2013/05/27 09:00 | by Konan | コメント(0)
Vol.194: 相場
今回と次回は、最近のニュースで気になったことについて、とても簡単に触れたいと思います。今回は先週の相場急変、次回は横浜市の待機児童ゼロ宣言を取り上げます。
相場については、ぐっちーや前橋さんのブログ、メルマガ以上に何かを語る資格はありません。もっと言えば、異次元緩和導入以降、ぐっちーは「金利は上がる」「株価上昇は眉唾」といった趣旨の発信を行い、先週彼の正しさが証明された感もあり、一段とぐっちーへの信頼が増しているのではないかと思います。彼のように実際に商売をしたことがない私には、彼のような解説を行う力はありません。
そのうえで、長期金利について、黒田総裁は次のように説明します。
(1)長期金利は、実質期待成長率+期待インフレ率+リスクプレミアムで構成される。
(2)景気が回復し、物価上昇期待が強まれば、前の2つの項目が高まる、従って長期金利が上がることは自然。
(3)他方、日銀が大量に国債を買い入れることで、リスクプレミアムを抑え込むことができるし、日銀は全力でそれに取り組んでいる。
(4)したがって、金利が跳ね上がることはない。
考えてみると、デフレ脱却に成功すれば、経済や物価の実態に見合う金利水準が切り上がることはとても自然です。ところがそのことを余りに早くから織り込み始めると、まだ経済が良くなっていないのに、金利だけ先に上がってしまい、結局経済が良くなる芽を摘んでしまいます。このため、リスクプレミアムを潰すことで、何とか金利上昇幅を圧縮し、経済が良くなるまで金利が上がらないようにしたい、という説明と思います。
株価については、わが国の場合、ぐっちーのような少数派を除き、「円安=良いこと」との受け止め方が主流で、これを背景に上昇を続けてきました。更に言えば、ここ何年も日本に見向きもしなかった海外投資家の中でも、昔日本投資を行っていた人たちが日本のことを思い出すとか、あるいはこれまで日本に投資したことがなかった人たちが初めて試しに買ってみるといった、アベノミクスが世界的に有名になったことに伴う投資もあります。また、個人投資家などでこれまで含み損に苦しんでいた人たちは、ようやく含み損が解消し一息つき、「株はもうこりごり」という人も多いようですが、その2割ほとの人は新規投資に向かっているとの話しを聞くこともあります。ただ、仮に企業業績が真に改善しなければ、こうした株価上昇は砂上の楼閣ということになります。
朝日新聞で論説委員の原真人さんが書かれていたように、アベノミクスや異次元緩和は、期待への働きかけに重きを置いた政策です。期待が膨らめば実態もついてくるとの発想です。また、現時点では金融の異常なまでの緩和と補正予算でみせた財政ばら撒き以外、いわゆる「第三の矢」と呼ばれる政策の実態に欠けている状況です。さらに言えば、ぐっちーが疑うように、円安で本当に日本経済が良くなるかという問題もあります。現にこれまでの円高局面で海外進出済みの企業にとり、グループベースの収益を日本に還元する余地が増えたことは事実ながら、日本で雇用や投資を増やす方向に舵を切りなおすことは難しいとも言われます。そして、日本経済は日本だけで成り立つわけでなく、米国、欧州、中国の状況に大きく左右されます。
株式相場自体は、調整局面による地固めを行う方が良い面もあり、個人的に余り悲観視はしていません。ただ、期待に実態が伴ってくるかどうか、今後1年ほどが正念場であり、とくに来年4月、消費税引上げが実施されればその反動の懸念が、実施を見送れば国債市場暴落のリスクが顕在化しかねません。その意味で、楽観視し過ぎず、慎重に考えておく方がよいということでしょうか。
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