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2021/05/28 18:30  | 政局 |  コメント(0)

二階 vs. 3A(麻生・安倍・甘利)


前回の記事でお伝えしたように、2019年の参院選の際に自民党本部から河井案里候補に支給された1億5千万円を誰が決裁したのかについて、党幹部から不可解な発言が相次ぎました。

・「1億5千万円を決裁したのは誰か?」(5/21)

二階俊博幹事長が「私は関与していない」と言えば、志帥会の番頭でもある林幹雄幹事長代理が「当時の選対委員長が広島を担当していた」とアシスト。一方、決裁責任者だったと暗にほのめかされた甘利明氏は、「1ミクロンも関わっていない。知らない以前に党から給付された事実を知らない」と全面否定しました。

本件については、その後、二階幹事長が「(責任者は)総裁と幹事長」と前言を翻す発言をし、一応の収束を見ました。しかし、この一連の動きの中には「政治ゴロ」的に興味深い出来事がたくさんありました。その点を含め、最新の動きをお伝えします。

●3Aの結束

二階氏、林氏、甘利氏の応酬の数日前に注目すべき動きがありました。それは、甘利明氏を会長、安倍晋三前総理と麻生太郎財務大臣を最高顧問として「半導体戦略推進議員連盟」の設立総会が開かれたことです。

自民、半導体産業再興へ議連 最高顧問に安倍、麻生氏(5/21付時事通信)

この議連は、国際的なプレゼンスを失って久しい日本の半導体産業の再興を目指すのが目的とされています。しかし、額面通りに受け取る人は永田町にはいません。真の目的は、菅内閣の発足以降、ますます存在感を高めている二階幹事長への牽制と考えられています。

実際、麻生元総理は冒頭の挨拶で「3人揃えば政局って顔だが、間違いなく半導体の話をしに来た」と言い放ちました。政局にしたい気持ちが隠し切れない様子で、語るに落ちた感があります。

麻生・安倍・甘利の3氏は、そのイニシャルから、ポスト菅に影響力を与える「3A」と呼ばれています。3Aのそれぞれの動向を見ていきましょう。

まず麻生氏は、第2次安倍内閣の発足以降、一貫して安倍氏を支えることで「キングメーカー」としての地位を確立しました。今後もできるだけ長くその立場を維持することを望んでいると見られています。1979年の初当選から数えて現在13期目。次の衆院選は81歳で迎えますが、まだまだ派閥を次世代に譲るつもりも、政界を引退する気もないようです。

菅内閣でも引き続き財務大臣を拝命しましたが、麻生氏は菅義偉総理とは以前からやや距離があると言われています。菅総理に対しては、二階幹事長の方がはるかに大きい影響力を持っているのです。そのため、麻生氏の言動を見ていると、面白くないと感じている様子が見てとれます。

次に安倍前総理は、先月から活発に動き始めました。前述の半導体議連と「原発リプレース議連」という2つの新たに設立された議連に顧問として参加し、テレビ出演や紙媒体からの取材、インターネット番組など精力的にこなしています。あまりに元気に活動しているので、3度目の総理を狙っているという憶測までまことしやかにささやかれるくらいです(以下の記事参照)。

・「自民党の候補者調整 ~ 派閥の代理戦争 ~ (7)志帥会 vs. 宏池会 その2(山口3区)前編」(5/7)

自民党の若手のホープ2人(平将明氏と木原誠二氏)がホストを務める番組では、安倍氏は非常にリラックスした様子で、総理在任時の秘話を嬉々として披露していました。その姿からは「まだまだ行けるぞ」という思いがのぞいているようにも感じられます。

■ 「安倍晋三 前内閣総理大臣 登場!任期中にあった出来事をお伺いしました」(4/27付『平・木原の地上波いらず 名前の順序は(仮)』)

