プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/06/10 09:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.196: 選挙、そして憲法(その1)


都議会選が今週告示され、参議院選も7月21日投票と言われています。圧倒的な安倍政権人気が続き、民主党の存在感が失われつつある中、「衆参のねじれが解消されるか(=自公で過半数を獲得できるか)」との点は、最早争点ですらなくなった印象です。これを越えて、改憲勢力が2/3以上を確保できるかどうかが、選挙の最大の争点のように思います。

改憲については、公明党が賛成のスタンスにないこと、世論調査でも改憲賛成の意見が今のところ劣勢であることが事情を難しくしています。自民が改憲について強い姿勢を維持し、長年続いた自公の共闘が崩れ、自民・みんな・維新の政権に組み変わるのか、さすがにそれは避け自民も改憲を前面に出さなくなるのか、あるいは公明が妥協するのか、不確実性が残る状況です。

このため、憲法が参議院選の明確な論点として浮上するかどうか、微妙なところです。また、憲法について下手なことを書くと、普段不人気なこのコーナーですら炎上リスクもあるので(笑)、慎重にならざるを得ません。ただ、永田町的には、改憲の可能性が初めて現実性を持ってきた点で、戦後最大の節目を迎えているように思います。振り返ると、55年体制下では護憲派の社会党が一定数を確保し、改憲は考えられない状況でした。55年体制崩壊後は、安定多数の形成が難しく衆参ねじれも常態化し、別の意味で改憲を考えられない状況が続きました。小泉自民が郵政選挙で2/3を取った後も、憲法改正は現実的な論点にはなりませんでした。その意味で、初めて改憲の可能性を意識しながらの選挙となるように思います。

改憲については「まず96条の改正から」との議論が最近の主流です。他方、新聞等を見ていると、もともと改憲派の人たちからも、「裏口入学のような邪道な選択」との批判が聞かれます。自民党関係者からは、改憲の最大の論点は憲法9条2項の廃止との声が出ており、96条改正邪道論者も、結局のところ正面から憲法9条改正論で戦うべきとの主張です。今回はこの96条改正に関する意見を記し、次回以降、9条をはじめとする他の条項についての意見を書こうと思います。

私は「まず96条を改正」との議論に反対ではありません。両院での2/3以上が60年に1度程度の頻度でしか生じ得ないことが現実と考えると、現行の96条の規定があまりに厳しい要件を課しているとみる方が自然です。他方、今回の選挙で例えば9条改正を直接国民に問うほど、国論は熟していません。その意味で、まずは手続き論からというのも頷けるところです。むしろ、手続き規定である96条を改正し、改憲が実際に起きるかもしれないとの切迫感を国民の間で共有したうえで、具体的な論点について議論を深めていくことが、適切なステップとも思います。

ところで、96条を改正する場合、「両院で2/3、国民の1/2」という要件をどこまで切り下げることが適切なのでしょうか?数年前の国民投票法制定時にも話題になった論点で、例えば公明党は「条項により2/3を維持すべき」といった主張をしています。私自身のこだわりを言えば、改憲をするのであれば、真に国民の賛成を得るべきと思います。「両院で過半数」でも良いが、「国民」に関しては、「(投票者のではなく)総有権者の過半数」とすべきではないかとの考えです(この考え方は国民投票法制定時に否定されたものですが)。

私は所謂「押し付け憲法論」の主張には組みしません。憲法制定時の実態は押し付けだったとしても、70年の間改正せずに我々の憲法であったものを、いまだに押し付けと呼ぶことは、この間の国民を馬鹿にした言い方にしか聞こえません。他方、今の憲法が完璧とも思いません。例えば、これまでこのコーナーで何度か書いたように、衆参二院制も考え直すべき時期に来ていると思います。その際、「両院2/3」のように余りに高いハードルを置くと、「どうせ改憲はあり得ない」と受け止められ、誰も真剣に憲法を考えません。このため国会レベルでのハードルは下げるべきです。しかし、実際に改憲を行うなら、国民の真の多数の賛成を得るべきとも考えます。これが上記の主張の理由です。

国民投票法はこれほど重要な法律であるにもかかわらず、当時は「成人年齢を18歳に下げるかどうか(私は賛成ですが)」という論点がクローズアップされ、「最低投票率設定の是非」等を巡る重要な議論について全く自分の記憶に残っておらず、インターネットで改めて経緯を調べ直しました。職業柄強い認識を持つべき私ですらこうなので、多くの方は余り意識されていないかもしれません。いずれにしても、次回も憲法の話しを続けたいと思います。

メルマガ「新・CRUのひとり言」を購読するためにはご登録のお手続きが必要です。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

2 comments on “Vol.196: 選挙、そして憲法(その1)
  1. ペルドン より
    憲法改正

    その前に・・
    どのように・・改正するか・・
    論議がない・・
    とすると・・
    やはり・・怖い・・おっかない・・

    阿部政権・・絶好の憲法改正チャンス・・衆産同時選挙・・潰した・・

    それは・・それで・・良いのでしょう・・・

  2. パードゥン より
    野党も自民党出身者だらけですから

     自民党的なる政治家の力が今は、強すぎるでしょう。 維新なんか、自民党より自民党的ですし。

     小平の住民投票が市長選挙より投票率が上がったにもかかわらず、市長は無視しましたね。 結果の公表さへ拒否。 市民、国民は弱い立場です。 この状況で、3権分立とはいえ、弱い立場の司法をさらに弱くすることになる憲法改正を容易にする案を、公を守るべきCRUさんから簡単に出てくるのは不安です。 成績のよかった人達は流されやすいので頑張ってください。 日銀へ直接関与をしなかったとはいえ、事実上は更送だか自ら引いてしまったようなことが最高裁でもおこりやすくなりますよ。 

     もっと、基本に立ち返って、条文が大切なのではなくて、改正結果に国民が従う気がするかどうかです。 2分1多数決で決定をされたことに不満であれば、人は従わないないでしょうね。 政府としては、その場合は権力、軍を持って従わせることになります。 トルコの市民状況をテロと言いますか? しかし法にしたがないのだからテロリストとして扱われるでしょうね。 今だに国連総長も出せない人材不足の政府が軍だけ強化しても、海上保安官の悲劇か、暴走満州を再びくりかえすだけ。

      

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。