2013/07/22 09:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.202: エジプト
参議院選挙が終わりました。その感想を書く方がタイムリーですが、今回は遅くまで選挙速報をみて何かを書く気力がなかったので、感想は次週に後回しし、エジプトの政変について簡単に触れようと思いました。このテーマ、とても深遠なもので、自分に書く力はないように思いましたが、少し前のFT(Financial Times)の記事なども参考にしつつ、書いてみます。「深遠」な理由は2つあります。ひとつはイスラムについての理解が難しいこと、もうひとつは、民主化・民主主義を根源から問う事象だからです。
FTの記事で印象的だったのは、
・本件を軍事クーデターと呼ぶか呼ばないか自体難しい。米国は軍事クーデターと呼んでいない
・「独裁」対「民主主義」という対立軸であれば理解しやすいが、「民主的に選ばれたイスラム主義的政権」と「それに反対する世俗主義的勢力」の対立軸の場合、どちらを応援すべきか悩ましい
・シリアの場合、当初は「アサド独裁」対「民衆」の構図と思われていたが、「民衆」サイドに過激なイスラム教徒が加わった結果、欧米の対応に迷いが生じている
といった点です。単純に言ってしまうと、欧米の価値観が「民主主義+キリスト教」であるとすると、「独裁+非キリスト教」に反対することは極めて明確だが、「民主主義+非キリスト教」の組み合わせになると、賛成か反対か立場を決められなくなってしまうという悩みの、正直な吐露と思いました。
更に言えば、今回は(また2年前も)、エジプトの軍部は自ら政権に入ることは考えていません。無論、軍隊による前大統領派デモの鎮圧とそれに伴う死傷者の発生という痛ましい事態は起きています。しかし、軍人が大統領になると、露骨な軍事独裁、軍事クーデターですが、エジプト軍はこの点で驚異的な自己規律を課しています。従って、軍事クーデターという呼び方は実際不適切かもしれません。
日本人は宗教に関し寛容ないし無関心なので、どちらかといえば、イスラム教であろうとなかろうと、今回倒された政権が選挙を経て樹立されたものであるならば、それを倒す動きは適切でないと考えがちと思いますし、私も本件の第一印象はそうでした(ちなみに、ある米国の番組では、前大統領は民主的に選ばれたが、その後の政治は非民主的だったと非難している人もいたので、前政権がどの程度民主的かという点には若干疑義があるのかもしれません)。欧米、とくに米国の場合、9.11の記憶も強く残る中、イスラムより非イスラム・世俗派を尊重したいとの気持ちに傾きやすく、結果的に今回の政権交代に強く反対しないとの構図と思いました。しかし、そのことは、民主主義という価値観より、自己の安全を優先する考え方となり、危険をはらむこともまた事実です。別途話題の元CIA職員スノーデン氏が暴露した諜報活動も、こうした危険の指摘と言えます。エジプトに即して言えば、もう一度選挙を行っても、イスラム主義的な候補者が優位に立つ可能性が低くありません。そうなると、またその何年か後に、同じことが繰り返されてしまう可能性もあります。そのことが適切とは思えません。
などとつらつらと書いてしまいましたが、エジプトの問題の難しさ、深遠さだけは伝わったとすれば幸いです。それに比べれば、参議院選挙は単純ということでしょうか。
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西洋・・キリスト教世界・・
教会の干渉・・排除・・
長い時間・・歴史・・必要だった・・
中東・・
埃及・・それを・・先頭で・・やっている・・
財政逼迫している以上・・
石油諸国に追随・・
日本も・・援助すれば・・オペラハウス建てる以上に・・
親日国・・
増やすのでは・・・?!