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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/04/15 00:00  | by Konan |  コメント(1)

Vol.188: 選挙違憲‼


改めて私が書くまでもないテーマかもしれませんが、ご存じの通り、昨年の総選挙に関し違憲(違憲状態、違憲、更には無効)と断じる判決が相次ぎました。今回はこの点について感想を簡単に記そうと思います。

以前も一度書きましたが、大学時代に政治過程論を教えて頂いた京極純一先生は、選挙についてよく「頭を割ることから頭を数えることへの人類の進化」と話されていました。頭を割るとは文字通り戦争で相手の頭を叩き割ることで、一方で人類が洗練されて来たこと、他方で選挙はそもそも戦いであることの両面を示す言葉と受け止めました。また「ゲリマンダー」という言葉は、日本に限らずどこの国でも、選挙を有利に運ぶため選挙区割りを操作しようとする習性があることを示します。要は、選挙は人間の本性がむき出しになる「戦い」であるというのは、古今東西どこでも同じかもしれません。

そう言ってしまうと、「選挙が違憲だなんて硬いことは言わないで」という話しになりますが、日本の裁判所や憲法学者は伝統的に「少なくとも格差を2倍に抑えよ」と主張してきたように思います。安倍総理に示された0増5減案が「1.998倍」と極めて微妙な線をついているのは、こうした伝統的考え方に沿ったものと思います。

この「2倍」の根拠は何でしょうか?30年以上前の憲法の授業の記憶を辿ると、次のようなことと思います。まず「2倍が上限」については、「ある1人の人が他の2人以上と同じ価値を持つことは行き過ぎ」という考えから来ています。逆に「2倍未満なら格差があってもよい」については、完璧に各選挙区を公平に扱うことは人口の動きを考えると技術的に無理なことに加え、1票の重みが大きい地区は人口が相対的に減少していることを意味し、そうした「衰退地区」の声を相応に国政に反映させること自体は正義に反しない、という考えから来ています。私もこの2倍上限論に強い違和感がある訳ではありません。

ただ、0増5減案がすんなりと国会を通るかと言えば、かなり難航するように思います。思い起こすと、野田前総理が最も輝いた瞬間は、党首討論の際、当時の安倍総裁に対し「選挙改革を約束するなら解散しても良い」と迫り、安倍総裁が明らかに怯んだ時と思います。民主党は、自らが選挙に弱い地方の定数を削減するとともに、全国区も削ることで政治改革への強い意思をアピールし、選挙を有利に運ぼうとしています。民主党の反対が固いとなると、参議院での可決は覚束なくなります。

無論、維新やみんなの党などが0増5減案に賛成すれば良い訳です。ただ、こうした政党の主張の骨格は「抜本的な政治改革」「既得権益の打破」です。そのための道筋は、比例代表で選ばれるコンパクトな全国区を核とする方向に国政選挙の仕組みを変える一方、道州制導入を含め地方分権を徹底して進め、地方のことは地方に任せる方向のはずです。そうであるならば、0増5減に乗らないことが正攻法となります。

0増5減案については、すでに自民党側が「衆議院での再可決」をちらつかせており、また維新なども正攻法を取らず賛成する可能性もあるので、結局はこれで蹴りがつく可能性が大きいようにも思います。ただ、日銀総裁選びも終わり無風と思われた国会ですが、都議会議員選挙や参議院選挙が視野に入る中で、ここにきての相次ぐ違憲判決を受け緊迫度が少し高まったように感じます。

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One comment on “Vol.188: 選挙違憲‼
  1. ペルドン より
    一夫一妻

    が・・
    一夫二妻までなら・・
    男女平等・・
    憲法違反にならない・・

    と勘案すれば・・
    悩む・・悩む・・・

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