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2018/09/23 05:11  | 来日公演 |  コメント(0)

ウィーンの伝統を担うシュトイデ弦楽四重奏団、10月に来日


 長らくご無沙汰して失礼いたしました。

 音楽のハード、ソフトメーカーの積極的な動きにより、「ハイレゾ」という言葉がすっかり定着した感のある今日この頃ですが、前回の執筆後、その動向を見極めようとするなかで、ブルーレイ・オーディオは当初の勢いを失い、このところは新しい技術であるMQAが注目されるなど、オーディオ/ハイレゾ界は変化を続けています。
 読者の方々にはご期待を寄せていただいたにもかかわらず、充分な情報をお届けできず、申し訳なく思っております。ハイレゾにつきましては、機会をみて改めて情報をお伝えしようと思います。

 今回、注目するのは、10月に来日する、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団第1コンサートマスターが率いるシュトイデ弦楽四重奏団です。
 ニューイヤー・コンサートでもおなじみのウィーン・フィルは、日本でも相変らず人気の高いオーケストラですが、その魅力として語られることのひとつに、「ウィーンならではの響き」を挙げることができるでしょう。団員の国籍も以前よりはるかに多様になった現在でも、とくにウィーンに縁の深い作曲家の作品で聴かせる演奏には、このオーケストラ独特の魅力があります。
 ウィーン・フィルが、団員の自主運営によるオーケストラで、楽団長の選出や指揮者の選定まで団員が行っているのはよく知られています。さらに、新入団員からコンサートマスターの選出まで、これも団員を中心としたオーディションで決定されますので、自ずとオーケストラの音楽の方向性に沿った音楽家が集まることになります。
 そして団員たちは、シーズンともなれば連夜、ウィーン国立歌劇場で行われるオペラ、週末のオーケストラ公演で伝統の響きを体に染み込ませていきます。
 さらに、その音楽性とアンサンブルが磨かれるのが、団員同士による室内楽だとも言われてきました。弦楽器、管楽器ともにさまざまな室内楽団体が存在するウィーン・フィルのなかでも、歴代のコンサートマスターが率いる弦楽四重奏団は、常に注目され、その期待に応えてきたと言えるでしょう。古くは19世紀、ブラームスやマーラーの時代にコンサートマスターを務めたロゼの弦楽四重奏団、20世紀にはシュナイダーハン、バリリ、ヴェラーなどメジャー・レーベルの録音でもおなじみの弦楽四重奏団がよく知られており、近年ではキュッヒルやヒンクのグループが活躍しています。

 このような長い伝統を継承する、新たな四重奏団の誕生が期待されるなか、21世紀に登場したのが、2002年結成のシュトイデ弦楽四重奏団です。メンバー全員が1970年代生れの、ウィーン・フィルの中核を担う団員で構成されています。この団体を率いるフォルクハルト・シュトイデは1971年生れ、1994年にウィーン・フィルのコンサートマスターに就任し、現在も第1コンサートマスターを務めるウィーン・フィルの顔。オーケストラやオペラの来日公演ではもちろん、ソリストやゲスト・コンサートマスターとしても日本を訪れていますが、本年10月17日、弦楽四重奏団としては4年ぶりの来日を果たします。

 2014年に浜離宮朝日ホールで行われた公演は、この年の屈指の公演と新聞紙上で絶賛され、その演奏を収めたライヴ録音CDは、『レコード芸術』誌で特選盤に選ばれています。中村孝義氏による批評では、収録されているベートーヴェンの「セリオーソ」とシューベルトの「死と乙女」について、「たっぷりとした豊かな響きや美しいカンタービレという伝統をしっかり身にまといながら、それに安住することなく、核心に踏み込んでいく潔さが感じられ、両曲の質を的確に捉えている」と記されています。
 今回演奏されるのも、ハイドン、ベートーヴェン、シューベルトと、ウィーンに縁の深い作曲家の作品で、シューベルトは精妙かつ歌心にあふれる「死と乙女」を再度聴くことができます。
 鋭角的な演奏が多くなった昨今、ウィーンの伝統を継承し、その力を現代に生き生きと示すシュトイデ弦楽四重奏団の王道を行く説得力のある演奏が、大きな感動を与えてくれることを期待しています。この秋、最も注目される室内楽公演のひとつです。

  

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