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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2019/05/20 06:30  | by Konan |  コメント(1)

Vol.20: 日銀の金融システムレポートと金融庁の方針転換


今回は、公表からかなり時間が経ちましたが、日本の金融システムに関し2つ紹介します。ひとつは旧CRUのひとり言時代から公表の都度必ず取り上げてきた日銀の金融システムレポート。この4月17日公表です。もうひとつは、金融庁が4月3日に意見募集を始めた「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の一部改正(案)」です。金融システムレポート(概要)と前回このレポートを紹介した際のURLを下の方に載せておきます。後者は金融機関に勤務される読者以外の方には耳慣れない言葉と思います。単純に言えば、金融庁が地域金融機関を監督する際の目線、着眼点、考え方などをまとめた詳細な(結構長い)文書です。その最も根幹とも思われる部分が改正されようとしています。

今回の金融システムレポートは、当日夜7時のNHKニュースを含め報道でも結構取り上げられました。「銀行の不動産業向け貸出はなお高めの伸びを示しており、その対GDP比率は、トレンドからの乖離幅がバブル期以来の水準となっている」「不動産業向け貸出の対GDP比率は、1990年末以来はじめて、過熱を示す「赤」(注:金融循環上の過熱感や停滞感の有無を点検するヒートマップ上、停滞が「青」、過熱が「赤」、中間が「緑」とされます)へと転化した」との表現がとてもキャッチーだったことが背景です。日銀は、ヒートマップの他の13指標は「緑」となっていて、金融経済活動全体としてみれば、バブル期のような行き過ぎた動きに至っていないと判断しています。また不動産市場についても、バブル期のような過度に楽観的な成長期待に基づく過熱状態にあるとは考えにくい、としています。ただ、不動産業向け貸出を貸し手別にみると、自己資本比率が低い地域金融機関の方が不動産業向け貸出比率を高めているとも指摘しています。またその借り手に中小企業や個人が多く、地価下落等万一の場合、借り手がその損失を吸収できない可能性も指摘しています。要は「まだ大丈夫だが、先々の人口や世帯数の減少から空室増加・賃料下落・地価下落が起きると、借り手が耐えられず、それを支える金融機関も自己資本比率が相対的に低いので、持ち堪えられなくなる可能性に注意しないといけない」というメッセージになります。

また、今回のレポートでも、地域金融機関の収益性の低下を指摘します。今回は同じ低金利問題に苦しむ欧州と比較し、「欧州よりもひどい」とします。理由は、欧州では資金運用利回りとともに調達利回りも低下したので何とか利鞘を稼げているが、日本は調達利回りが殆ど低下せず、預貸業務の収益性低下が目立つからです。そして、「リスクアセット拡大に見合った収益を確保できておらず、自己資本比率、ストレス耐性は緩やかに低下している」「こうした状況が長引くと、ストレス時の信用コストや有価証券関連損失に伴う自己資本の下振れが大きくなる結果、金融面から実体経済への下押し圧力が強まる可能性がある」と判断します。分かり難い表現ですが、単純に言えば「今は何とかなっているが、このままの傾向が続き、かつ景気悪化が重なると、金融機関の体力が低下し貸出余力が無くなるので、借り手である企業や個人に悪影響が及び、景気悪化が加速してしまう」蓋然性を指摘している訳です。

さて、こうした地域金融機関の経営環境悪化の下、金融庁が監督指針改正案を公表しました。URLを載せておきます。テクニカルな文書で分かり難いと思いますが、概ね以下のとおりです。

・これまで金融庁は、自己資本比率が最低基準を割り込む場合などに業務改善命令等の形で介入を行ってきた。他方で、自己資本比率はそこそこ高いが赤字を出したような先へ介入を行うことが難しかった。
・しかし、上記の日銀レポートのように地域金融機関の収益性は低下している。また、リスクの高い有価証券への運用を増やす例もみられる。収益性の低下が継続したり、金利上昇・株価下落などのストレス事象が起きると、経営体力面の問題が浮上する先が出てくる可能性がある。
・そうした金融機関について、「将来」ではなく「今」介入する手段を持っておきたい。
・そこで、将来5年程度の収益分析や金利・株価変動に対するストレス耐性分析を行う。その結果、先々「赤字が継続する」「最低自己資本比率を下回る」と見込まれるなど、持続可能な収益性や将来にわたる健全性について改善が必要と認められる銀行に対して、業務改善命令発出を含め介入を行っていく。
・「改善」の内容としては、店舗・人員配置の見直しなどの業務効率化、資本増強、配当など社外流出の抑制などが考えられる。

このように、金融庁、日銀とも地域金融機関に対し厳しい目線を向けています。我々も注意が怠れない状況になってきましたね。

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One comment on “Vol.20: 日銀の金融システムレポートと金融庁の方針転換
  1. 健太 より
    落ちぶれる

     先日。郵便局で送金したら、150円だったので局員に聞くと四月からだという。去年の11月に送金したときは80円だったが一回きり無料だった。一月4回までだったはずだがと聞くと、確か9月から一回となりましたという。
     之までの経験ではつぶれる会社はなんでもする。知人の会社経営者はいろんな例を教えてくれた。送金に必要な費用は電気代だけで、後はシステムのメンテと開発費用だが、もうそれは知れていると思う。6月から地銀の送金において、支店から支店への送金量が上がるという。同じ銀行内で送金するにそもそも費用がかかるというのはありえない。コンピューターが二つあるわけではない。
     金を稼げる領域から金を取るということだが、之を見ても金融機関はさきはないとみている。銀行で科預金金利と貸出金利の差を見つめていたら、別の知人がと声をかけてきた。<いや金利差を見ているが、町の高利貸しでも之だけの差はないぞ。預金金利と貸出金利は300倍だぜ。ひどいのになると1400倍だぜ。こりゃ、おしまいではないか>というと<ああそうだ、銀行なんか信用していてはだめだ、当座口座にすべてを移しておかないと困るぞ>という。と大声で話した。行員は皆だまていたが、どうも理解しているようです。郵便局においては若い行員と話したが、彼も明快には理解していないがこのままではだめとは理解していた。

    >このように、金融庁、日銀とも地域金融機関に対し厳しい目線を向けています。我々も注意が怠れない状況になってきましたね

    もうある程度の人は対策とある程度の未来を想定して行動している。その人々が我が国のあの冷酷かつ親切、過酷な人々でしょう。
     私はグッチー氏にしたがって(?)アメリカ株に変えました。人にも勧めているが、言うことを聞く人はいない。其の人々が日銀の政策の破綻を防いでいるのではと素人ながら思っている。

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