ご無沙汰しております。あっという間に11月、今年も残すところ2ヶ月を切ってしまいました。

　この時期は世界各地、秋の音楽シーズンの真っ只中で、現在、日本でも11月4日まで公演を行っていたウィーン国立歌劇場をはじめ、内外の演奏家によるコンサートが毎日各地で行われています。
　そんな中、世界有数の音楽都市であるニューヨークの現状は気になるところです。
　ぐっちーさんも触れていましたが、ニューヨークはハリケーンの影響でかなり大変な状況です。皆様もニュースで、マンハッタンで高層マンション建設工事中のクレーンが折れ曲がって危険な状態になっている映像をご覧になったのではないでしょうか。実は、あれは57丁目にあるカーネギー・ホールの近く。付近は通行もできず、カーネギー・ホールでの公演も中止・延期となっています。カーネギーで公演予定だった名ピアニスト、マレイ・ペライアの公演は、「カーネギー・ホール・プレゼンツ」として、リンカーン・センターのエイヴリー・フィッシャーホールで11月4日に行われたようです。現地の方々が、早く「日常」を取り戻されるよう、心より祈っております。

　さて、秋の音楽シーズンが終ると、日本のクラシック界は年末の「第九」のシーズンに突入、さらに新年カウントダウンの音楽会が催され、年明けにはニューイヤー・コンサート、という流れがすっかり定着してきています。
　1月のニューイヤー・コンサートといえば、正月恒例のウィーン・フィルのコンサートに倣って、ウィンナ・ワルツやオペレッタの名曲などシュトラウス・ファミリーの作品を中心に演奏するのが一般的なスタイル。ただし、本家ウィーン・フィル／ウィーン国立歌劇場管弦楽団は、この時期ウィーンを離れませんから、日本では国内のオーケストラに加え、さまざまに編成されたウィーン風のオーケストラが毎年数々来日して、華やかなコンサートを繰り広げています。
　中には、音楽学生らしき人も含めた「寄せ集め」のオーケストラが、いかにもウィーン風の名前をつけてツアーを行っていたこともあり、演奏会のチョイスにはある程度の「鑑識眼」が必要かもしれません。

　ゆったりしたお正月気分のなかで聴く、ヨハン・シュトラウスをはじめとするウィーンの音楽は、聴く人をとても優雅な気分にさせ、束の間の「非日常」を楽しませてくれます。このウィーンの音楽、特にウィンナ・ワルツは、日本など他国のオーケストラの演奏では、いまひとつしっくり来ない、という経験をお持ちの方も多いようです。ウィンナ・ワルツのリズム独特の「訛り」のようなもの、ウィーンの歌心は、ウィーン人のDNAに深く刻まれたものなのでしょう。だからこそ、「本場もの」を求めて、聴衆はウィーン風の団体名に惹かれてチケットを買ってしまうのかも……
　その点、ぐっちーさんも注目しているという「ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団」は、知名度はそれほど高くないかもしれませんが、正真正銘のウィーンの音楽を聴かせるオーケストラです。よいチョイスですね。
　ウィンナ・ワルツと言えば舞踏会。日本にはあまりその習慣がありませんが、ウィーンでは毎冬のシーズンに300以上の舞踏会が行われているそうです。その中でも、ウィーン国立歌劇場で行われるオペラ舞踏会（Opernball）には6000人もの紳士淑女が集まり、最も由緒正しい舞踏会として知られています。ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団は、その舞踏会で毎年演奏を担当するオーケストラですから、本場のウィンナ・ワルツを聴くには、これ以上の団体はない、といっても過言ではありません。さらに、ウィーンのオペレッタの殿堂、フォルクスオーパーで名唱を聴かせる歌手がうたい、劇場付きのバレエ団員が優雅に舞い、ホールはウィーンの香りで満たされることでしょう。
　次回は、この演奏会の聴きどころ、見どころなどを、もう少し詳しくご紹介します。