2013/08/26 09:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.207: 日銀の2つの調査レポート
今回は、困ったときの日銀頼みではないですが、日銀ホームページに先月掲載された、2つの調査レポートを紹介します。1つは、「非製造業の海外進出と国内の雇用創出」というレポートで、桜健一さんと近藤崇史さんが筆者です。もう1つは、「対内直接投資の産業間スピルオーバー効果」というレポートで、岩崎雄斗さんが筆者です。
前者は以下の内容です。
「日本企業の海外進出の中で、これまで海外先進国対比出遅れてきた非製造業の海外進出がとくに活発化している。このような非製造業の海外進出が、日本国内の雇用にどのような影響を与えるかは、日本経済の見通しや成長力を考える際に重要な論点の一つである。」
「2000年代以降の上場企業の個票データを用いて分析を行うと、非製造業では、海外進出の度合いが高い企業ほど国内雇用の伸びが高いとの結果になる。とくに小売業、建設業や内需型のサービス業では、明確なプラス効果が検出された。こうした産業では、海外進出に伴い国内事業活動を縮小する必要がない一方、本社機能を強化する必要があるため、海外進出が国内雇用の創出に結びつきやすいと考えられる。」
「海外進出のプラス効果は、卸売業、運輸業でも検出された。これらの産業では、海外進出により自社の国際ネットワークが強化される結果、内外の需要獲得増加に貢献している可能性がある。」
「例外もあるが、全体としてみれば、非製造業の海外進出は、国内の雇用機会創出の観点から前向きに評価できる。」
後者は以下の内容です。
「わが国への対内直接投資は極めて低い水準であるが、先行き、対内直接投資が拡大した際に、わが国経済の成長・生産性に与える影響について明らかにすることは、わが国の経済成長を展望する上で重要である。海外を対象とした過去の実証分析をみると、外資系企業の参入自体に伴う直接効果や、直接投資が行われた企業から他の企業へのスピルオーバー効果について、国内経済の生産性に対してプラスとの報告が多くみられる。」
「わが国製造業企業を対象に、2000年代以降の企業データを用いて分析を行うと、外国資本比率の高まりは、投資を受けた企業の生産性を改善するだけでなく、製品の納入先など関連産業に属する他の企業にもプラスの影響を与えることが示唆された。具体的には、産業連関上の「川上」に位置する産業の外国資本比率が高まると、その「川下」に位置する製造業企業の生産性が統計的に有意に上昇することが明らかになった。」
「これらの結果は、生産性の高いグローバル企業の国内参入が、企業間の技術のスピルオーバー等のチャネルを通じて、わが国製造業全体の生産性向上に望ましい影響を与えてきた可能性を示唆している。」
以上です。日銀は、白川総裁の頃から「日本経済復活のためには、海外とのつながり強化が不可欠」との論陣で、総裁交代後も同じモティーフが維持されている印象です。いかがでしょうか?
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One comment on “Vol.207: 日銀の2つの調査レポート”
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無数の蜘蛛の糸も・・
捩れば・・
太いロープ・・命綱・・
その可能性・・示唆・・
総裁・・垂らす・・
太い・・太い・・ロープ・・
ロープの重みだけで・・切れる・・可能性・・示唆・・・
切れなくとも・・
揺れだけで・・手放す・・可能性・・示唆・・
なのか・・?
日銀レポート・・
乙女の恋文のように・・いつも・・デリケート・・・(笑)