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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/05/20 09:00  | by Konan |  コメント(2)

Vol.193: 北朝鮮


北朝鮮問題について何かを書くことは、とても難しいことです。情報が余りに乏しく、専門家と言われる人達の話しを聞いても、それがどこまで正しいのか、良く分かりません。例えば、金正恩第一書記がどこまで実権を掌握しているのか、どうしてミサイルや核実験などを用いた挑発・威嚇行為を繰り返すのか、あるいは米国、中国、韓国、ロシアの対北朝鮮戦略は何なのか、いろいろな解説がなされますが、なかなか腑に落ちません。ただ、飯島参与の訪朝などの話題もあるので、少し書いてみようと思いました。

個人的に最も不思議に思うのは、あれだけ国民の貧困のようなことが言われ、他方でインターネットの普及に伴い、情報の隔離やコントロールが難しくなる中で、どうして体制が崩壊せず、維持し続けていられるのかという点です。軍の組織が極めて強力で、かつ彼・彼女たちは相応の暮らしを認められていて、それを背景に一般国民の厳重な監視をし続けているということなのでしょうか。また、そのため軍の権威の発揚が時々必要で、その結果軍事的な挑発行為を繰り返すのでしょうか。

最近ある米国の番組を聞いていて、とても面白く思いました。脱北して現在米国に住んでいる元北朝鮮公務員女性のインタビューでした。彼女の仕事は、偽造品などを中国に持ち込み、それを売って外貨を稼ぐことでした。タバコや時計の偽造品に始まり、大量の北朝鮮産の麻薬を売り、そして最後は米ドルの偽造券を売りました。新品の100ドル札はさすがに怪しまれる訳ですが、中国側にもプロのブローカーがいて、100ドル札を30ドルくらいで買い取り、それが世界に流通して行くといった話でした。そして彼女が脱北した理由は、こうした行為に罪の意識を感じたからではなく、北朝鮮と中国の間の生活レベルの差に耐えられなくなったからということでした。国家としてこうした「涙ぐましい」努力を行い、何とか財政を支えているということなのでしょう。

ところで、以前このコーナーで、以下のように書いたことがありました(2012年5月Vol.141です)。

「なぜわが国が北朝鮮に関心を持つかと言えば、拉致問題を含め事が起きるとわが国の安全を直接脅かしかねないからと思います。ただ、忘れがちな論点は、仮に振り子が全く逆に振れた場合、すなわち北朝鮮がミャンマーのように民主化に舵を切る、あるいは旧東独のように崩壊し韓国に統合されるケースに、わが国がどう関わるかということかもしれません。日本は隣国として、あるいは植民地化という歴史の代償として、必ず貢献や負担を求められます。しかし日本経済の状況、あるいは拉致問題や竹島問題を巡る感情論を考えると、国論が容易にまとまるとも思えません。しかし、そうした点について想像を働かせ、予め考えておくことこそ外交の最重要課題であり、醍醐味のようにも感じます。」

上記の思いは今も同じです。ただ、1年前には気付かなかったのですが、北朝鮮体制が崩壊する場合、もうひとつの可能性として中国がその吸収を試みることも念頭に置く必要があるかもしれません。考えてみると、朝鮮戦争、そして朝鮮半島の南北分断は、当時の米国と中国・ソ連の覇権をかけた争いでした。そこまでして確保した北朝鮮を中国が簡単に手放すと考えることは、楽観的過ぎます。しかし、こう考えると、北朝鮮の崩壊は、中国と米韓の軍事衝突を意味します。これは極めて危険なことで、米国も中国もこれを避けたいことは間違いありません。結局のところ、北朝鮮の体制が崩壊せず続くことが、米国にとっても中国にとっても必要不可欠であり、だからこそ北朝鮮の体制は何十年も維持され、そして日本が拉致問題をいくら言っても、同盟国であるはずの米国にすら真剣に顧みてもらえない図式と理解することが、もっとも自然な解釈なのでしょうか。

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2 comments on “Vol.193: 北朝鮮
  1. ペルドン より

    大国・・
    でないとしても・・
    三十行・・
    片づけるにしては・・
    大きすぎる・・

    飯島参与・・
    に限れば・・
    成功でもあり・・不成功でもある・・

    リップサービスであっても・・
    中国参加・・
    三国包囲の最中・・

    頭痛の種・・
    難民洪水・・

    テレビ出演・・
    拙い演技・・大根・・揃った・・

    衆参同時選挙前・・
    一発・・大玉・・打ちあげ・・
    柳としても・・
    三文芝居にしても・・
    PR・・公私共々・・

    なるが・・
    米国・・当然・・御冠・・

    計りにかければ・・どちらが重いか・・?
    点額の重ね打ち・・

    それも・・
    いいか・・

    クレーの名手・・
    考える・・
    弾・・後ろから飛ぶ場合もある・・・(笑)

  2. 端株株主 より
    植民地化と併合は違う

    北部アイルランドは英国に併合されていますが、植民地とは言わないと思います。ノルウェーはかつてデンマークの支配下にあり、後にスウェーデンと連合王国となりました。朝鮮(と日本)は植民地化を避けるために日本への併合を選んだのであって、対等な結びつきで無かったのは間違いないとしても、多民族国家におけるマイノリティー差別とどれほど違うでしょうか。

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