2012/12/03 16:04 | 来日公演 | コメント(0)
ウィーン・オペラ舞踏会管のニューイヤー・コンサート 愉悦の秘密
11月13日にぐっちーさんもご紹介されている、ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団によるニューイヤー・コンサートですが、残席が少なくなっているそうです。コンサートにお越しになる方は、心躍る新年のひとときをお過ごしいただけると思います。
先日のぐっちーさんの記事でご覧いただける華やかな写真は、ウィーン国立歌劇場での舞踏会(Wiener Opernball)の模様ですが、2階席の左方に陣取っているオーケストラと指揮者ウヴェ・タイマーの後姿が見えます。
ここで写真をもうひとつ。今度はオーケストラ側から見たウィーン・オペラ舞踏会の様子です。左側に見えるのが指揮者のタイマー氏。その後方には、総勢6000人ともいわれる正装した紳士淑女が、フロアいっぱいに広がってダンスを楽しんでいます。実に壮観ですね。
今シーズンのウィーンの「舞踏会カレンダー」を見ますと、11月後半から舞踏会は徐々に増え始め、1月には40回以上も行われるようです。世界的に有名なウィーン・オペラ舞踏会は、2013年は2月7日に開催されます。 大晦日にも数箇所で舞踏会が開催されますが、ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団はホーフブルク宮殿で行われる舞踏会に出演した後、日本に飛び、2日に到着。3日の大阪公演を皮切りに日本ツアーをスタートさせるそうです。音楽の都ウィーンでの舞踏会の熱気がそのまま日本に伝わって来そうなスケジュールです。
指揮者のウヴェ・タイマーは、幼少時はあのウィーン少年合唱団で活動し、ウィーン・アカデミーで作曲と指揮を学びました。指揮の師は、アバドやヤンソンス、メータなどを育てた名教師ハンス・スワロフスキー。1975年以来、オペラ/オペレッタの殿堂ウィーン・フォルクスオーパーと契約し、現在は主任音楽研究員、指揮者として活躍しています。また各地の歌劇場や音楽祭に出演、ウィーン・シュトラウス・カペレ、ウィーン・ワルツァー・カペレ、そしてウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団の第1指揮者として多くのコンサートを指揮しています。さらに、作曲・編曲家、またピアニストでもある俊才です。
名匠タイマーの元、ウィーン・オペラ舞踏会管弦楽団が、彼らの血となり肉となった、ワルツやポルカなどのダンス音楽やオペレッタの有名ナンバーを披露します。このオーケストラの最大のポイントは、舞踏会で踊る人たちのために演奏している団体だということ。来日公演では、フォルクスオーパーのバレエ団から選ばれた6名(男女各3名ずつ)が加わり、華やかな衣装で実際に踊るわけですから、リズムの「活き」が違います。
さらに花を添えるのが、やはりウィーン・フォルクスオーパーを中心に活躍中の華やかな実力派ソプラノ、バーバラ・パヤ。そこに日本の正統派テノール、2月には二期会60周年記念公演オペレッタ「こうもり」の主役を歌う小貫岩夫も加わります。2人は名作の魅力あふれるナンバーを熱唱し、我々を魅了してくれることでしょう。
ウィーンのダンス音楽やウィーンのオペレッタには、私たちを強く惹きつける「引力」があるような気がします。このあたりの「魅力の秘密」について、本公演にも期待を寄せているヨーロッパ文化史の研究家、小宮正安氏(横浜国立大学准教授)におたずねしたところ、非常に興味深いお話しを伺うことができました。
小宮氏:「ヨハン・シュトラウス2世に代表されるウィーンのダンス音楽やそれを満載したウィンナ・オペレッタが私たちの心を捉えるのは、単に楽しく華やかだから、という理由だけではないでしょう。それだけなら、一過性のブームに終っていたはずです。ヨハン・シュトラウス2世やその兄弟、後輩たちは、ハプスブルグ帝国最後の時代に活躍したり、青春時代を過ごしたりしました。当時のハプスブルク帝国の都ウィーンは、完成した環状道路に沿って贅を尽くした新しい建物が立ち並ぶなど、特に華やかでした。その一方で、格式と伝統を誇った帝国は、絶え間ない内憂外患に晒されてもいました。このような影の部分があるからこそ、光の部分――ダンス音楽やオペレッタなども――が大きな味わいを持つことになるのではないでしょうか。ウィーン子は、不安や苦しみに屈せず、それらをひととき忘れることのできる愉悦を、音楽やダンスの中に求めようとした。そのような愉悦のひとときがあったからこそ、現実に忍び寄る影にも耐えられたのかもしれません。」
現代の日本を生きる私たちが、ウィーンのダンス音楽/ニューイヤー・コンサートに惹きつけられる理由は、このようなところにあるのかもしれません。
それではぐっちーさん、オペラシティで会いましょう! ホールのロビーのキャンティーンには、確かワインがあったはずですから、新年を祝って乾杯でもしましょうか。
皆様も会場で、愉悦のひとときを!
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