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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/09/30 09:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.212: アベノミクス再論


安倍政権の誕生や、異次元緩和を機に流行語となったアベノミクス。このコーナーでも一度その評価を試みたことがありました。アベノミクスそのものについては、引き続き様々な意見があるものの、選挙結果や世論調査を見る限り、国民の支持を一定程度集めているというのが、フェアな評価と思います。他方、その3つのパーツである金融緩和、財政出動、規制緩和については、「規制緩和は踏み込み不足」との評価が定番であり、また、「財政の信認も大事」との意見が多い一方、金融緩和については引き続き賛否両論に分かれているといったところでしょうか。

規制緩和についてはいつか触れるとして、今回は金融緩和、財政出動に関し少し書いてみたいと思います。

異次元緩和後の状況を振り返ると、株価はいったん暴騰した後、大きく下がり、その後は行ったり来たりの展開が続いています。円相場は、円安が進み1ドル100円を越えた後、90円台後半で上下しています。長期金利については、異次元緩和導入後1%に上昇し日銀が批判されましたが、こちらは現状は極めて落ち着いた推移です。要するに、かなり大きな上下の変動はあったが、結果的に株価14,000円台、円相場90円台後半、長期金利0.7%辺りに収れんしてきたといったところです。異次元緩和が市場に与えた初期効果は、これ以上でもこれ以下でもないという評価が公平と思います。

ぐっちーが時々指摘するように、異次元緩和がなくても(例えば白川総裁が今年1月に導入した政策のままであっても)結果は変わらなかったかもしれません。ただその検証も不可能なので、私は上記のようにあっさりと即物的な評価をしています。

そのうえで面白く思っているのは、こうした緩和について「時間を買うだけであり、第三の矢(=大胆な規制緩和)をサボる口実を与えてしまっている」と批判する声と、「衆参での安定多数実現に貢献した政策であり、そこで得た政治的資本(Political Capital)を使って今度こそ大胆な規制緩和に踏み込んでいけるのではないか」と肯定する声の双方が聞こえることです。前者は「追い込まれないと日本は改革できない」との立場、後者は「安定政権無くして改革はできない(追い込まれても、政権が不安定であれば改革はできない)」との立場と言い換えることも出来ます。かつて、55年体制の下で自民党が安定政権にあったころは、まさに前者、すなわち外圧なしで改革は起きないのが実態でした。また、「追い込まれ」しかし「政権は安定している」状況がもっとも改革を生みやすいとも思います。そのうえで、どちらかと言えば、後者の意見が正しいことに期待したいというのが今の気持ちです。

しかし、この点で不安なのは財政出動の実態です。政権誕生直後の大規模な財政出動の裏には、消費税引上げを是非とも実現したい財務省の思惑が明らかにありましたし、3年ぶりに政権に復帰した自民党が、支持基盤固めのため(当時で言えば、来る参議院選挙に必勝を期すため)実施したのが、実態と思います。アベノミクス嫌いなぐっちー(ただ、ぐっちーは安倍政権の全てを批判している訳でもなく、フェアにいろいろみているのだと思います)が、道路やダムの建設が再開され、本当に必要な震災復興に労働力が回ってこない実情を嘆いていますが、震災復興が遅れることにとどまらず、かつての日本や最近の中国で起きたように、使われない箱モノに大事な財政資金を投入していくことは、良いことではありません。更に言えば、地方の建設会社の経営者の方々も、本音では「今踊っていると、数年後の落ち込みが怖い」と思っていらっしゃるように感じます。

財政、あるいは国債の信認について様々な意見があることは、皆さんご存知の通りです(ぐっちーはこの点では最も楽観派に属し、藤巻さんが悲観派に属します)。ただ、仮にこの点で楽観派に近い立場をとったとしても、無駄使いはダメです。我が国の場合、少子高齢化に伴う人口減少が不可避で、とくに地方で事態は深刻です。そうして減っていく人口が引続き分散して住み続けることを前提に、それに合わせてインフラを分散して数多くつくることは、政治的に優しい政策ではあっても、経済的に正しい政策ではありません。この点で厳しい政策に踏み込むことが、改革の根幹と思います。政治的資本を得た自公政権が、今度こそこの点で変わっていけるのでしょうか。

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One comment on “Vol.212: アベノミクス再論
  1. ペルドン より
    さりとてアベノミクスチャ

    タランチュラに・・
    噛まれる・・
    死ぬまで・・踊り続ける・・
    解毒には・・
    この踊りをする以外ない・・
    そんな伝説がある・・

    背景・・
    死の舞踏あるが・・
    ハンチントン病もある・・
    紛らわしい・・

    何処で・・
    見分けるのだろう・・・?(笑)

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