2013/06/17 09:00 | by Konan | コメント(1)
Vol.197: 選挙、そして憲法(その2)
前回のものに対するコメントには、考えさせられました。ありがとうございました。そのうえで、当初考えていた線に沿って、あと2回ほど憲法の話しを続けようと思います。今回は9条、次回はその他の条項について触れる予定です。さて、私も大学時代に憲法の講義を受けました。小林直樹先生と、樋口陽一先生の2人でしたが、小林直樹先生は、当時の社会党の理論的バックボーンの役割を担われていた、自衛隊違憲論者でした。正確に言えば、授業の際どこまで露骨に違憲と言われたか覚えていません。むしろその後、村山内閣発足時に社会党が自衛隊に関する党論の変更を迫られた際に先生が活躍され(「違憲合法論」で自衛隊を実質的に容認されたように思います)、大学時代を懐かしく思い出した記憶があります(この記憶が正しいかすら、あやふやになってきましたが。。。)。
憲法9条は以下の2項構成です。
第1項:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項:前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
自民党の有力者は、上記のうち第2項を削除すべきと主張しています。論拠は、以下の通りと思います。
(イ)どうみても自衛隊は軍隊であり、今更軍隊でないと言ってみても始まらない
(ロ)国連の平和維持活動等への貢献をより積極的に行うべきであり、そのためにも自衛隊を軍隊と言い切る方がすっきりする
また、集団的自衛権のような問題はむしろ第1項に関係してくるように思いますが、以下の主張もなされていると思います。
(ハ)少なくとも、日本が攻撃された際の自衛も認められないのはおかしく、その意味で第1項も明確化のための修正が必要である
(ニ)日本を守ってくれる米軍が攻撃された際、日本が助けることができないのもおかしいので、その余地も広げるべきである
他方、上記に対する反論は、論理的な反論というより、タイミング論のように聞こえます。すなわち、今や自衛隊の存在や役割を否定する人はほぼ皆無ですし、自衛や国際貢献の重要性を否定する人も同様にほぼ皆無と思います。ただし、反対論者はその範囲について「慎重に、狭く考えるべき」と考えており、その背景には、未だにアジア諸国の信認を真に勝ち得ていない状況の中で、憲法改正が誤ったメッセージを送ることにつながり、日本の国益にならないとの考え方があるように感じます。
私の気持ちは中途半端です。改憲派の理屈も理解するし、反対派の心配も分かるという心境です。綺麗ごとを言えば、外交によりアジア諸国の信認を勝ち得たうえで、憲法9条改正を行うとなりますが、恥ずかしいほどの綺麗ごとであるのは自覚します。
そのうえで、例えば村山談話を巡り、未だにそれを否定する発言が政府や政権政党の幹部から飛び出すような事態、あるいは橋下市長のように、自らの発言が外交上どのような悪影響を与えるか考えずに発言を行うような事態がなぜ続くのか、不思議に思えてなりません。また、そのような状況で憲法9条の改正を行うことは、外交上の大きなリスクを伴うように思います。国民一人一人の正直な感情を消すことはできません。戦後対応を日本よりはるかにうまく行ったと言われるドイツでも、ネオナチ的な動きが消える訳ではありません。ただ、ドイツの政権や主要政党の幹部がナチスドイツを肯定するような発言を行った事例は、ほぼ皆無でないかと思います(私が無知なだけかもしれませんが)。これは、恐らく、そうした仕事に就き、役割を担う人たちの中で、自分自身の本音はどうであれ、ナチスドイツは間違っていたと発言し続けるべきとの強い規律が共有されているからだと思います。橋下市長や以前の石原都知事のような地方公共団体の長が、こうした規律を持つべきグループに入るかどうかは微妙です。しかし、閣僚、官僚、そして政権党の(あるいは次の政権を担う覚悟がある党の)幹部は、しっかりと自己を規律し、村山談話と同じメッセージを発し続ける必要があると思います。
想像するに、憲法9条改正論者ほど、戦前の日本に肯定的でありたいとの心理状態にあると思います。しかし、皮肉なことですが、こうした人たちが「自己規律」の点で上記のような覚悟を固めることが出来るかどうかが、憲法9条改正を実現できるかどうかの分かれ目のようにも思います。
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One comment on “Vol.197: 選挙、そして憲法(その2)”
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苗字をかえつつ、満州侵出の参謀に始まり、3代も首相を出したのは凄い一族ですが、安部さんが”日本を取り戻す”という意味というか、彼の日本語を理解していますか? こういう日本語文法が判らない世代が増えているのに、英語なんかやっても、まともに英語を使えないでしょう。
どうもCRUさんの先生方は現憲法の基礎の基礎というか、戦前の憲法における国の所有者と、戦後の憲法における国の所有者の違いを理解されておられなかったようですね。 いきなり軍などの具体的な事にはいる前に、根本的な違いを学生に説明してくれないと。
自衛隊で感謝されているのは、福島などの緊急土木、安全ですからね。 米軍も補給について感謝していて、平和維持もその延長線上の話。