最後は、3Aのしんがり・甘利氏です。キングメーカーでも、総理でもなく、幹事長を狙っていると言われています。

つまり、林幹事長代理が「選対委員長が広島を担当」と発言した裏にあるのは、「甘利よ、オレの親分(二階氏)を追い落とそうとするなんてふざけるな」という思いなのです。二階氏が幹事長でなくなったら、林氏も幹事長代理ではいられなくなり、力のある役職には就ける可能性は低くなってしまいます。このため、親分に代わって甘利氏にパンチをかましたのでしょう。

●「キッシー、動きます」・・・とはならなかった

半導体議連の設立総会には60人ほどもの議員が出席していましたが、その中には岸田文雄氏もいました。

岸田氏は、長らくポスト安倍の大本命だったにもかかわらず、前回の総裁選では安倍・麻生両氏の支持を得ることができず、菅氏に大きく水をあけられてしまいました。捲土重来を期すには、何をおいてもこの2人の支持が不可欠です。

その意味において、岸田氏の議連への出席自体が政局になり得る可能性がありました。そればかりか、その数日後、先に紹介した二階・林発言が飛び出す前日、岸田氏は広島県連を代表して党本部を訪れ、幹事長に提言書を手渡していたのです。

提言では、金銭問題で離党した議員に対して党が説明責任を果たさせることや、有罪が確定して当選無効となった議員の歳費返還を可能にする歳費法改正を求めていました。案里氏に給付された1億5千万円のことには触れられていません。

ところが岸田氏は、幹事長との面会後記者に囲まれた際に、「1億5千万円の使途について明らかにされるべき」と述べました。その間の悪さやズレているとしか思えないセンスのなさは前回お伝えしたとおりです。

しかし、たまたまその前の週に半導体議連の立ち上げがありました。3Aが何かを企んでいるかのような発言をし、続いて岸田氏が火をつけるような動きをする・・・「まさか、仕掛けて来たのか!?」とマスコミは色めき立ちました。

岸田氏は、安倍前総理からの禅譲をじっと待ち、昨年9月の総裁選までは一度も総裁選に出ようとしませんでした。ずっと受け身の姿勢を貫いて来たのです。その岸田氏が、自ら仕掛けて政局を作ろうとしているのあれば、これは間違いなく大事件です。

●安倍前総理に飛び火

しかし、その後は動きを活発化させるどころか、おとなしくなってしまいました。どうも岸田氏には何らか意図があったわけではなく、広島県連に頼まれて、たまたまその日に党本部に提言書を持参しただけだったようです。

結局、1億5千万円の決裁問題については、二階氏が「(決裁をした責任者は)総裁および幹事長だ」と述べて一段落です。

二階氏「(責任者は)総裁と幹事長」 1億5千万円問題(5/24付朝日新聞)

それにしても、二階氏は「責任は自分にある」と言いながら、決裁それ自体については何も言っていません。二階氏はこれまで何度も難局に直面していますが、いつもこのように「何か言っているようで、何も言っていない。でも、それ以上突っ込めない」回答をすることで乗り切ってきました。このあたりの危機対応能力はさすがです。

また、一見すると、自分の責任であると認めているかのような発言ですが、「総裁および幹事長」と総裁の名を出すことで、総裁にボールを投げています。自分だけの責任ではない、総裁も関与しているとほのめかしているのです。

結果的に、岸田氏がつけた火が総裁(安倍前総理)に飛び火した形となってしまいました。政局勘がないことを露呈してしまったのは痛いですね。

少しネタバレになりますが、山口3区では、志帥会と宏池会の戦いが始まろうとしています(以下の記事参照)。

・「自民党の候補者調整 〜 派閥の代理戦争 〜(8)志帥会 vs. 宏池会 その2(山口3区)中編」(5/14)

しかし、宏池会の領袖たるキッシーがこんなことでは、志帥会を率いる百戦錬磨の二階氏と渡り合えるのか、大変不安です。

次回は、いよいよ大団円を迎える山口3区後編をお届けします。岸信夫氏の参院からの鞍替えによって、山口県は4つの小選挙区すべてが自民党の現職議員で埋まり、空きがなくなってしまいました。総理を目指すためにどうしても衆院に移りたい林氏はどうするのか。どうぞお楽しみに。

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