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2024/05/13 06:30  | メルマガ |  コメント(3)

第246号 米国経済に減速の気配?!、市場の焦点はインフレデータに


為替がジェットコースターのように変動したGW明けの1週間でした。話題は少なく、また翌週に注目イベントを控え、比較的落ち着いた1週間でした。

というわけで、今週の予定を視野に入れながらお届けします。

それでは、今週のアウトラインです。

●先週のマーケット
・マイナス続く実質賃金
●今週の米国経済統計(予想)
●先週の米国経済統計(結果)
●経済統計分析

1. 新規失業保険申請件数
2. ミシガンサーベイ 5月
3. 米国はスタグフレーション?!
●あとがき

それでは、さっそくまいりましょう。

●あとがき

先週の外国為替市場は、急激な円相場の動きを受けて為替介入があった前週から打って変わって、静かな動きの一週間となりました。

市場には介入警戒感が残っていますが、米国のイエレン財務官からは、「こうした介入はまれであるべきで、協議が行われることが期待される」と、こちらからも介入警戒ともとれる発言があったことが報じられています。イエレン財務長官が日本の為替円買い介入に否定的な理由の一つは、ドル安になると米国インフレを助長してしまう恐れがあるからで、ドル安を容認したくないからでしょう。

とはいえ、週間で見ると、ドル円は週初には152円台にありましたが、週末には155円台へとジワジワ円安に進んでいます。介入前には一時160円に達していたことを考えると、介入効果はあったものの再度円安が進んでいます。背景には、輸入企業による実需の円売りや、投機筋による円売りもあるのでしょうが、個人の海外投資による円売りも想定されます。4月は1兆円程度の資金が外国投信の購入に流れたと言われており、恒常的に生じる「NISA円安」とも言われる円安圧力が生まれたのは明らかでしょう。

そんな状況ですから、来週の米CPIに鈍化がみられないと、米金利は高止まりし、匍匐前進的にドル円が160円に向け再び動くとすれば、それでもまた介入するのかは疑問、イエレンも怒っていますし。日本としては自らの政策で円安を止めるには限界があるので、円高ドル安の動きが米国発で強まるのを粘り強く待つしかないという状況に陥っていますね。まずは今週のインフレデータに祈りを。

とはいえ、先週財務省が3月国際収支状況(速報)を公表し、インバウンド消費は年率換算8兆円弱ペースであることが明らかになっており、コロナ前は考えたことないペースで、これは一応円高要因。最近は、銀座の中央通りでは日本語を耳にすることの方が少ないですし、青山・六本木・麻布なども海外からの旅行者が圧倒的に目につきます。

先日も、株主優待券があったので、最近銀座にできた某回転すしチェーンに視察もかねて行ってきたのですが(桐谷さんではない(笑))・・・。そこは、もはや寿司屋ではなく、雑なご飯の塊にネタが重ねてあるだけ・・・という悲惨な光景が展開されていて、寿司を食べているというより、寿司の雰囲気を安価にエンタメ感覚で楽しむ、と言った心構えでないとやり切れない。カジュアルな外国人旅行者を相手にしている限りでは、これでも喜ばれるのか・・と愕然としました。

物価高と円安で、日本のサービスや食文化のクオリティが足元で変化しているのを感じます。飲食店も営利企業ですから、金払いは悪いが口が肥えた日本人より、内容はともかく金払いのいい外国人を相手にした方が合理的だ、と思えば、こうした変化はますます進んでいくでしょう。これが、日本が目指す観光立国の姿なのでしょうか。

そして、このGW中に、能登半島にも災害ボランティアがのべ1万人以上参加されたとか。しかし、参加者からは「4カ月たっているのに、想像以上に手つかずだった」など、落胆と懸念を示す感想も相次いでおり、特にベテランのボランティアの方々はかねてから、手が足りていないことを指摘していましたから、今更5日は過去最多の1328人参加、などと喜んでいる場合でもないような気もします。

令和6年(2024年)能登半島地震に係る災害義援金の受付について

今週も、ここまでお読みくださいましてありがとうございました。皆様よい1週間をお過ごしください。

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3 comments on “第246号 米国経済に減速の気配?!、市場の焦点はインフレデータに
  1. たな より
    日銀が共通事業所結果を重視する理由

    毎月勤労統計の本系列(現金給与総額 前年比+0.6%)と共通事業所調査(現金給与総額 前年比+2.2%)の違いについて、下記厚生労働省の資料によると、共通事業所調査は本系列と比べ、サンプル数が少ないために偏りが生じ、従業員数の多い事業所から継続的な回答が得られるため、給与がより高めに出る可能性がある、と指摘されています。
    つまり、本系列の方が日本全体の姿をうまく反映している(偏りが小さい)ということになり、この点は日銀も認識していると思うのですが、日銀が共通事業所の調査結果を重視する理由がよくわかりません。
    給与の伸びを実態よりもよく見せたい、または大企業の給与が上がればその後中小企業の給与も上がるはずだから本系列は軽視している、といった考えが根底にあるのでしょうか?

    https://www.mhlw.go.jp/content/10701000/000490447.pdf

    https://www.soumu.go.jp/main_content/000636435.pdf

    https://www.mhlw.go.jp/content/10701000/000482335.pdf

    https://www.soumu.go.jp/main_content/000576510.pdf

  2. Salt より
    たなさん

    いつも有難うございます。

    お返事遅くなりました。

    おっしゃるように、共通事業所調査は前年同月分、当月分をともに集計対象にしていることで、自ずとサンプルとなる集計事業所数が少なくなったり、新設事業所の取り込みが遅れるなどの弱点も存在するため、必ずしも労働市場全体の賃金動向を表しているとはいえないといえます。また、データが2016年からしか存在しないことや、季節調整値がないため異なる月同士の比較が難しい、といった問題もあります。

    一方で、共通事業所調査は、調査対象事業所の入れ替えなどによって,賃金や労働時間に段差が生じ、賃金の基調判断の支障をきたすといった問題を排除できます。つまり、賃金変動の実勢の把握には有利であるといえます。現在、日銀は賃金上昇に注目する中で、実際に賃金が上がっているのかといった変化に注目していると思われ、その基調判断の上で共通事業所調査に注目していると思われます。

    ちなみに、日銀が共通事業所調査を重視しているのかは、実は定かではありません。ただし、日銀の資料では度々共通事業所調査が登場していることから重視していることがうかがえます。かといって、本系列は軽視しているということではないと思いますが、今は賃金の変化により注目しているということなのでしょう。

  3. たな より
    Re:日銀が共通事業所調査を重視する理由

    ご返信遅れ申し訳ありません。

    それぞれの調査方法の利点欠点が理解でき、大変勉強になりました。
    以下資料からも日銀が共通事業所ベースを参考にしていることが読み取れましたし、他の資料には春闘の結果と共通事業所ベースの相関性が高そうなことも書かれていましたが、統計の性質が異なる以上は両方を追っていくことが大切なのかなと感じました。
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000576509.pdf

    これらのことはSaltさんのメルマガに触れていなければ知る機会もなかったと思います。今後のメルマガも楽しみにしています。

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