設は常識的に考えて無理があるでしょ?
消費税が竹下さんは上げないといったのに、結局、時間の経過とともに、5%だ8%だと上げますよね。 導入さえすれば後はどうともなるが、これまでの自民党のやり口でしょ。 秘密についても、だんだん、ご都合主義になりそう。
核の持込の裁判結果がよりどころになっているようですが、あの時、国民が毎日を潰すほどいかったのは、女性を食い物にした取材に対してで、それに裁判が反応をしたように思えますよ。 憲法違反を最高裁は承認したわけではないでしょう。
それにしても、クロコダイルさんは、シコシコともう今年は投資資本倍増ですよ。
5億円が10億円の勘定ですよね。 凄い、あやかりたい。
元本は秘密保持法、個人情報法に従い公開はされていませんが。